トルネクロンA
火属性選抜チームが観戦エリアを出るのを見送った後、私は6つのモニター画面を切り替える。次いで95名全員が、「風魔獣討伐クエスト」を受託している状態で揃っているのを確認した。
「ついに魔獣戦か……何か緊張するな」
「俺たちが緊張してどうすんだよ」
本当にその通りなのだが、私も緊張していたので、深呼吸する。
ちなみに今回も、30匹以上のウパぺんたちが観戦に来ていたのだが……たまたまサマーウパぺんとジャスティアさんの目が合って、お互い舌打ちしつつ目を逸らした瞬間を目撃した。近親嫌悪……?
火属性選抜チームも戦闘準備エリアに揃ったので、私はワールドチャットの画面を開いた。
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ユウ:こちらの準備は整いました いつでもどうぞ
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とはいえ、さすがに全員緊張しているのか、すぐには動こうとしない。
手の震えを消すためか、開いたり閉じたりするMiyabiさん。
目を閉じて、深呼吸を繰り返す°˖✧はぴ✧˖°さん。
落ち着かないのか、小さなジャンプを繰り返すチョコケーキさん。
胸に両手を当て、何かを繰り返し呟いているくろんさん。
そんな中、肩を回すストレッチをしていた照輝さんが突然、両手をパンと打ち鳴らしたので、全員がビクッとし、そちらを見る。
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「ここまで来たら策は不要、筋肉のみで十分だ!」
「いや、策はいるでしょΣ(゜∀´(ㅅ• )ガブッ」
「ぷーう、何のために話し合ったのよぉ!」
「ふふふ、でも助かったよ~! 今ので緊張、どっかにいっちゃった!」
「私もよ。策だとしたら上出来ね」
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確かにその通りで、あの音と続く一言で全員の肩の力が抜けたのが、私にも分かった。
「照輝の兄貴、時々策か素か分かんねぇファインプレーするよな」
「俺は策だと思ってる。あれで一流のナイトの1人だし」
何にしても、いよいよ始まる……!
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「攻っめ攻めだよっ?」
「きっとこの後に飲むプロテインは、五臓六腑に染み渡るぜ!」
「なんでそうなるの!」
「それはいらない( _•ㅅ•)_」
「もう……ウエイティングタイム終了よ。私が行くわ」
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代表してくろんさんが、祭壇に灯る蝋燭を双剣で攻撃し、火を消した。
画面背景が真っ暗になった後、弦楽器メインの疾走感ある音楽が流れ出し、樹上の戦闘エリアへと移行する様子が映し出される。
ひときわ大きく丈夫な木の枝の上で、火属性選抜チームの足が止まり……大きな白い影が左下から右上へと斜めに横切った後、画面上部からBOSS表記と共にゆっくりとトルネクロンが出現し、戦闘開始だ!
「アークタルラ戦の時と違って、装備は万全だ。思い切り行け!」
「初魔獣戦を勝利で飾ろうぜ!」
「ウペペ、ウペウペーーー!!」
ちなみにトルネクロンは後列にいるため、Miyabiさんに有利な武器が多い。ゲーム世界なので、見た目は樹上とはいえ、足場も特に不安定ではない。
また行動分析戦闘で1周の行動パターンは分かっているが、さすがに敵が強すぎて、制限時間いっぱいまで耐えられたパーティはなかった。というより、1周の行動パターンを調べるので精一杯だったのだ。
ただ前作の傾向を踏まえると、恐らくトルネクロンの場合、行動が3周する4分程度が制限時間だろうと予測されている。
これまでの昼エリアボスとの戦闘制限時間がどれも2分程度なので、それだけ激しい戦闘が予想されているわけだ。
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「フレッフレッフレー」
「応援してないで、一緒に頑張ってよーぉっ!」
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「くろんさん、°˖✧はぴ✧˖°さんは定番2手だな」
「Miyabiさんは今回、4手で最初の必殺技ゲージ貯める方向だ。慎重だな……」
「敵の行動が単体・近列・全体のランダム順だから、そらそうだろ」
「開始11秒で最初の攻撃が来るしな……」
「くろんさんへの逆鱗付与1回を確認」
とここで、軽いどよめきが起こる。
「照輝さんのHP、やたら多くね!?」
「チョコケーキさんがHPUPバフかけたのもあるけど、半端ない量あるな!」
「そりゃそうだよ、照輝さんの装備見たらこれ、物防・HP特化になってるよ!」
「魔法攻撃しかない敵なのに、魔防特化装備1つも入れてない!?」
確かにHPが他のナイトさんたちの1.7倍はありそうだが、まさか魔法防御を全く考慮しない装備で挑んでくるとは思わなかった。
……もしかして照輝さんが言ってた「筋肉」って、これのことか!?
