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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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272/377

西に翻る旗

カン——

カン——

カン——


領主館の中庭に、鐘の音が響いた。


一回、二回、三回。


敵襲ではない。だが、緊急連絡。

嫌な回数だった。


「……何だ」


領主は顔を上げる。

扉が勢いよく開いた。


「領主様!」


国境伝令兵。


息が上がっている。泥だらけ。

馬を飛ばして来たのが一目で分かった。


「報告しろ」


「はっ……西国境、第三監視所より急報!」


空気が変わる。

部屋の全員が動きを止めた。


「……何を見た」


伝令は、唾を飲み込んだ。


「旗を……確認しました」


沈黙。


「どこの旗だ」


「隣国、アルヴェン王国の軍旗です」


ピシ、と空気が凍る。


「数は」


「先行騎兵が十数騎。その後方に——」


一瞬、言葉を詰まらせる。


「歩兵、推定三百以上。さらに後方に荷馬車隊」


「……補給付きか」


つまり、演習でも威圧でもない。


「本隊だな」


「はい……」


「距離は」


「国境線より、およそ半日」


半日。


もう目と鼻の先だ。


「国境兵は交戦したか?」


「いえ! まだです! 監視のみで退避命令を出しました!」


「正解だ」


今戦えば、ただの消耗。


「動きは?」


「隊列を保ったまま、街道沿いに進軍中。偵察騎兵を左右に散開させています」


完全に軍の動き。


盗賊でも、流民でもない。


「……隠す気すら無い、か」


領主は、静かに立ち上がった。


「宣戦布告も無しに堂々と来るとはな」


グレゴールが低く呟く。


「王国が崩れた今、遠慮も不要と判断したのでしょう」


「ああ」


もはや。国境も、条約も、王命もない。

あるのは、力だけ。


「……来たな」


ぽつりと漏れた。

それは怒りでも恐怖でもない。

諦めに近い納得。


「やはり来たか」


商隊が止まり、西が沈黙しそして、旗。

全部、繋がった。


「クラウスへ早馬を出せ」


「はっ」


「築城した二城、即時戦時体制」


「国境兵は遅滞戦術に移行」


「街道罠の起動を許可する」


矢継ぎ早に命令が飛ぶ。


「商人は全員退避」


「村の住民は籠城準備」


「備蓄は前線優先配給だ」


伝令が走り去る。

部屋には重い沈黙だけが残った。

領主は、窓の外を見る。


西。何も見えない。だが確かに。

敵がいる。旗が翻っている。


「……エドワルド」


小さく呟く。

遠く、隣領で戦っている息子。


「お前の言った通りになったぞ」


王国が崩れれば、次に来るのは、外敵。


「全く……」


苦笑する。


「当たりたくない予感ほど、よく当たる」


だがもう準備はしてある。


擬装村。

伏兵。

クロスボウ。

築城。


やれる事は、全部やった。


「あとは——」


拳を握る。


「どこまで削れるか、だな」


その日の夕方、西の空に。

薄く、土煙が上がっているのを見た者がいた。


それは戦の始まりを告げる、最初の狼煙だった。

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― 新着の感想 ―
クロスボウは正式配備されたけれど バリスタとかは作ったのかな?
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