第10話:初めての町で偽装工作に勤しむ
1日目:アルサの町
ふむ、1日目が終わらない。終わってもらっても困るけど。
色々やってるうちに、町についたのは16:00過ぎ位だ。
あの門番に色々と聞いたお陰で、町の事前情報は増えている。大銅貨1枚の価値は有ったな。
例のごとく、お金のはなし。
貨幣は基本、硬貨である。紙幣はまずなく、商会等が取引で使う証文だろうか。
硬貨というか、通貨は世界共通だ。恐ろしかろう。
時たま、俺の国だけの通貨つくるぜー。とか起きるが、基本的に、世界共通通貨が有る。
はいどん。
賎貨:1
大賎貨:10
銅貨:100
大銅貨:1000
銀貨:10,000
大銀貨:100,000
金貨:100万
大金貨:1千万
白金貨:1億
大白金貨:10億
この方が見やすいかな。どうだろう。
そんなわけで、門番に渡した袖の下は、大銅貨1枚。
凡そ千円位の価値だ。中々だろう。千円なんて、言い切れるのか? 言い切れるとも。
何故なら、単位は、エンやで。あまり使われないけど。
大抵、銀貨何枚とか、銅9とか、そんな感じ。
物価は流石に違うが、日本の感覚に何故か。
そう、創造神(ry
ちなみに、お金は最初から持っていたものだ。旅装セットの1つ。お金持ち! ってほどは入ってない。リソースの問題が有ったからだ。
手持ちは、白金貨10枚、金貨10枚、銀貨10枚、大銅貨9(10-1)枚、銅貨10枚、賎貨10枚。
あれ、結構持ってるな。金貨以上はアイテムボックスに入れてある。
一般的に用いられるのは銅貨、少し高めで銀貨だ。金貨はあまり使われない。
あれ? サンプル用に10枚、大銅貨だけ使用頻度高いらしいから追加したけど、結構なもんじゃねぇか。
まぁ、考えて使えば良いだろう。
ちなみにちなみに、世界共通通貨:エンがめちゃ強い理由は、ダンジョンから出るんだ。
貨幣がそのまま。
含有率は一定で、基本的に偽造不可能。信頼度爆高。
使わない理由がない。
徐々に総量は増えていくように思えるが、貨幣を食らうモンスターも居るし、儀式の贄として消滅することも多い。
実際には、微増といった具合で、急激なインフレデフレは起きないらしい。
いつの間にか10億持ってることを頭の隅に起きつつ──目をそらしなどしない──、目的地へと付く。
ここは、鑑定協会だ。
──────────
アルサの町:鑑定協会
視点:受付嬢
ここは鑑定協会。その人の持つ、スキルやステータスを可視化する、世界規模の協会。冒険者ギルド程ではないが、全世界の大きな町以上に存在する。
村に置かれないのは、費用対効果と、安全のためだ。
鑑定協会では、鑑定アイテムを使って、その人のステータスを見ることが出来る。
始まりは、異世界から来た勇者、通称2代目勇者様の遺産だ。
生産系勇者と、自分を称していた2代目勇者様は色々な役に立つものを造った。
その代表的なものが、冒険者ギルドのギルドカードと、鑑定協会の鑑定アイテムだ。
複製にもコストがかかるし、使用自体にもコストがかかるため、町レベルからしか置かれない。
盗まれても使用できない呪いが有るため、その心配は無いのだが、複製コストがかかる。
その為、鑑定協会はある程度の武力もあるし、受付嬢は質を高めている。
実際にお給料も良いし、冒険者ギルドよりも来る人の幅は広いものの、冒険者のようにガラの悪い人の割合は低い。美人に生んでくれた親に感謝ねー。
ちょっと暇しつつ、来客を待つ。費用もかかり、知れても価値が有るかわからないステータス。
鑑定協会はそこまで忙しくないが、その代わりよく来る人は基本お金持ちだ。
ステータス鑑定能力持ちなんて、中々見付からないし。
冒険者も、命がかかってるのでよく来るが、静かにしないと鑑定してあげないので、大体落ち着いている。
あっちの受付嬢は大変ね。
おっと、来客ね。
「すみません、鑑定と、鑑定書の発行をお願いします」
あら、赤い髪の綺麗な男の子ね。成人の記念鑑定かしら。
「分かりました。鑑定と、鑑定書の発行ですね。鑑定に大銀貨1枚、鑑定書に銀貨1枚かかります。宜しいですか?」
少し驚いたような顔をする男の子。まあ、そうよね。最初は高いと思うかも知れないけど、それだけ取らないと採算が取れないのよ。
「えっと、大銀貨の持ち合わせがなくて……金貨でも宜しいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
少し小声で話してくる。当然ね。金貨なんて持ってると知れたら、結構危ないもの。見た感じ、そこまで強いとも思えないし。
「では身分証の提示をお願いします」
「はい。仮の身分証ですけど。これから冒険者ギルドに行く予定なんです」
あら、それで。鑑定書が有ると、登録がスムーズになるもの。
鑑定書は魔法紙だから高い代わりに信頼度が有る。どうやら、目端が利く子ね。
色々と、鑑定でのルールを説明しつつ、身分証の確認を終える。
「はい……レッドさん。身分証を確認しました」
「では……これを」
