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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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守るために、切り捨てろ

夜明け前。

町は、もう眠っていなかった。

鐘が鳴りっぱなしだ。


カン、カン、カン——


「北門!人だかり増加!」


「西の街道で火!」


「倉庫付近、不審者三名拘束!」


怒号と足音。

ここはもう前線基地ではない。

戦場だ。


「レオン、奪還隊は?」


「三十名、出ます」


「俺も行く」


「……危険ですが」


「指揮官が後ろに居てどうする」


短く言い切る、馬に乗り、街道へ。

林の手前で、臭いがした。

焦げた匂いに血の匂い。


「……」


焼けた荷馬車に転がる死体。

剥ぎ取られた鎧。

物資は空。


「……クソ」


レオンが吐き捨てる。


「まだ近くにいるな」


足跡に大量。統制ゼロ。


「盗賊だけじゃない」


「飢えた難民も混ざってますな」


ガサッ。


物音。


「そこだ!」


民兵が叫ぶ。飛び出してきたのは——

ボロ布の男に棒切れ。

震えている。


「ち、違う!俺は盗んでない!食い物を——」


その後ろから矢。


ヒュン。


男の首に刺さり崩れ落ちる。


「……」


森の奥。


影。


「伏撃だ!」


「盾構えろ!」


矢が降る。


だが。


訓練済みの隊列。


「前進!」


レオンが吠える。

元騎士団が突撃。


数分後。


森の中には、死体が転がっていた。


盗賊。農民。女。少年。

区別がつかない。


「……」


エドワルドは目を逸らさなかった。

逸らしたら、負けだ。


「街道を開けろ」


「死体は端に寄せろ」


「通れるようにしろ」


淡々と命じる。もう、感情を入れていない。


門前に戻るともっと酷かった。

町門前に百人以上。

押し合いに怒号。


「入れろ!」


「子供がいるんだ!」


「食わせろ!」


「門を開けろ!!」


兵が必死に抑えている。


レオンが舌打ち。


「……来すぎだ」


エドワルドは即決した。


「選別する」


「武器所持者、拘束」


「若くて力のある男、後回し」


「子供・老人・怪我人、優先」


「逆らう奴は?」


「入れるな」


冷たい、自分でも分かる。


だが。


全員入れたら終わる。

町が死ぬ。


「……次!」


一人ずつ通す。


「武器は?」


「……ない」


「よし、入れ」


「次」


「お、俺も!」


腰に短剣。


「拘束」


「ち、違う!護身——」


「連れていけ」


悲鳴。罵声。憎悪の目。

それでも止めない。


「……俺たちは神様じゃない」


小さく呟く、全員は救えない。



その時、市場側から叫び。


「倉庫が破られた!」


「何!?」


数十人。


難民の一部が暴走。


食料袋を奪い、逃走。


「止まれ!」


石が飛ぶ。兵が倒れる。


「ふざけんな!」


「どうせ俺たちは見捨てられる!」


「奪え!」


一瞬で暴徒化。


レオンが剣を抜いた。


「どうします」


一瞬。


迷った。本当に一瞬だけ。

言葉は勝手に出た。


「……鎮圧しろ」


「抵抗する者は——斬れ」


空気が凍るがそれでも。

命令は命令だ民兵が突入。


悲鳴。

血。

倒れる影。

数分後。

静寂。


地面に転がる数人。


生きているのもいる。

動かない。


「……」


エドワルドはそれを見下ろした。

胸が、重い。

町は守られたし倉庫は守られた。


「……これが」


呟く。


「守るってことか」




一人。壁の上。火の消えた町を見る。

笑い声は無い。

すすり泣きだけ。


「……」


今日だけで何人斬った?

何人追い返した?

何人見捨てた?


分からない。


ただ。


はっきり分かることがある。

昔の自分なら出来なかった。


「……変わったな、俺」


拳を握る。

優しさだけじゃ守れない。

理想だけじゃ救えない。


だから。


「……仕方ない、よな」


自分に言い聞かせるように。

空は、真っ黒だった。

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― 新着の感想 ―
読んでるだけなのに、歯を食いしばってしまっていました それくらい切ったのが救いを切り捨てたのが悔しいを超えたもの以上なのを感じられて食いしばって読んでみているしかないです がんばれエドワルド
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