第七話 脱獄と王
憲兵に連れられてガルディア城の地下に幽閉されたレインとヤマト。
「やれやれ、また独房生活か。おーい!折れてるとはいえ刀は丁重に扱えよー!!」
「はぁ、僕たちこれからどうなってしまうんでしょうか。」
楽観的なヤマトに比べ明らかに動揺しているレイン。
「まぁまぁ、レイン君、ここは動揺したって仕方ない。静かにしていようぜ。」
「ヤマトさん。随分と落ち着いてるんですね。」
「ま、何回もこういう事があったからなぁ。」
ヤマトは鉄格子の前に胡座をかいて細い目で周囲の状況を確認していた。
「なるほどなるほど。鍵はあそこか…。」
「ヤマトさん?」
「ふむ。通気口もあるな。所持品はあの箱の中で…。よし。大丈夫そうだ。儂は寝る!夜になったら起こしてくれ!」
そう言うとヤマトはドサっとその場に横になってすぐにいびきをあげた。
「あっ、ちょっ…ヤマトさん!」
ヤマトに先に寝られてしまったレインは心細そうに壁に寄りかかって膝を抱えた。
「地下だから夜なんて分からないよぉ。」
ーーー暫くの間、明かりの灯火がゆらゆらと燃える音だけが静寂を支配する。
「おい、夕食の時間だ。」
夕食を持ってきた憲兵が静寂を破る。
「おぉ!ここは食事が出るのか!!有難い!」
夕食の香りにムクッと起き上がるヤマト。
しかし、レインは膝を抱えたまま俯いていた。
「あのぉ。僕たちこれこらどうなるんでしょうか?」
レインは不安そうに憲兵に問いかける。
「貴様たちは明日の朝、王朝裁判にかけられる。処遇はそれによって決められる。大人しくしていることだ。」
憲兵はそれだけ伝えると鉄格子の受け渡し口に食事を置いてその場を離れた。
「ほほー。なかなかにご馳走ではないか〜♪レインも食べろ。」
「僕は吐きそうなので要らないです。」
「おいおい。これから体力勝負だってのに。ちゃんと喰っとけ!」
「え、それはどういう意味?」
レインの問いかけを無視してヤマトは鼻歌を歌いながら食器をカンカンと鳴らしパンとシチューをパクパクとたべはじめた。
「あぁ。このシチューというのはなかなかに美味いものだな!レインよ?」
「もう。呑気だなぁ。ヤマトさんは…」
「おっ…!来たな…。レイン、静かにしろ。」
呆れるレインにシッと人差し指を口に当てるヤマト。
ガサガサ。通気口から何やら音が聞こえる。
「あ、あれは…」
「賢いって言っただろう?持つべきものはタヌキよ。な?タマ?」
「キュキュ〜ン」
通気口からスッと降りてきた小動物は全てを理解しているように鍵箱から鍵を取ってきた。
「タマぁ〜♪偉いぞ偉いぞー。おーヨシヨシ。」
「す、凄いですね、この子。本当になんなんだこの生物は」
「きゅーうん♥」
タマから鍵を受けとるとヤマトはワシワシとタマを撫で扱いた。
「タマは儂の村が妖異に滅ぼされたときに見つけたタヌキの子だ。此奴の親もその時にやられたようだ。その時から一緒に旅をしている。」
「え、ヤマトさんの村が滅ぼされた?」
ヤマトはタマを懐に入れると一瞬憤ったような表情をしたが、すぐに剽軽な顔に戻した。
「そんな事よりも、ホレ!あの箱に荷物がある。さっさと拾って逃げるぞ。」
「でも、そんな事したら…」
「たわけ!もう扉はあいた!お主も共犯よ!」
「え、えー…。」
二人と一匹は荷物を取って装備を整えていた。
ガチャンっ!
「あ、おい!貴様ら何をしている!?」
夕食を持ってきた憲兵が驚いて直ぐに近くにある警報用の鐘を叩こうとした。
「やれやれ、来るのが早いな。」
「あ、ヤマトさん!殺しちゃだめですよっ!」
「承知の助よ」
ヤマトは一瞬で憲兵を間合いに置き、勢いを殺さずに深く腰を落とし突きの姿勢で虎鉄の柄の底を憲兵のみぞおちに入れた。
「かはっ!」
憲兵は一瞬で白目を剥いてその場に倒れた。
ガシャんっ!倒れた時に兵士の帷子が金属音を鳴らした。
「しまった!」
ヤマトは想定外の出来事に頭を抱えた。
「何だ何だっ!」
騒音を聞きつけてぞろぞろと兵士が階段を駆け下りてくる。
「や、ヤマトさぁ〜ん…」
「だぁ~!こりゃ死人が出るかも知れんぞ!」
数十人の憲兵と対峙する二人と一匹。
「おいおい。公務が終わって来てみれば何の騒ぎだ。」
「あっ、陛下!何故このような場所に!?いけません!賊が暴れているようなので!!」
階段から憲兵を割って入ってきた一人の男。
「よい。だが、客として迎えよと伝えた筈だが?何故独房に入れている?」
見るからに貴族の身なりをした男は憲兵に陛下と呼ばれていた。