ちょっと葛藤した様子で銀貨と、金貨を隠しつつ渡してくる。なけなしのお金かしら? 可愛いわね。
「はい。こちらをお返しします」
隠しながら、お釣りの大銀貨を返す。一応、ブースになってるけど、礼儀よね。
「では鑑定部屋へ行きましょうか」
「はい。お願いします」
うんうん。礼儀正しいのはポイント高いわよ。顔も良いしね。
──────────
鑑定部屋は、周りから見られないように個室だ。結構広い部屋に、大きな鑑定アイテム。
ステータスは、それこそ個人情報の塊だ。ルール上、受付嬢、そしてデータベースには登録されてしまうが、守秘義務が有る。私も契約魔法を受け入れてるし。
レッドさんが、鑑定アイテムでスキャンされる。結果待ち……。あら。
「結果が出ましたよレッドさん。こちらをご覧ください」
ステータスのうち、この町で表示できるのはレベルとスキル欄、耐性欄だけだ。
大きな都市とか、主要都市ではより詳しく分かるらしい。その代わり、コストも上がる。
ステータスを表示しているモニターを案内する。
文字を読めることは聞いているが、アシストは受付嬢の役目だ。
大まかなスキルの説明も出来る。
【モニター】
レベル:15
ノーマルスキル
<剣術:レベル:2>
<感覚強化:視聴:レベル:1>
<投擲:レベル:3>
<速読:レベル:2>
<思考加速:レベル:3>
耐性
<精神耐性:レベル:8>
「何か、ご質問などは有りますか?」
「そう、ですね。冒険者としてはやっていけそうでしょうか?」
「私見ですが、剣術と投擲のスキルが有るため、戦うことに関しては問題ないと思います。思考加速も便利だと思いますよ。
視覚と聴覚の強化も、冒険者には有用です。感覚強化のレベルはまだ低いですが、感覚強化系のスキルはパッシブスキルの中でも上がりやすいので、より良くなっていきますよ。
取得の経緯に、心当たりは有りますか?」
成人したばかりと聞いているし、動機もよくあるもの。
最初のスキル鑑定で、これは普通に当たりね。
大抵はもっと少ないし、役に立ちにくいスキルが多い。
エクストラは無いけど、努力すれば届くかもしれないし。この子は有望そうね。
「剣術は教わったことが有りますし、投擲は鳥を獲るのに使ってました。目が良いと言われたこともあります。
他のは良く分かりません。特に、この耐性の高さは……」
そうよねー。耐性の<精神耐性>高過ぎよね。とすると。
「では、先天的な耐性。ギフトと呼ばれるものでしょう。
精神攻撃をするモンスターと戦う時にはとても心強いと思いますよ。良いギフトです」
「そうですか! それなら良かったです」
本当に、ろくなギフトじゃないこともあるし。天賦の才能でもあり、毒でもある。昔の人は良く言ったものだわ。
幾つか会話を重ねるうちに鑑定書が出来上がった。
「こちらが鑑定書になります。ご確認ください」
「はい、大丈夫です」
あら早い。あっ、速読。
「こちらの筒に入れてお持ちください。破損に気を付けてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
鑑定部屋を出て、挨拶する。
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、またのお越しをお待ちしております」
笑顔でにっこり。軽くお辞儀。
あらら、効果は薄めね。足早に去っていった。冒険者ギルドが夕方は混むって言ったの、失敗だったかな。
「あらレーネ、さっきの赤い髪の子、どうだった?」
「駆け出しより、良いスキルだったと思うわよ?」
同僚のオーリに話し掛けられる。守秘義務に値しない部分の会話は、良く上がる話題だ。
「へー、貴女にしては愛想良かったじゃない。気に入ったの?」
「にしては、は余計よオーリ。
それを言うなら貴女もでしょう? まあ悪くはなかったわ。
顔も良いし、態度も丸ね。何より好色の視線がないのが良いわね」
「あらー? 貴女のその脂肪に目が行かないなんて、もしかして彼貧乳好きかしら」
「脂肪言うな。評判良いのよ?」
「うふふ、少し分けなさいよ。今度来たら私担当しようかしら」
「貴女好きねぇ、年下」
「生き甲斐よ、い・き・が・い」
「もう少し母性つけなさいよ」
「うっせぇ黙れ──ようこそ鑑定協会へ!」
一気に声が変わる同僚を横目に、肩を動かす。これ、肩凝るのよ? メリットも有るけどね。
──────────
よし、首尾良く鑑定書を手に入れることが出来た。高かったなおい。1回十万だぜ、試験に。
あれ? 受験そんくらいするわ。
夕方は冒険者ギルドは混む、か。想定内では有るが、気を付けていくとしよう。
テンプレは嫌いじゃないが、場合によりけり、だな。
創造神様が異様に便利すぎる。この人一人で説明が付くことが多すぎる。
2代目勇者さんは時折出てきます。本来、全く別のプロットにいた存在ですが、何故かこちらで登場しました。
巨乳受付嬢:レーネさんですが、そもそも人間嫌いなレッド君には刺さりませんでした。
人外の巨乳なら心は揺れます。そう、揺れるんです。




