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私だけがストーリーを知らない乙女ゲームの世界に転生しちゃいました。ヒロインなんて荷が重すぎます!  作者: 櫻野くるみ


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17話 豪華メンバーでのお茶会

騎士を目指しているのかというアリスの質問に、ジェイルは一瞬迷ったような顔をした。

軽い気持ちで訊いてしまったが、何か困るような質問だったのだろうか。


「あ、立ち入ったことだったら答えなくて大丈夫ですよ? なんだかすみません」


アリスは食べ終わった丼を奥にやると、ケーキのお皿を手前に置き、そちらに取りかかることにする。

どんなに食べてもケーキは別腹なのだ。

ちなみに、ジェイルはカツサンドをペロッと胃に納め、ジンジャーエールを飲んでいるところだ。


「んー、立ち入ったこととかそういうんじゃなくてな、最近考えてたところなんだ。オレ、親父が騎士団長だからって、特に疑問も持たずに騎士になるもんだと思っててさ。今更だが、それでいいのかって……」


思っていたより重い回答が返ってきてしまった。

そんな『ヒロインだけには特別に打ち明けるけど……』みたいな雰囲気で、今日初対面の私に深い話をしないでほしい。

フラグみたいで怖いじゃないの。


そんなアリスの戸惑いが表情に出ていたのか、「あ、悪い悪い。気にしないでくれ。ちょっとタイムリーだったから口から出ただけだ」と明るく言うと、ジェイルはまたジンジャーエールを口に運んだ。


でも会話を振ったのは私だし、このままスルーするのもなぁ。

それに、今の私と似ている部分もあるかも?


「気持ちはわかるかもしれません。勝手に未来が決まってしまっている不安というか。私も自分で納得した道を進みたいと願っているので……」

「そうなんだよ! オレは別に騎士に不満がある訳じゃないんだが、将来当たり前のように騎士団長を目指すと思われて、期待されるのはなんか違うというか」

「わかります! 途中まで下手に期待させると、後で取り返しがつかなくなりそうで。だったら最初から期待されないように、全部壊したくなるというか」

「そうそう、オレもいっそ騎士なんかやめて、他の道を探すっていう選択肢もありだよな!」

「そうですよ、私たちまだ若いし、どんな未来だって描けるんですよ!!」


なんだか変なところで意気投合してしまった。

溜まっていた鬱憤を吐き出せたからか、少し清々しい気分だ。


「いやー、まさかこの学園でこんなに話がわかる令嬢に会えるとはな。話してみるもんだな。アリスは親に気が乗らない結婚でも勧められてるのか?」

「そんなところです」


親にだけでなく、この世界のほぼ全員に、望まない何股もの恋愛を勧められているとはさすがに言えない。

しかも、ジェイルもその攻略対象の一人なのだ。


「貴族の娘はなー、昔から政略の道具に使われがちだからな。オレにも最近できたんだよ、婚約者ってやつが」


うんうん……って。

出てきたじゃん、取り巻き一号さん!

やったね!!


「私、その方なら今日お会いしましたよ。オフィーリア様と一緒にいらしたので!」

「そうか」

「……いやいや、婚約者さんでしょう? 反応鈍くないですか?」

「知らないうちに勝手に決まってたからな。名前も知らない」

「そこは覚えましょうよ……」


あんなにあなたの為に影で頑張っているのに。

一号さんが報われないじゃない。


「じゃあ今から覚えるか。なんて名前だ?」


は?

私に訊くの?


「……知りません。ジェイル様の婚約者だって仰っていたので……」

「ぶっ、なんだよ、アリスも知らないんじゃないか」

「ううぅ……」


ごめん、取り巻き一号さん。

ちゃんとあなたの名前を聞いておくべきだったよ。

でもあなたもモブに徹し過ぎだって!


また笑い出したジェイルを情けない顔で見ていたら、突然視界の端で何かが光った気がした。


「やあジェイル。楽しそうだね。おや? 君はアリスじゃないか」


光った正体は、王太子ユリウスの金髪だった。

日光を浴びてキラキラと輝いている。


「ユリウス、こんなところで珍しいな。お? ルードも一緒か」

「ちょっと行き詰まってしまってね。気分転換だよ。ね、ルード?」

「ええ。最近は案件が立て込んでいたので。また会ったな、アリス嬢」


ユリウスは宰相の息子のルードを連れていた。

生徒会長と副会長同士、仲がいいのかもしれない。


「なんだアリス、今日編入してきたのに顔が広いな」


ジェイルに揶揄われてしまった。


「たまたまです。ジェイル様こそ、お二人と知り合いなんですか?」

「幼馴染みってやつだな。親同士の繋がりで。年はオレが一個下だけどな」


なるほど、宰相も騎士団長も国王の側近だもんね。


ふむふむと納得していたら、ユリウスが爽やかに爆弾発言をした。


「ジェイル、僕たちも仲間に加わっていいかな?」

「もちろんだ。アリスは面白いぞ? 久々にこんなに笑ったよ」

「楽しそうな声があちらまで聞こえていたよ。僕も楽しみだ」

「確かに君は興味深い令嬢だと思っていたところだ」


ユリウス、ジェイル、ルードが親しげに会話を交わしている――何故かアリスについて。

そして、呆気に取られているうちに、なんだかすごいメンツのテーブルになっていた。

野次馬のボルテージも上がり、「こんな神展開があるなんて!」とか「他の人にも教えてあげないと!」と興奮する声が嫌でも聞こえてくる。

憂鬱でしかない。


「ところでアリス嬢」


ふいに話しかけてきたのは、予想外にも無表情なルードだった。


「なんでしょう?」


何を言われるのかと身構えていたら。


「その皿は、全部君が食べたのか?」


まさかの質問だった。


「すげーいい食いっぷりだっだんだぜ? ステーキ丼なんて大盛りで! オレ、女の子が大盛り完食してるの……いや、ステーキ丼を食べてるの自体初めて見たもんな!!」


そんな目を輝かせながら、私の大食いをバラさなくても……。


「そうか。たくさん食べて、アリスは健康的な女の子なんだね」


ユリウスが本心から褒めているのがかえって辛い。


「その量を……そうか、それは興味深いな」


おいおい、どこに興味を持ってるんじゃい!!


こうして、無駄に豪華なメンバーによるお茶会もどきは始まったのだった。


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