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俺とアクマ  作者: エニシ
7/8

幕間  炎の中の聖譚歌

ちょいとグロい表現があったりなかったり。一応ここだけR−12くらいにしておきます。

 燃え滾る炎。

 その中に、俺はいた。


 どこで、なぜ、どうして、の疑問の言葉は浮かばない。

 現状を知ろうという意欲が、こんなときに起ころうはずもなかった。知ったところでどうにかなるものでもない。

 そう考えている今も、俺の身体は焼かれ続けているのだから。


 そんなときに去来する全ての前提は抜き去って満ちていく。

 身体とは逆に冷え込んでいく心に注ぐもの。

 恐怖。


 痛みはなく、熱さも感じず、ただ怖いと思う。

 肉が溶け、油が滾る。骨すら残さぬ炎が、俺を焼く。

 確実に死ぬことを知りながら死へと向かう恐怖。

 爛れ黒ずむ皮膚のように崩れていく自分の生に悲鳴を上げる。

 実際に叫んだのかもしれない。

 死への恐れ。生への渇望。

 けれど炎はその慟哭も慈悲なく飲み込んだ。空気さえもここにはない。ただ炎が開いた口から体内奥部までその触手を伸ばす。言葉を許さず喉を焼き、呼吸を許さず肺を焼き、生きることを許さず心を焼く。


 助けて、誰か助けて………。


 声にならない言葉ばかりが、喉を通ることなく炎に嚥下される。


 もう半分は溶けただろう眼球に映るのは、出来の悪いハリガネのマリオネット。

 それは俺と同じ車体の中に閉じ込められた二体の人の形。

 潰され曲がった歪な炭のオブジェ。




 父さんと、母さん。




 面影などないそれになぜかすんなりと自分は両親を当てはめた。

 納得した。

 そして自分の末路を知った。


 嫌だ……。死にたくない……。死にたくないよ。

 あんな物に成り果てて、死ぬのは嫌だっ!!


「……お兄ちゃん」


 耳は焼かれていないのだろうか。聞こえてくる恐れを秘めた声のほうへと顔を向ければ、そこに妹がいた。

 俺たちのように潰れた車の中にはいなかった。剥がれたドアと共に座り込んで俺を見ている。


 妹は炎に焼かれてはいなかった。

 妹の傍に死神はいなかった。


 ただ頭から血を流すだけで、こちらを見ている。焼かれ焦げて行く俺を見ている。

 安全圏から死に行く俺を見ている。


 なぜ、お前は生きているんだ?


 もう、死んでいた。そのときに俺はもう死んでいた。

 ただ憎悪というのも生ぬるい感情が、吹き出たのだけは覚えている。




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