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私だけがストーリーを知らない乙女ゲームの世界に転生しちゃいました。ヒロインなんて荷が重すぎます!  作者: 櫻野くるみ


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13話 悪役令嬢トリオを味方に?

「だから謝ってるじゃないですかぁ」

「そんなことを言って、全然反省してないよね!?」


現在はお昼休みで、アリスは教室でチェルシーを問い詰めているところだ。

彼女に騙された結果、もう二人も攻略対象者に出会ってしまったのだ。

どうしてくれる!


「アリス様がターゲットの皆様と出会うのは運命であり、必然ですからね。仮に私が何もしなくたって、どうせ出会ってますってー」

「いやいや、学園までついてきたくらいに、出会いイベントを起こす気満々だったよね?」


そう言ってやれば、「てへぺろ」と言いながら舌を出している。

懐かしい反応だが、そういえばチェルシーが何歳なのかもきちんと訊いていなかった。


「チェルシーって一体歳はいくつ……」


問いかけた途中で邪魔が入った。

また朝の悪役令嬢、オフィーリアである。

今度は取り巻きの令嬢を二人も連れていた。


「田舎娘さん、少しよろしいかしら?」


全然よくない……。

今からカフェテリアでお昼を食べるつもりだったのに。


でもよくはないけれど、このまま一日に何度も絡まれるのも正直面倒だ。

ここは一気に方を付けようと、アリスは誘いに乗ることにした。


「オフィーリア様、ごきげんよう。もちろんいいですよ。ここだと人が多いので、外に行きましょうか。そうだわ、ちょっと校舎裏までお付き合い願えます? お二人もご一緒に。さあさあどうぞ」


アリスは『オフィーリアと愉快な仲間たち』の背中をグイグイと押して、強引に教室から出ようとしたが、彼女たちは移動したくないようで駄々を捏ね始めた。


「ちょっと、なんで校舎裏なんかに……。人目のあるところで虐めないと、わざわざ嫌がらせをする意味がないじゃない!」

「そうですわ、今は悪役令嬢たちがアリスに釘を刺しにくる、大切なシーンですのに!」

「私たちだって陰でまで虐めたくなんてないわよ。そんなの陰湿じゃない!」


なるほど、やっぱりこのトリオも与えられた役に忠実なだけってわけね。

……気の毒に。


「大丈夫だから話をさせてくれませんか? 悪いようにはしませんって」


アリスはまるでこちらが悪役のような台詞を吐くと、前世のカツアゲをする不良のように、三人を校舎裏へと引っ張っていった。



「それで? わたくしたちに話って何かしら?」


人気の全くない場所なのに、ちゃんとふんぞり返り、偉そうな態度を貫く根性は見上げたものだと思う。

その威圧的な様子では、確かにアリスは因縁をつけられてしまった、か弱い下級生のように周りからは見えるに違いない。

今は他に誰もいないので無意味だが。


「あ、わざと悪役令嬢っぽく振る舞わなくて大丈夫なので。単刀直入に言いますね。私、『ときラビ』を知らないんです。もちろん攻略にも興味ないですから。婚約者さんを奪ったりしないので、安心してください」

「「「は?」」」


トリオが間抜けな声を出し、固まってしまった。

しばらく復活しそうにない。


やれやれ、またこのパターンか。

チェルシーが授業中に回していた手紙、馬鹿馬鹿しいと思っていたけれど、いっそのこと学園中に回覧してやろうかしら。

『アリスはときラビ未プレイだから放っておいてネ』に文面を変えて。


くだらないことを考えながら待っていたら、最初にオフィーリアが立ち直った。

さすが王太子の婚約者である。


「どういうことですの? あなた、『ときラビ』をプレイしたこともないのにヒロインですの?」

「仰る通りです。私も好きでヒロインに生まれた訳ではないので……」

「じゃあ攻略はどうするつもりですの? ユリウス様と、ジェイル様の出会いイベントはもう発生していたはず……。あ、ちなみに私はジェイル様の婚約者ですの」


取り巻き一号の赤い髪の令嬢が言った。


『取り巻き一号』が騎士団長の息子、ジェイルの婚約者だということは……。


勝手に名付けた『取り巻き二号』の青い髪の令嬢を見たら、ツンとした表情で教えてくれた。


「私は宰相の息子、ルード様の婚約者ですわ」


ですよね。

この取り巻きの二人も、攻略対象者の婚約者ってわけね。

でもこの二人、いくら取り巻きだからって、名前くらいちゃんとあるんだよね?

全然名乗ってこないと不安になるじゃないの。


そして、宰相の息子はルードという名前らしい。

そんなことすら知らないアリスは、やっぱりヒロイン失格ではないだろうか。


「私、攻略に参加する予定も願望も無かったのに、たまたま二回も出会いイベントが起こってしまって困っているんです。これ以上イベントが発生して好感度が高くならないように協力してくれませんか?」


きっとこのトリオなら――いや、普通の人なら悪役令嬢なんて嫌に決まっているし、私に協力してくれるはず。

私が何もしなければ、彼女たちはきっと婚約者とうまくいくだろうし、私を虐める必要だってなくなるもんね。

元々はいい人たちみたいだし。


しかし、その考えは甘かったとすぐに気付かされた。

アリスはまだこの世界の住人について、十分には理解出来ていなかったようである。


「そんなこと出来ませんわ!!」

「私たちがどれほどの思いで、『悪役令嬢とその取り巻き』を全うしようとしているのかおわかり?」

「確かに断罪は軽めにして欲しいと望んでおりますけれど、嫌がらせはきっちりこなして、婚約者をヒロインとの幸せなエンドへと導いてみせますわ!!」


出たよ……出ちゃったよ、またしてもモブのプライドが。

もう、みんなして何なの?

自分で婚約者を幸せにしたらいいじゃん。


やっと味方が出来ると期待していたアリスは、ガックリと肩を落としたのだった――が、同時に気付いてしまった。


そうだ、攻略対象者に直接「私、攻略しないので!」って言えばいいんじゃない?


アリスは自分の思い付きに、自画自賛するのを止められなかった。


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