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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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265/403

前線都市計画

地図の上に、炭で引かれた線が増えていく。

元領主館の町。

今や、瓦礫だらけの廃墟ではない。

兵が巡回し、見張り台が立ち、仮設市場に人が集まり始めている。


だが——


「まだ“町”じゃないな」


エドワルドは呟いた。


「ただ人が居るだけだ」


隣でレオンが腕を組む。


「十分すごい事ですがな」


「違う」


首を振る。


「これは拠点だ。町じゃない」


拠点は止まれば死ぬ。

町は、勝手に回る。

目指すのは後者だ。


工房の集約を行う。


「まず、職人を一箇所に集める」


「集める?」


グレゴールが聞き返す。


「鍛冶、木工、石工、革細工。全部だ」


今はバラバラ。

空き家を勝手に使い、好き勝手に作業している。

効率が悪すぎる。


「一角を“工房区”にする」


地図に四角を描く。


「炉を共有させる。資材もまとめて管理する」


「……なるほど」


グレゴールが頷く。


「炭や鉄の無駄が減りますな」


「道具も貸し借り出来る」


「修理も早い」


レオンがニヤリとする。


「武器の補修も即日可能、と」


「そういう事だ」


前線都市で一番重要なのは——

“直せる事”。

壊れたら終わり、じゃ話にならない。


「戦える町にする」


それが前提だ。



次に、市場。

今は露店が数軒並ぶだけ。ただの物々交換。


「これじゃ商人が根付かん」


「確かに」


「怖いですからな」


レオンが笑う。


「盗まれたら終わりです」


だから。


「常設の市場を作る」


「建物を?」


「ああ」


屋根付き。柵付き。見張り付き。


「“ここなら安全に商売出来る”と思わせる」


それだけで商人は集まる。

商人が来れば物が来る。

物が来れば人が来る。


人が来れば——


「金が回る」


グレゴールが小さく笑った。


「完全に経済都市の発想ですな」


「そうしないと配給が永遠に終わらない」


救護だけでは限界がある。

自分で買える環境を作らなければ。


「配給は“緊急用”に戻す」


「通常は市場で買わせる」


「金が動けば税も取れる」


「……」


三人、顔を見合わせる。


「本当に国みたいになってきましたな」


「言うな」


エドワルドはため息をついた。

自覚はある。だが止められない。



そして、最後。一番重要な項目。


「道だ」


「道?」


「はい?」


二人が同時に言う。


「曙町とこの町を結ぶ街道」


地図に太線を引く。


「ここを最優先で整備する」


今はただの土道。

雨が降れば泥。荷馬車は埋まる。

補給が遅れる。


それは——死だ。


「石を敷け」


「ぬかるみを潰せ」


「橋を架けろ」


「最低でも荷馬車二台がすれ違える幅に」


「……」


レオンが苦笑した。


「戦より大工仕事の方が多いですな」


「兵站が死ねば戦も死ぬ」


即答だった。


「腹が減った兵は戦えない」


それは前世で嫌というほど知っている。

負ける軍は、大体「飯が無い」。


「この道は命綱だ」


「ここが切れたら、町ごと終わる」


だから。


「最優先だ」



一通り説明し終え。

エドワルドは地図を見つめた。


工房区。市場区。兵舎。倉庫。

整備された街道。

少しずつただの廃墟が。

“機能を持った都市”に変わっていく。


「……南町とは違う町になるな」


ぽつりと漏らす。


「あちらは農業の町」


「ここは」


レオンが続ける。


「戦と商売の町、ですな」


「物資が集まり」


「兵が集まり」


「人が流れる」


グレゴールが笑う。


「厄介だが、強い町になりますぞ」


「……だな」


エドワルドは静かに頷いた。

ここは安らぐ町じゃない。


だが、守るための町だ。


最前線で全部を支える、心臓部。


「よし」


顔を上げる。


「始めるぞ」


「工房区の整地」


「市場建設」


「街道整備」


「全部同時だ」


「「「はっ!」」」


慌ただしく動き出す人々。

その光景を見ながら。

エドワルドは小さく思った。


……本当に、どこまで行くんだ、俺は

町を守るだけだったはずなのに。

気付けば町を作り、道を作り経済を作り。

国みたいな物を作っている。


それでも。

足は止まらない。止まれば、全部崩れるからだ。


「……面倒だな」


そう呟きながら少しだけ、笑った。

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― 新着の感想 ―
グレゴールさんって、父(領主)のお付きの人でしょうか? いつのまにエドワードのところに来ていたのでしょうか? これまでは、隣の領地関係ではエドワードとレオンの二人が主になっていたのに、ここでいきなりグ…
炉の共有かぁ、、、使用時間多いし、やり方が違うし成立するのかどうか。1箇所に纏めるのはいいと思うけどね
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