「照輝さんに物理・魔法被ダメージDOWN50%25秒付与、ダメージバリア10%1回付与を確認」
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トルネクロン「風よ、渦巻け」
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「近列魔法攻撃パターンからか!」
素早くチョコケーキさんが耐性付与のメイスを使用し、味方全体に赤い光の膜が張られた。照輝さんは迷うことなく、ヘイト上昇倍率UPの効果がある剣盾で、トルネクロンの鉱石部分を突き刺す!
詠唱を終えたトルネクロンが4枚の翼で起こした風が、小さな竜巻となってダメージバリアを砕き、照輝さんのHPを1/4ほど削った。
「そうか、ダメージバリアは最大HPが高いほど、効果が上がるから……!」
「無理に魔法防御上げなくても、対処できるってわけか!」
「やっぱただの脳筋ナイトじゃないな!」
なるほど、単にHPを上げるだけだと、回復するチョコケーキさんの負担が増すだけになってしまうが、ダメージバリアが戦略に組み込まれていると、ダメージ量そのものを少なく抑えられるから効果的なのか。
とはいえ、装備が万全の状態でも、序盤でこの威力。やはりかなり強い。
くろんさんが自傷しつつ双剣での攻撃を開始したところで、トルネクロンが次の攻撃詠唱を開始した。
「くろんさんの逆鱗1回の消費を確認」
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トルネクロン「吹き飛ぶがよい!」
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今度は全体魔法攻撃か!
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「この私が加勢したげる」
「協力感謝するぜ! オラオラオラァ!」
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2人が使った武器は、チョコケーキさんの方は以前にも見た守護技槍だが、照輝さんの方は初めて見る光属性の剣盾で、高速で何度も刺突を繰り返す!
「チョコケーキさんの使用武器効果で、トルネクロンへ物理・魔法与ダメージDOWN25%7.9秒付与を確認」
「照輝さんの使用武器効果で、トルネクロンへ物理・魔法与ダメージDOWN15%32秒付与を、味方全体にダメージバリア10%1回付与を、照輝さん以外の4名へヘイト上昇倍率DOWN20%32秒付与を確認」
合計40%与ダメージがDOWNしただけでなく、予め増強されていたHPにより、こちらの想定よりかなり強力なダメージバリアが張られる。
これにより、トルネクロンが生み出した強風はまたしてもダメージバリアに阻まれ、ダメージが大幅に軽減した。
「ウッペペー!」
「聖盾連携シビレるぅ!」
「しかも今ので、敵のヘイトがっつり掴んでるよ」
「得意属性の攻撃じゃないとはいえ、味方にヘイトDOWN付けられる武器だから、うまくハマったな!」
続けて照輝さんが味方全体の防御バフを延長しつつ、ダメージバリアを張り直す。どうやら今回は、与ダメージDOWNとダメージバリアを駆使して守る戦略のようだ。
「照輝さんへの逆鱗付与2回を確認」
この間にMiyabiさんは、最も時間がかかる自己バフ付与と、敵への永続デバフの付与を終え、°˖✧はぴ✧˖°さんも魔砲でのデバフ付与を終えた。
次はもう単体攻撃しかないと分かっているので、後列に退避していたくろんさんは双剣での攻撃を開始している。
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トルネクロン「風よ、切り裂け」
「下がるぜ、マッソー!」
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「前回全く後列移動しなかった照輝の兄貴が、後列移動!?」
「いや、割と普通だし! 今回後列移動武器1つは持つの必須だし!!」
だが、ただ後列移動したというわけでもないようで、
「魔法与ダメージUP100%、風ダメージ耐性UP40%、ヘイト上昇倍率400%、クリティカル率UP100%、クリティカル威力UP25%……」
「全部7.9秒とはいえ、めっちゃ色々上がってるし!」
トルネクロンの口から発生した風の刃は、照輝さんが纏った風ダメージ耐性UPの輝きで大半が消滅し、さらにダメージバリアでその威力の大半を失った。
「ウピピ!?」
「ダメージほぼ0かよ!!」
「さすがだぜ兄貴!!」
「照輝さんの逆鱗1回の消費を確認」
「Miyabiさんの必殺技ゲージMAXを確認」
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「ん~! ノッてきたね」
「私もあと少しよ」
トルネクロン「風よ、我に集え……」
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ここでトルネクロンが、三角の模様が浮かぶ詠唱を開始する。これは「高揚」という名称の、一定時間敵のステータスが強化される技だ。
トルネクロンが少しの間攻撃してこないので、次の攻撃パターンに入る前の、大きな攻撃チャンスでもある。
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「くらえ、ドラゴン!」
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「今度はドラゴンかよw」
「いや、確かにそう見えるけど!」
いち早く必殺技ゲージが貯まったMiyabiさんは、早速必殺技ゲージを消費し、大きな火球攻撃を放つ!
だが……トルネクロンの鉱石部分にモロに当たったのに、まだその輝きに全く変化がないのを見て、私は魔獣の強さを実感した。
「くろんさんの必殺技ゲージMAXを確認」
「照輝さんの必殺技ゲージMAXを確認」




