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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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灰の外に町を作る

朝。


まだ空気の冷たい時間。

エドワルドは一人、城壁代わりの木柵の中にある見張り台の上に立っていた。


かなり遠く、薄ら見えるのは――灰色の影。


元王都。


崩れた塔。黒焦げの壁。

煙の匂いが未だ残る廃墟。


「……あれは、もう無理だな」


ぽつりと呟く。城としても町としても。

あそこは“死んだ土地”だ。

直すには、人も資材も時間も、何もかも足りない。


レオンが隣に来る。


「見に行きますか?」


「いや」


首を振る。


「使い物にならない物を見ても仕方ない」


視線を、足元へ落とす。

こちらの町、元領主館の町。

補給拠点、救助拠点。


そして今は――


「……人が増えすぎたな」


レオンが笑う。


「良い事じゃないですか」


「良いが……飯が減る」


それが現実だ。


保護民、元騎士、志願兵。

救助した王都の生き残り。


気付けば、数百単位で膨れている。


「曙町は順調だ」


「あそこは畑も回ってますな」


「ああ」


蕪、じゃじゃ芋、黒麦。

芽が出始めている報告も来ている。


だが。


ここは違う。

ここは“前線”だ。

消費ばかりで生産がない。


「……防衛線を少し広げる」


レオンが眉を上げた。


「ほぅ?」


「この外側の空き地」


指差す、町の外の雑草だらけの元農地。


「ここを取り込む」


「田畑に?」


「ああ」


簡単な柵を延ばす。見張り台を一つ追加。

夜間警備を増やす。


それだけで。


「最低限の畑は作れる」


「補給の足しになりますな」


「馬鹿に出来ないぞ」


小さく笑う。


「兵三百人分の芋が自前で確保出来るだけで、輸送はかなり楽になる」


戦は、腹だ。腹が減れば終わる。

これはもう何度も見てきた。


「……町にするか」


「はい?」


「ここを」


ゆっくり言う。


「ただの拠点じゃなく、町にする」


レオンが黙る。


「家を増やす。畑を作る。店も置く」


「……前線なのに、ですか?」


「ああ」


エドワルドは苦笑した。


「前線だからだ」


兵だけの場所は、長持ちしないし殺気だけが残る。


「人が笑って、飯を作って、子供が走り回る場所の方が強い」


レオンは数秒黙って。


「……変な領主ですな」


「褒め言葉か?」


「ええ」


ニヤリ。


「普通は“城を強くする”って言います」


「俺は“町を強くする”」


即答。


「人が残れば、何度でも立て直せる」


灰の王都を見たからこそ、分かる。

石の城なんて、燃えたら終わりだ。


人が生きていれば、また作れる。


「……よし」


振り返る。


「文官を呼べ」


「はい」


「区画を引き直す。外壁を少し広げる。畑区画、倉庫区画、居住区画」


止まらない。

頭の中で、もう町が出来上がっている。


「鍛冶屋も欲しいな……鍬も矢も足りん」


「商人も呼びますか?」


「呼ぶ。税は軽くする」


「優しいですな」


「違う」


即答。


「長く居てもらうためだ」


レオンが小さく笑った。


「……本当に戦してるんですかね、我々」


「してるさ」


エドワルドは空を見ると灰色の空。

だが、町からは煙が上がっている。

炊事の煙だ。


「だからこそ、町を作るんだ」


戦うために、生きるために。

滅んだ王都の代わりに。


ここに。


「……灰の外に、町を作るぞ」


その一言でまた一つ、未来が動き出した。

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