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小学四年生に戻った俺の、あの頃からのやり直し  作者: HATENA 
第二章 四億円の使い道

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閑話 赤い旗の端【別視点・三浦遼太】

 一組の先生に呼ばれて戻ると、隣の席の男子が、赤い旗の角を足で押さえていた。


「遅い」

「呼ばれてすぐ戻ってきただろ」


 男子は、足元の旗から顔だけ上げた。


「二組に勝ったって言いに行ってたんだろ」

「勝ったんだから、言いに行ってもいいだろ」

「わざわざ二組まで?」

「別にいいだろ」


 さっき二組で見た七海は、まだ言い返し足りなさそうだった。でも、勝ったのは本当だ。


 もう一人の男子が、旗の向こうから俺の足元を指さした。


「三浦、そこ持って」

「ここ?」

「角」


 最初に「遅い」と言った男子が、足で押さえていた角を手に持ち替えた。


「三浦、話すなら手も動かす」


 先生に言われ、しゃがんで旗の角をつかんだ。


 赤い布の裏から、白い粉と細かい土が落ちる。三人で端を持ち上げると、真ん中に長いしわができた。


「せーの」


 声に合わせて引いたつもりだったのに、俺のところだけ先に動いた。


「三浦、早い」

「せーのって言っただろ」

「こっち、まだ持ち直してたんだよ」


 もう一度旗を開く。


「次、俺が言う」


 向こうの二人が持ち直すのを待った。


「せーの」


 今度は真ん中にしわができなかった。端を合わせて半分にし、土のついた面を外へ出したまま、もう一度折る。


 細長くなった旗を三人で体育倉庫まで運んだ。棚の空いている段を探し、真ん中の段へ入れた。


「あとで土を払うから、上に何も載せるなよ」


 先生に言われ、最後に手を離した。赤い旗の端だけが、白く汚れたまま棚の手前に見えていた。


 教室へ戻って着替えると、机の上に修学旅行のしおりが置かれていた。


 最初のページを飛ばして、後ろの方にある持ち物の欄を開いた。


「小遣い、三千円までだって」

「そこから見るのかよ」


 隣の席の男子も自分の席へ戻り、横からしおりをのぞいた。


「お菓子は食べられる分。使い捨てカメラは、名前を書けば持ってきていい」

「カメラもいいの?」

「ここに書いてある」


 持ち物の一番下にある行を指で押さえた。


「三浦、持ってくる?」

「母さんに聞く。持っていけたら、みんなで撮ろうぜ」

「三浦が撮ったら、三浦いないじゃん」

「交代すればいいだろ。俺も入る」

「じゃあ最初は三浦が撮れよ」

「何でだよ」

「三浦のなんだし」

「次はお前だからな」


 しおりを鞄へ入れようとしたが、水筒と体操服で中がいっぱいだった。筒みたいに丸め、空いている隙間へ差し込む。


「それ、落とすぞ」

「落とさない。家で広げるから」


 帰りの挨拶が終わると、さっき旗を畳んだ二人が教室の外から呼んだ。


「三浦、帰るぞ」

「待って」


 鞄を持って廊下へ出た。


 二組の前を通る時、中から七海の声が聞こえた。名前を書く前になくさないでよ、と誰かに言っている。


「三浦、カメラのこと聞くの忘れるなよ」

「俺が見つけたんだから、忘れないって」


 階段の手前で二人に追いつき、二人の間に入って下りた。

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