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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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遠い火種と内なる備え

数十日が過ぎた。


町は、相変わらず動いている。


商人達はどこからともなく現れ、

保護民を少しずつ——本当に少しずつだが、連れて来ている。


荷馬車一台に、家族が二組。

時には単身者が数名。


決して波ではない。

確実に流れは続いている。


「……まだ、ラーデンやモルガン領からは来ていない様だな」


報告書を閉じる。


レオンが答える。


「はい。今のところは」


「商人達は?」


「詳細は不明との事です」


距離がある。


しかも戦場が発生している可能性が高い地域だ。


「流石に、わざわざ危険を犯してまで行く気は無いらしいな」


「商売は命あってこそ、ですからな」


レオンが肩をすくめる。

もし元王都の街道が生きていれば話は違った。王都経由となれば——


「疫病の可能性有り、ですからな」


「うむ」


廃墟。

腐敗。

井戸の汚染。


どれか一つでも引けば終わる。


商人は敏い。

危険と利を天秤にかける。


今は利より危険が重い、という事だ。


こちらは、静かに備えている。

町の防御力は着実に高まっている。


外壁の補修。

見張り台の増設。

門前の検問強化。


隔離地区も整備された。


町外れに柵で囲った区域。

簡易宿舎。

専用井戸。

医療担当の常駐。


「発熱者は?」


「今のところ無し」


「咳や下痢は?」


「軽症のみ。食事と休養で回復」


今のところは、問題なし。気を緩めない。


「食料備蓄は?」


「増加傾向。曙町からの供給も安定」


田畑は少しずつ広がっている。


黒麦。

じゃじゃ芋。

蕪。


そして、試験的に導入した新たな輪作。


「自給量は?」


「まだ完全ではありませんが、確実に伸びております」


外に頼りすぎれば、いずれ足元をすくわれる。


戦でも疫病でも。


「……内側を固めるしかない」


レオンが頷く。


「今は嵐の目、ですな」


「ああ」


ラーデンとモルガンが戦っている。

北部方面は再編中。

隣国は一度退いたが、完全撤退とは言えない。


世界は揺れている。


だが、この町は今——


静かだ。その静けさが、逆に不気味でもある。


夕刻。


城壁の上から町を見下ろす。


煙がまっすぐ立ち上る。

市場の声。子供の笑い。


「……平和、か」


レオンが隣に立つ。


「一応は」


「長くは続かんだろうな」


「でしょうな」


二人とも笑わない。

遠い火種は、まだ燃えている。

今はまだ届かない。


「届く前に、強くする」


エドワルドは静かに言った。


「壁も。兵も。食料も」


そして——


「覚悟もな」


守るには、力が要る。力だけでは足りない。


遠い戦火。見えない疫病。


それらが来た時、この町が揺らがぬように。

準備だけは、怠らない。


静かな空の下。

町は今日も、少しずつ強くなっていた。

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専守防衛で侵略戦争の意図なんてないのに、災いは常に向こうから…
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