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十五従軍征  作者: 魂馬 一心
第一章 十五の春
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第五幕 名前を呼ぶ間もなく

喊声は思っていたよりずっと早く近づいてきた。


土煙が視界を覆い、太鼓の音が地響きのように腹に響く。ドン、ドン、という重低音が足の裏から突き上げてくる。将の号令も、周りの怒鳴り声も、もう半分は聞き取れなかった。李征は隊列に押し出されるようにして前へ進んだ。足が震えているのか地面が震えているのか、自分でも分からなかった。心臓が耳の奥で早鐘のように打っていた。


「おい! 李征、離れるな!」


張の声が聞こえた。振り返る余裕はなかった。


最初に見えたのは敵の姿ではなく、味方の背中だった。何人もの背中が、ひしめき合いながら前へ前へと押し出されていく。汗と土埃の匂い、誰かの荒い息遣い。その隙間から、遠くに黄色い布を頭に巻いた一団がこちらへ向かって突っ込んでくるのが見えた。数えきれないほどの数だった。


そこから先はもう記憶が途切れ途切れだった。


怒号。金属のぶつかる音。誰かの悲鳴。土と血の匂いが混じり合い、鼻の奥にこびりついた。視界の端で何かが振り下ろされ、何かが倒れる。誰が味方で誰が敵かさえ、一瞬わからなくなる。李征は何をどう振るったのかも覚えていない。ただ、目の前に迫るものから逃げるように槍を突き出し、体を反らし、倒れないように足を踏ん張り続けた。呼吸の仕方すら忘れていた。


「小六! 小六!」


誰かが大声で叫んだ。李征は反射的にそちらを見た。


陳小六が槍を取り落とし、その場にうずくまっていた。震える手で腹を押さえている。指の間から黒っぽい血がとめどなく溢れていた。顔から血の気が引き、唇が震えている。声にならない声で何かを呼んでいるようだった。母親の名か、あるいは誰か別の名か李征には分からなかった。


助けに行こうとした足が動かなかった。地面に根を張ったように、体が言うことを聞かない。


代わりに前へ進んできたのは張だった。土煙の中を大きな体を屈めながら突き進んでいく。だが、小六に手が届く前に、横合いから振り下ろされた刃が張の肩口に食い込んだ。鈍い音がした。張は短くうめき、片膝をついた。


「張!」


李征は叫んだが、自分の声が自分のものでないように遠く聞こえた。喉が裂けそうなほど声を張ったはずなのに、耳に届く自分の声は、まるで水の中で発したかのようにくぐもって歪んでいた。


張はなんとか立ち上がろうとした。片手を地面につき、震えながら体を起こそうとする。もう一度、隣村の娘に想いを告げるはずだった。帰ったら、と。そう言っていたはずだった。だが、その言葉を交わす暇もなく、次の一撃が張の体を地に沈めた。


名前を呼ぶ間もなかった。


李征はその光景をただ見ていることしかできなかった。恐怖でも悲しみでもない、もっと得体の知れない感覚が体の芯を凍らせていた。視界が妙に鮮明になっていくのに、体はまったく動かない。


——動け。動かなければ死ぬ。動け。


頭の中で、誰かの声がした。父の声だったのか、自分自身の声だったのか分からなかった。


——低く構えろ。風上に立つな。動くものより、動かないものを警戒しろ。


体が勝手に動いた。李征は姿勢を低く落とし、味方の陰に身を寄せながら、乱戦の隙間を縫うように後退した。正面から敵と切り結ぶことはしなかった。ただ、視界の端で動くものにだけ反応し、槍を突き出してはすぐに引く。深追いはしなかった。まるで、体だけが山で覚えたやり方を思い出したかのようだった。


どれくらいの時間が経ったのか、分からない。


気づけば喊声は遠のき、代わりに呻き声とすすり泣きがあたり一面から立ち昇っていた。土埃が薄れ、赤く染まった地面が日の光の下に晒されていく。地に横たわる者たちの数は、立っている者よりも明らかに多かった。


李征は槍を杖のようにして、ようやくその場に膝をついた。全身から力が抜け、立っているのがやっとだった。


体のどこにも大きな傷はなかった。ただ、両手が震えて止まらなかった。指先から始まった震えが、肩まで伝わってくる。


視線を落とすと、自分の手のひらに赤黒いものがこびりついていた。誰の血なのか、いつついたのか、まったく覚えていなかった。李征はしばらく、その手のひらを、まるで自分のものではないもののように見つめていた。


しばらくして、隊の生き残りを数える古参の兵の声が遠くから聞こえてきた。名前が一つずつ読み上げられていく。乾いた事務的な声だった。


張の名は呼ばれなかった。


陳小六の名も呼ばれなかった。


李征の名だけが、確かに呼ばれた。


「李征! 李征はいるか?」


李征は応えることができなかった。ただ、震える手のひらの血を、ぼんやりと見つめ続けていた。周りの声も風の音も、何もかもが遠く水底から聞こえてくるようだった。


その日、桐柏の山で覚えた「静けさを読む」という技は、初めて、人の死を読むために使われた。

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