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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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森が牙を剥く

西街道沿いの簡易砦。

まだ朝靄が残る時間。


木と土で急造したとは思えぬほど、静かに、そして自然に溶け込んでいた。


外から見れば——ただの森。

砦だとは、まず気付かない。


その物見台に、一騎の馬が飛び込んできた。


「早馬! 領主様から急報!」


門番が即座に中へ通す。

数分後。

クラウスは文を受け取っていた。


封を切りざっと目を通す。


そして——


「……ふっ」


口角が上がった。


「遅いですよ、父上」


横にいた副官が怪訝そうに見る。


「何か問題でも?」


「いえ」


紙を畳みながら、ニヤつく。


「“隣国侵攻の可能性あり、厳戒態勢を取れ”だそうだ」


「ああ……やはり」


「既に対応済みですよ」


当然のように言い切る。


「俺の方が国境に近いのに」


肩をすくめた。


「商隊が止まった途端に気付きましたしね」


三日前に西からの商隊がぱったり消えた。

あの時点で確信していた。


——来る。


「平時に商人が動かない理由なんて一つです」


「戦、ですな」


「ええ」


クラウスは笑った。


「戦の匂いは、隠せませんから」


振り返る。


「状況は?」


兵が報告する。


「第一、第二、第三街道罠、設置完了」


「伏兵、配置済み」


「クロスボウ隊、装填済み」


「落とし穴、偽装完了」


「よろしい」


満足げに頷く。


「じゃあ——狩りの時間ですね」


その頃、西街道。


隣国軍の先行騎兵十数騎が、土煙を上げて進んでいた。


「この辺りか」


隊長格が周囲を見る。

森。静かすぎる。


「……妙だな」


「何がです?」


「静かすぎる」


鳥も鳴かない。獣も動かない。


だが。


「まあいい。進め」


蹄が、街道を踏み鳴らす。


カッ、カッ、カッ——


その瞬間。


ズボッ!!


「なっ!?」


先頭の馬が突然消えた。

地面が崩れる。


「落とし穴だ!」


馬ごと、騎兵が穴に落下。

骨の折れる嫌な音。


「伏兵か!?」


騎兵が慌てて左右を見る。

だが——誰もいない。


「落ち着け! ただの罠だ!」


隊長が怒鳴る。


「慎重に進め!」


ゆっくり。慎重に。

地面を突きながら前進。


……何も起きない。


「はっ、偶然か」


緊張が緩む。


その瞬間。


ヒュンッ!!


「ぐぁ!?」


後方の騎兵が、突然馬から転げ落ちた。

脚に矢。


「矢だ! 森からだ!」


「どこだ!? 姿が見えん!」


枝葉が揺れる。

だが人影はない。


「撃て!」


適当に弓を放つが当然、当たらない。


さらに。


ヒュン! ヒュン!


「ぎゃあ!」


「脚を狙ってやがる!」


次々と馬が転ぶ。

倒れる騎兵。動けない。


混乱。


「くそっ! 姿を見せろ!」


その時、森の奥。

草と枝を被った兵たちが、静かに装填していた。


クロスボウ。


引き金。


クラウスが小さく呟く。


「……慌てるな」


「撃つのは脚と馬だけでいい」


「殺すな。怖がらせろ」


にやり。


「進軍速度を、削れ」


ドンッ!


再び発射。


「撤退だ! 一度下がれ!」


敵騎兵が叫ぶ。

ようやく判断した。


「森の中に敵がいる! 数は不明!」


騎兵たちは、傷ついた仲間を引きずりながら後退していく。


森は、再び静寂。


何もなかったかのように、クラウスは立ち上がった。


「……さて」


満足そうに言う。


「何騎削れました?」


「五騎落馬、三騎戦闘不能、他数名負傷」


「上出来ですね」


副官が笑う。


「正面衝突ゼロで、これですか」


「ええ」


クラウスは肩を回す。


「真正面から殴るのは、エドワルドの役目です」


「俺は」


森を見る。


「嫌がらせ担当ですから」


ニヤリ。


「森ごと敵に噛み付かせてやりますよ」


遠く。退却する騎兵の背中。

その向こうに、本隊がいる。


これから、何度も何度も。

同じ目に遭う。


「……ようこそ」


クラウスは小さく笑った。


「地獄の街道へ」

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― 新着の感想 ―
多分この兄は地雷とか作るタイプの天才だ
今まで影の薄めだったお兄さんが無双するターンくる……
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