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私だけがストーリーを知らない乙女ゲームの世界に転生しちゃいました。ヒロインなんて荷が重すぎます!  作者: 櫻野くるみ


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20話 攻略対象者⑤ 商人の息子登場

「アリス、紹介しよう。ベクターだ。アリスと同じ一年だから、これから関わりも出てくるだろう」


ユリウスが最後の生徒会メンバーであり、五人目の攻略対象者でもあるベクターをアリスに紹介してくれた。

ベクターは背がアリスより少し高いくらいで、華奢な体型をしている為、まだ少年のような幼い印象を受ける。

明るいオレンジ色の髪はフワフワと柔らかそうに揺れ、丸いクリクリとした瞳が小動物みたいに可愛らしい。

イケメンというより、とびっきりの美少年といった感じだ。


アリスは前世で、乙女ゲームの攻略者には様々なタイプがいると聞いたことを思い出していた。

きっとベクターは『可愛い男の子系』タイプなのだと思う。

……知らんけど。


「アリスです。B組に編入しました。よろしくお願いします」


アリスが頭を下げると、ベクターは人懐っこい顔で笑い、握手を求めてきた。


「ボクはベクター、A組だよ。女の子が入ってくれて嬉しいよ! あ、同級生だし、敬語はナシね」


繋いだ手をブンブン振りながら可愛い笑顔で言われてしまえば、頷くしかない。

声も男性にしては高く、まるで同性と話している錯覚を起こしそうだ。


予想外だったわ。

五人目の攻略対象者が、こんな天使みたいに可愛い男の子だったなんて。

モニカって、こういう可愛いタイプが好きだったんだね――意外だけど。


「ねぇ殿下、さっきの料理、やっぱり頼みすぎじゃないかな? アリス、こんなに細いし、可愛らしい女の子なんだもん。余っちゃわない?」


ベクターが首をコテンと傾げ、人差し指を顎にあてながらユリウスに話しかけている。


むむっ、なんというあざと可愛さ!

ヒロインの私よりもずっとヒロインっぽいじゃないの。

しかも王太子のユリウスに対して、恐れを知らない無敵な態度!!

……もうベクターがヒロインでよくないかな?


「ふふっ、それなら大丈夫だよ」

「ベクター、彼女を甘く見ないほうがいい。むしろ私は足りない可能性も視野に入れているくらいだ」


ルードの言葉にブッとジェイルが吹き出しているが、一体何の話をしているのだろうか。

彼女ということは、アリスが関係しているに違いない。


「あの、何のお話ですか? 料理って?」

「歓迎会だ。今日の放課後、アリスの歓迎会をここで開くことにしたんだ。で、カフェテリアに配達を頼んできたってわけ」


ジェイルが教えてくれたが、歓迎会という言葉に戸惑ってしまう。


「え? そうなんですか? でも仕事が忙しいと言っていましたし、私の為にそんなの悪いですよ」


歓迎会なんていかにもなイベントに参加したら、たちまち五人との距離が縮んでしまいそうで怖い。

慌てて断ろうとしたのだが――


「ええーーっ、そんな悲しいこと言わないで? せっかく美味しそうな料理をたくさん注文してきたんだから。ねっ、お願い! ボク、アリスの歓迎会したいな」


目を潤ませたベクターに懇願されてしまった。


うん、これは断れないやつだな。

こんな可愛い子のお願いを断れる人間などいやしない。

モニカにも殴られそうだし。


「じゃあお言葉に甘えて。放課後楽しみにしてるね」

「やったーっ!! ボクの家が特別に学園に卸しているフルーツもあるからね。あ、ボクん()は商会をやってるんだ」


はい、存じておりますとも。

商人の息子なんだもんね。

でも知らないフリをしておこう。


「そうなの? 特別なフルーツって気になるなぁ」


これは本心である。

食べ物に罪は無いのだ。


「でしょでしょ? ね、アリスって昨日編入してきたばかりなんだよね? それまでは王都には住んでいなかったって聞いたよ」

「うん、男爵家に引き取られたばかりだから。今までは田舎で平民として生活していたの」

「そうなんだね! ボクも元平民なんだ。たまたま家業が軌道に乗って、父さんが爵位を手にしただけで。でもここのメンバーは身分とか気にしない人たちだから、安心して平気だよ! ね?」


ベクターが見回すと、「もちろんだよ」「当然だな」「そんな低脳はここにはいない」「アリス君はアリス君です」と皆バラバラながら、同じ内容の温かい返事をくれた。

今までヒロインだからと色眼鏡で見られ続けてきたアリスは、それがなんだか嬉しく思える。


「ありがとうございます」


アリスは笑顔でお礼を言ったのだった。



◆◆◆



歓迎会は放課後なので、まずは朝礼に間に合うように教室へと戻る途中、またしてもオフィーリアに遭遇してしまった。

というより、アリスの事を待ち伏せしていたようで、コソコソと物陰に引っ張り込まれてしまう。


「どうしたんですか? こんな人気の無いところまで。今日は一人なんですね」

「静かに! 誰かに見られたら大変なのですから。ほら、これを渡す為ですわ」


手渡されたのは、可愛くラッピングされたパウンドケーキだった。


「へ? なんで? あ、そういうシナリオがあるんですね! ヒロインが悪役令嬢に毒を盛られるシーンとか……痛っ」


おでこをデコピンされてしまった。


「本当に馬鹿なヒロインですわね。これはゲームとは関係の無い、昨日のお礼ですわ。カフェテリアで私たち三人のことをフォローしてくれましたでしょう? シナリオ的にはまずいのですけれど……嬉しかったのですわ。っと、人が来ますわね。これにて失礼」


オフィーリアはサッと離れると、何事もなかったかのように、堂々とした歩き方で去って行った。


ぷっ、なんだかなー。

中身は普通にいい人なんだよね。

彼女が悪役令嬢役じゃなかったら、おおっぴらに仲良くできたのに。

あの性格、かなり好きなんだけどな。


アリスはせっかく揃った五人の攻略対象よりも、むしろ悪役令嬢と仲良くなりたいと思ってしまった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] オフィーリア幸せになってほしいな。婚約者を大事にしない奴らより、悪役令嬢たちに幸せになって欲しくなる。
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