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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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揺れる境界線

「レオン。捕虜とやらを見に行くぞ。付き合え」


「はっ」


簡易牢は、町の外れに設けられていた。

柵で囲われた一角。見張りは二重。


中にいるのは——


「……二十七名、か」


ざっと見渡す。


女子供に年寄り。そして、若い男が数名。

粗末な服装。

完全な難民とも言い切れない。


「確かに……若い連中が守りながら、ここまで来たとも取れるな」


小声で呟く。


子供の前に立つ若者。腕に古傷。

目は伏せているが、視線は鋭い。


レオンが横で腕を組む。


「どう思う?」


「正直……何とも言えませぬな」


即答だった。


「民にも見える。だが兵にも見える」


「だろうな」


沈黙が落ちる。


子供がこちらを見ている。

怯えと期待が混じった目。

老人はただ俯き、若者は一歩前に出ようとして止まった。


「……動ける者は労働をさせる」


静かに言う。


「だが、暫し様子見だ」


一斉に視線が集まる。


「ここでの規律は守らせる。

    飯は出す。寝床も出す。

        だが——自由は無い」


若い男の目がわずかに動いた。


レオンに向き直る。


「レオン。配下の団員を上手く接触させろ」


「接触、ですか?」


「ああ」


声を落とす。


「さりげなく話せ。何処から来たか。

誰と来たか。何を知っているか」


「……監視ですな」


「そうだ」


はっきりと言う。


「監視だ」


レオンは一瞬だけ黙った。

そして頷く。


「まあ、大丈夫です。うちの連中は自然に溶け込ませます」


「何かあれば、即報告」


「承知」


牢を後にする。背中に視線を感じる。

守るべき民か。火種か。


まだ分からない。


町へ戻る道すがら、レオンがぽつりと漏らす。


「最近、疑うのが早くなりましたな」


足を止めずに答える。


「守るためだ」


「ええ」


レオンはそれ以上何も言わなかった。


夕陽が町を赤く染める。

この町は生きている。

だが、生きているからこそ——


異物は早めに見極めなければならない。


「……間違えるなよ、エドワルド」


自分に向けた言葉だった。

誰にも聞こえない声は、風に溶けた。



その日の夜。

レオンが執務室へ入ってきた。


「エドワルド様」


「どうした」


「団員と女性兵を上手く接触させました」


「……女性兵?」


思わず顔を上げる。


「はい」


レオンは平然としている。


「うちの団員に指示しておきました。クロスボウ女性兵から数名引き抜いて、追加訓練をさせろと」


「ほぅ……成る程な」


監視を、監視らしく見せないやり方か。

捕虜たちと同世代の女性兵。

同じ食堂、同じ水汲み場。

自然と会話は生まれる。


そこから漏れる言葉。目線の動き。

誰と誰が視線を交わすか。


「ええ」


レオンは肩をすくめた。


「素質がある奴が数名居りましてね」


「素質?」


「観察力です。話を聞くのが上手い。相手に警戒させない」


「……なるほど」


「兵は剣だけではありません。耳も武器です」


確かに。女性兵なら、捕虜の若者も警戒を緩めるかもしれない。逆に、女性兵の方が違和感に敏感だ。


「上手い事を考えたな」


「偶然ですよ」


軽く笑う。


「まあ良い」


椅子に深く腰掛ける。


「何かあったら、すぐ教えろ」


「承知しております」


レオンは一礼し、部屋を出た。



一人になる。窓の外では、夜番の兵が巡回している。


静かな町。水面下では糸が張られている。


女性兵。団員。捕虜。


誰が何を話すか。誰が誰に近付くか。


「……疑うのも、仕組みにしてしまえば楽だな」


ふと、そんな言葉が漏れる。


感情で疑うと疲れる。

だが仕組みにすれば、疲れない。


それが良いのか悪いのか。

考えるのは、後でいい。


今はただ——

崩れないように、積み上げるだけだ。

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