表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

298/382

広がる地図

その頃——

エドワルドは机に向かい、書類と格闘していた。


新たに流入する住民の名簿。

商人の出入り記録。

取扱品目と税率の調整。

物資の在庫表。


やる事は山ほどある。


「……人が増えるのは良いが、紙も増えるな」


小さく愚痴をこぼした、その時だった。


「エドワルド様。兄上のクラウス様からの文です」


差し出された封を切る。

読み進めるうちに、目が止まった。


「……は?」


もう一度、読む。そして、確信した。


「北の領地が……我が領に下った!?」


衝撃だった。


あの北の領主が。限界を迎えていたとはいえ、まさか“消える”決断をするとは。


「父上が赴いたか……」


話の流れから見て間違いない。

あの父が、直接動いたのだろう。


「まあ、そうなるだろうが……」


紙を置き、天井を見上げる。

また地図が変わった。


レオンが隣で不敵に笑った。


「これで、ここと二領目を手に入れましたな?」


「……手に入れた、か」


確かにそうだ。


元東領。そして北部方面。

領土は拡張している。


だが。


「増えたのは土地だけじゃない」


責任も増えた。


「ふぅ……一体どうなるんだ?」


思わず本音が漏れる。

レオンは肩をすくめた。


「お父上がどうするかに寄りますな。まあ彼は堅実です。変な無茶はしないでしょう」


「まあ確かに」


そこは信頼している。

だが問題は——

北部方面は、今までとは規模が違う。

エドワルドは視線を鋭くした。


「レオン」


「はい」


「情報隊の成育はどうなっておる?」


「……情報隊の?」


意外そうな顔。


「そうだ」


即答する。


「まあ順調には進めておりますが……」


「なら、育った連中を」


一瞬言葉を選ぶ。


「ここではなく、北領……いや、北部方面だな。そちらに送り込め」


レオンの眉がわずかに上がる。


「北部方面に、ですか?」


「ああ」


北は今、最も不安定だ。領地が消滅した。

誇りも、名も、体制もその空白には、必ず何かが入り込む。


不満。

不安。

煽動。


「統合直後は、最も危うい」


静かに言う。


「表面が穏やかなほど、下が濁る」


レオンは、数秒黙った後、頷いた。


「……承知しました」


「ただし」


エドワルドは付け加える。


「支配のためではない」


「?」


「まずは観察だ。火種があるかどうかを知る。それだけだ」


本当にそれだけか?

自問する。いや——今はそれでいい。

地図は広がった。


広がった分、綻びも増える。


「……未来は、また変わったな」


前世では無かった展開。


王国崩壊。

領地拡張。

北の吸収。


この先は、誰の記憶にもない。

エドワルドは窓の外を見る。

風が、少し強い。


「守る範囲が広がっただけだ」


自分に言い聞かせるように呟いた。

守るため。そのはずだ。


だが——


守るために、どこまで踏み込む?

机の上に広げた地図をゆっくりと折り畳んだ。


また一つ。エドワルドの世界が広がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