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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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守った後の答え

夜。


臨時司令部。灯りは一つだけ。

エドワルドは机に肘をつき、地図を眺めていた。


曙町。

元領主館の町。

南町。

そして、グレイス領本領。


赤い印が、ぽつぽつと増えている。


保護した場所。

再建中の場所。

拠点。


「……増えたな」


小さく呟く。

気付けば、随分と広がった。

最初は一つの町を守るだけだった。


それが今は、町を作り、村を再建し、市場を動かし、軍を持ち、隣領にまで手を伸ばしている。


……ほとんど国だ。


「……」


指で地図をなぞる。


ここも俺の責任。

ここも。

ここも。


増えるたびに、背負う物も増えていく。


「……これで、良いのか?」


自然に言葉が漏れた。

最終的には。

我が領と、この地は統一されるだろう。

それはもう、流れとして止められない。


王政は崩壊。

隣領主も死亡。

誰も統治者がいない。


だったら、俺がやるしかない。


だが——


「……格差が出るな」


曙町は安定している。

南町は生産も始まっている。


ここは?


まだ救護拠点。


配給頼み。商人頼み。外部供給頼み。

自力で回っていない。

もし同じ領内になった時。


「豊かな町」と「助けられる町」


その差は、確実に不満になる。


「……不満は、火種だ」


前世で何度も見た。


飢えよりも、貧困よりも。

“差”が一番、人を狂わせる。


守ったはずの民が、今度は自分に刃を向ける。

そんな未来が、一瞬頭をよぎる。


「……笑えんな」


深く椅子にもたれた。

じゃあ、どうする?

生産力を上げる?

畑を増やす?

工房を作る?

商人を呼ぶ?


「……俺が今までやった事を、もう一度やるか?」


南町と同じやり方。


区画整理。

共同住宅。

農地拡張。

職人集約。


確実だ。

成功例だ。


「……それだけで良いのか?」


同じ物をコピーするだけ。

それは「発展」じゃない。


「延命」だ。


ここはここで、別の形が必要なんじゃないか?

ふと、窓の外を見る。

夜でも、かすかな灯りがある。


鍛冶場の火。

見張り台の影。

夜番の足音。


……人は、もう生きている。


「……ゼロじゃない」


ここには、王都から逃げてきた者。

騎士団。

職人。

商人。

農民。


色んな連中が混ざっている。

南町とは“中身”が違う。


なら——


「同じ町にする必要は、無いのか」


ぽつりと呟く。

南町は農業中心。

曙町は補給拠点。

ここは——?


軍事。

物流。

商業。


「……前線都市、か」


自然と形が見え始める。


戦える町。

守れる町。

物が集まる町。


農業にこだわらなくてもいい。

役割が違えばいい。


「……」


ふっと笑う。


「……俺、領主みたいな事考えてるな」


今更か。


剣を振るうだけだった男が。

いつの間にか、町の未来で悩んでいる。


「……面倒だな、本当に」


嫌いじゃない。

誰かを殺すより。よほどマシだ。

地図に、新しく丸を描いた。


元領主館の町。

その横に、小さく書く。


【前線都市・商業拠点化】


「……やれるだけやるか」


正解かどうかは分からない。

止まるよりは、マシだ。

灯りを消す。

暗闇の中。


エドワルドは、静かに呟いた。


「……守った“後”の方が、難しいな」


誰に聞かせるでもない声が夜に溶けていった。

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