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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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303/401

広がり始めた地盤

あれから、数日が過ぎた。


防護壁外に設置を命じた物見櫓の建築は、予定通りに開始されている。

当初懸念していた作業員の不足も、今のところ問題は起きていない。


むしろ——


「思っていた以上に、集まりましたな」


レオンが報告書を差し出してきた。


目を通すと、各櫓の建築現場には必要数を上回る人員が配置されている。

日雇いの形で募集を掛けたのが効いたのだろう。


「“仕事がある”という噂が、もう広まっている様です」


「……商人か」


「恐らくは」


商人達は口が軽い。


それは、悪い事ばかりではない。

“ここへ行けば働ける”

“金が貰える”


その認識が広まれば、自然と人は集まる。

難民という立場から、労働者という立場へ。


その意識の変化は大きい。


「順調なスケジュールで進行中。今のところ、遅延も問題も発生しておりません」


「そうか」


一つ、頷く。


櫓はただの見張り台ではない。

今後、壁外の耕作地を守る拠点となる。


ここが機能すれば、食料生産の幅も広がる。


「曙町の方は?」


「そちらも、順調です」


別の報告書を開く。


曙町では盗賊の被害も無く、治安は安定しているとの事だった。


「田畑の回復も、想定以上の速度で進んでいると」


「想定以上?」


「はい」


元々、あの地は農地として整備されていた。

荒れてはいたが、土壌そのものは生きている。


そこへ、農業経験者を中心に配置したのが功を奏したらしい。


「早ければ、予定よりも早期に収穫可能との見込みです」


「……それは助かるな」


食料の自給率が上がれば、補給の負担は大きく軽減される。

曙町が後方の安定供給拠点として機能すれば、こちらの町は前線拠点として動きやすくなる。


「北部方面は?」


少しだけ、声の調子を落として尋ねる。


あちらはつい先日まで別の領地だった場所だ。


「文官からの報告では、大きな問題は発生していない様です」


「併合は進んでいるのか?」


「はい」


完全に崩壊していた訳ではない。

行政機能も、最低限ながら残っていた。


そのため、こちらの制度をそのまま押し付けるのではなく、既存の仕組みを活かしながらの統合が可能だったらしい。


「住民の抵抗も、今のところ確認されておりません」


「……そうか」


「恐らく、限界が近かったのでしょう」


レオンが言う。


「支援を受け入れた時点で、覚悟は出来ていたのでは?」


「かもしれんな」


あのまま放置すれば、

崩壊は時間の問題だった。

それを理解していたからこそ、向こうは下るという決断をしたのだろう。


「完全崩壊した訳では無いので、既存の領民達も落ち着いている様です。その辺りは、スムーズに回っているのではないかと」


文官の見解も、同様だった。


行政が機能している内に、手を打てたのは大きい。

難民化してからでは、統合は遥かに難しくなる。


「……今のところは、か」


ぽつりと呟く。


順調だ。


櫓の建築。

曙町の農地回復。

北部方面の併合。


どれも問題無く進んでいる。


だが——


「嵐の前の静けさ、ってやつか」


レオンが苦笑する。


「否定は出来ませんな」


王政は崩壊した。

各領地は独立状態。


戦を始めた領もある。


そして、隣国は確実にこちらを見ている。


今はまだ、こちらが立て直しの最中だから、

手を出して来ないだけかもしれない。


「……気を抜くなよ」


「承知しております」


順調な時ほど、綻びは見えにくい。

だからこそ。

俺は、新たに届いた報告書の束へと手を伸ばした。


やるべき事は、まだ山の様に残っているのだから。

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