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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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秩序の代償

数日経った後だった。

驚くほど——町は静かだった。


朝。


市場では野菜が並び、鍛冶屋の槌音が響き、

子供達が走り回る。


怒鳴り声も無い。

盗みも無い。喧嘩も無い。


治安部隊が巡回するだけで、自然と皆が道を空ける。


「……平和だな」


レオンが呟いた。


「ああ」


エドワルドも同意する。


「やっと“町”になってきた」


野営地でもなく、難民キャンプでもなく、

前線基地でもなく。


生活の匂いがある。人が、生きている場所。


それを見て——


ほんの少しだけ、胸の奥が軽くなった。

ようやく、守れている。


そう思った、その時だった。



ドタドタと足音。


「エドワルド様!」


治安部隊の隊員が駆け込む。


「どうした」


「市場で揉め事が!」


「喧嘩か?」


「いえ……」


言葉を選ぶ様子をみて、嫌な予感がした。


「配給倉庫から食料を盗み、転売していた者を捕縛しました」


空気が、止まる。


「……数は?」


「三名」


「証拠は?」


「現物と、隠し持っていた銅貨多数」


「……」


横でレオンが小さく舌打ちした。


「出ましたな」


「……ああ」


予想はしていた。


物が流れ始めれば、必ず“抜く奴”が出る。

盗み。横流し。闇売買。

どこの世界でも同じだ。


「……被害は?」


「本来なら三十人分の配給が不足していました」


その数字が、重い。


三十人。


つまり。


「三十人が、腹を空かせる所だったわけか」


「はい」



その日の昼、中央広場。

人が集められていた。ざわざわと不安な声。


「何があったんだ?」


「盗賊か?」


「また戦か?」


中央には。


縛られた三人でまだ若い男。

痩せた顔、だが目は濁っている。


そして——


簡易の木台に即席の処刑台。

以前、エドワルドが嫌悪した物。


それが今。


自分の命令で作られている。

胸の奥が、少しだけ軋んだ。


……必要だ。


自分に言い聞かせる。レオンが小声で言う。


「本当にやりますか」


「……やらなきゃ、意味がない」


「見せしめ、ですな」


「ああ」



エドワルドは前に出ると、ざわめきが止む。

全員が見る。今、この町で。


一番権力を持つ男を。


「聞け」


静かな声。


「この三名は、配給倉庫から食料を盗み、外で売っていた」


どよめき。


「つまり!この町の仲間の食料を奪い、金に変えた」


視線が三人に突き刺さる。


「俺たちは全員、飢えを越えてここまで来た!誰もが腹を空かせた」


「だからこそ」


一拍。


「配給は“平等”だ!それを壊す奴は!この町を壊す奴だ」


三人の一人が叫ぶ。


「ち、違う!少し分けただけだ!」


「売らなきゃ家族が——」


「皆同じだ」


エドワルドの声が遮る。


「皆、家族がいる」


「皆、苦しい」


「それでも守ってる」


「お前らだけが特別じゃない」


沈黙。誰も反論できない。



「よって」


喉が少しだけ重い。だが、止まらない。


「三名を——公開処刑とする」


ざわっ。


空気が凍る。


「しょ、処刑!?」


「まじか……」


泣き声。怯え。


だが同時に。


「……当然だ」


「盗みは許せねぇ」


そんな声も混ざる。


レオンがエドワルドを見る。


本気か?


目で問う。


エドワルドは、頷いた。



治安部隊が動くと三人は暴れる。


「やめろ!」


「助けてくれ!」


「一度だけだ!」


誰も動かない。誰も助けない。

それがこの町の答えだった。


——三度。


鈍い音。首が落ちる。血が土を濡らす。


悲鳴。子供が泣く。目を背ける者。


だが、逃げる者はいない。


全員が見ている。



終わった後広場は、異様に静かだった。

エドワルドは言う。


「覚えておけ!この町は守る!だが、裏切る者は守らない!これは脅しじゃない」


「約束だ」


冷たい言葉に優しさは無い。


現実だけ治安部隊が遺体を運ぶ。

人々が、自然と道を開ける。


その視線は恐怖とそして少しの安心。


これで、盗みは減る。

そんな顔。


レオンが横に立つ。


「……やりましたな」


「ああ」


「気分は?」


少し間。


「……最悪だ」


正直に言った。

レオンが苦笑する。


「でしょうな」


「だが」


エドワルドは広場を見る。

子供が笑っている。商人が店を開く。

何事もなかったように。


「これで守れるなら」


拳を握る。


「何度でもやる」


その横顔は、もう。“優しい次男坊”ではなかった。完全に——統治者の顔だった。

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― 新着の感想 ―
そだよね。 八方美人は、くそだから
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