第五話 島国の伝説
ある島に残る伝説
昔々、赫き月満ちる夜。
一人の餓鬼が禍々しき剣携え数多の妖異を引き連れてこの島にやって来ました。
餓鬼は大陸の全てを飲み込み最期に僻地であるこの島を喰らい月に帰るのだと喜び勇んで島中の人間を葬り去っていきます。
そして、多くの妖異は満足の内に赫き月へと還っていきました。
しかし、餓鬼は何かが物足りなかったのか、或いは何かに気を取られていたのか。月に還る事なく修羅を求めたのです。
そして、小さな鍛冶師たちの町に辿り着くーー。
町の兵どもはある一つの可能性に掛けて一つの鍛冶場を護っていました。
しかし、餓鬼が持つ赫き剣の前に次々と倒れていきました。
餓鬼は言うのです
「あぁ、五月蝿い。鉄の声がする。壊さなければ。殺さなければ。」
そして、恐ろしい餓鬼が目的の鍛冶場に着き、一払いに焼き尽くそうとした瞬間、眩い蒼雷が天を走りました。
あまりの眩しさに目を瞑った餓鬼が次に目を開けた時、その目の前には一人の侍が対峙していました。
侍は赫き剣に向けて刀を構えるとこう言いました。
「赫き月の魔物よ、我らが星の抗いを受けよ」
蒼き刀身、天光の如く、赫き刀身、深淵の如し。
二つは決して交わる事なく弾き合い、長くその雌雄を決する事はありませんでした。
しかし、唐突に訪れる終わりは二つの剣によるものではありませんでした。
かつて、人であった餓鬼の肉体が限界を迎えたのです。
「いと、おしや、我が身朽ちるとも、覇道は朽ちぬ。」
餓鬼の身が滅んでゆくと、その手にあった赫き剣はどんどんと色褪せてゆきガラガラとその場に砕けて行くのでした。
「終わったのか?」
侍は膝をついて安堵しました。
しかし、それは終わりではありませんでした。
覇道の剣の破片を妖異たちが取り込み散り散りに消えていったのですーーー。
いつか覇道が蘇る時、抗うために。
この島には覇道を挫きし蒼き刀、村雨虎鉄がある。
そして、それを打ちし鍛冶師、それを振るった侍の末裔がいるのです。




