第九話 交渉と裁判
世界地図の最西端にある大陸。
ウェルドニア大陸。
その中心にはガルバディア帝国を置き、山脈と火山の多い複雑な地形をした大陸であり、そこは今まさにレイン達が居る大陸である。
そして、ウェルドニア大陸の北側には好戦部族の多いドナウ大陸、南には比較的に温和な部族が居るゲルム大陸が連なる。
大陸同士は細い陸地で繋がっているのだが、そこには強力な妖異が常に蔓延っており、大陸間での移動は容易ではなかった。
そのため、敵対国であっても、簡単には攻め込む事ができず、現在の世界の均衡が保たれていた。
これを人々は敬意と畏怖の念を込めて妖異の壁と呼んでいた。
しかし、ここ数年の間、妖異の壁にいたはずの妖異たちが徐々に減少していった事によって、大陸間の交流が盛んになると共に、資源の略奪など侵略行為が頻繁に及ぶようになってきた。
エストロアは北のドナウ大陸のほぼ全体を支配する武力国家。
「ガルバディア帝国国王閣下、お目にかかれまして大変光栄に御座います。私、エストロアより特使として参りました。エルムズと申します。」
謁見の間にて、後に数十人の部下を引き下げ王座を前に膝をつき頭を垂れるエルムズ。
「よい、面をあげよ。して、何用で此方に参られた?」
ガルバディア王は鋭い視線をエルムズに向ける。
今まさにガルバディア帝国ではエストロアからの特使との交渉が始まろうとしていたーー。
ーーーその頃、独房で一夜を過ごした二人と一匹。
「いやぁ、案外よい寝心地であったな、レイン」
コキコキと首を鳴らしながら伸びをするヤマト。
「う、ウ~ン。全然寝れなかった。。。」
「きゅー。」
レインの胸の上で伸びをするタマと目の下にクマを蓄え大の字で横たわるレイン。
「おぉ〜、ずいぶん好かれとるのぉ。儂以外にタマが懐くのは珍しいぞ。」
「いゃ、すんごい重いんですけどぉ」
レインとタマをみてうんうんと頷くヤマト。
ガチャン。…ギー。
独房の扉が開いていく。
「二人とも。王朝裁判の時間だ。コチラへ。」
憲兵が二人を外に出るよう促す。
「なんだ、朝飯は抜きか…」
「ゴクリ…。裁判…。」
ガッカリするヤマトと怯えるレイン。
ゆっくりと独房から外に出て数人の憲兵に囲まれながら先に進んだ。
そして、二人と一匹は広い部屋の中心にある証言台に立たされ、周囲に多くの審理員に囲まれる形になった。
カンカンカンっ!
証言台の正面にある裁判官席から甲高い木槌の音が鳴り響く。
「これより、被告人ヤマトとレイン。二人の魔素術乱用と魔素師登録における無申告罪及び、アーティファクト密造罪における裁判を執り行う!」
「やれやれ、暇だから茶番には付き合ってやるが…。いざと言うときはレイン。いいよな?」
「えぇ、僕、もう諦めます…。」
そうしてこれから二人の裁判が執り行われるのであった。




