第9話:何時もやっていたことをするだけで、面倒事は回避できる
1日目:アルサの町:門前
他視点開始。
視点:アルサの町:門番
今日も今日とて門番生活。特に不満はないが、大変な仕事であることは変わりはない。
今日の相方は今年から入った新人。つっても慣れてきてるから当てには出来る。最初は大変だったがな。
朝の忙しい時間帯を過ぎ、昼の時間帯も過ぎ、そろそろ太陽は落ち始め空は赤くなる頃。
夜は門を閉める為、もう少しするとギリギリ急いで入ってくる隊商も有るかもしれない。
南門ならな。こっちは北門。
こっちは森に続く道。幾つかの村々と、遠い他国に通じる位。
通るのは主に、依頼を受けた冒険者か、依頼しなかった町人。たまに旅人。来なくて良いのはモンスターってね。
まっ、治安もよく、モンスターの強さもせいぜいがランク3。運が悪けりゃランク4以上だが、その時はすぐに門に入って閉めりゃ良い。
「先輩」
「あん、どうしたよ」
「あっち見てください」
あっちだぁ? んー?
「何があんだよ」
「珍しく旅人です。あの外套の冒険者は見覚えないですし」
「そうなのか? 俺にゃあ見えないが」
「<視力強化>スキル持ちですからね。そろそろ見えるんじゃないですか?」
そういやそうだったな。お陰でモンスターも見付けやすいから、仕事を覚えた今となっちゃ、意外と頼りになる新人だ。
「んじゃ、用意しとくか」
「はい。……あっ、軽く走り始めました」
「モンスターか!?」
「いえ、そうでもないような……。あっ、フード取りました。赤毛の男性のようですね。少し小走りで、ただ急いでるだけみたいです」
「チッ、驚かすな」
おっ、見えてきたな。確かに赤い髪だ。この町:アルサにも赤い髪の冒険者は居るが、あんな綺麗な赤じゃなかったな。
俺も見覚えはない。めんどくさい相手じゃなきゃ良いんだが……。
──────────
「どうも、ここはアルサの町で合ってますか?」
それが赤い兄ちゃんの第一声だった。
「はい。合ってますよ。身分証になるものの提示をお願いします」
とりあえず俺に話しかけられたので対応する。新人は一応、この赤い兄ちゃんの言動に注意を払ってるようだな。
っと、どうした?
「すみません。道中魔物に襲われて身分証を紛失してしまいまして。仮の身分証を発行して頂けませんか」
チッ、面倒なタイプだったか。だが、物腰は丁寧だし、小汚ない訳じゃない。見たところ、戦うタイプだしな。
「はい。仮の身分証を発行するのは構いませんが、入町税は高くなります。銀貨1枚となりますが」
「はい。銀貨1枚位ならなんとかなります。確か、身分証を持ってくれば、仮証と引き換えてくれるんでしたっけ?」
おっ、ハナシが早いじゃねぇか。
「その通りです。新人、用意しておけ「はい!」身分証ですが、当ては何か有りますか?」
「元々、冒険者ギルドに登録しようと思っていたので。冒険者ギルドのギルドカードが身分証になるんでしたよね?」
「それなら問題有りません。それでは、お名前と、この水晶に触れて頂けますか?」
「はい。俺の名前はレッドと言います。確か賞罰の水晶ですね。正式名称までは知りませんけれど」
「そんなものですよ。──はい、大丈夫です」
水晶に表示はなし、と。
「ではレッドさん。仮の身分証となります。効力は本日より10日なので気を付けてくださいね」
これは浮浪者対策だ。ないと奴隷落ちもあり得るってな。新人が身分証を手渡す。
「では、ようこそアルサの町へ」
お決まりの文言を告げる。……あん?
「ああ、ありがとうございます。そうだ、何処か良い宿屋は知りませんか? 値段はそこそこ位の所で」
握手だと?
──ほう、分かってるじゃないかコイツ。大銅貨か。新人に見えないようにしてるのも良いな。
「そうですね。風鷲の宿ならどうでしょう。冒険者ギルド協賛の1つです。鷲のシンボルが飾られた宿です」
「ありがとうございます。一度行ってみますね」
握手を交わし、赤い兄ちゃんことレッドは町へと入っていく。
「男にしては綺麗な顔立ちの人でしたねー。あれ? 先輩なんだか機嫌が良いですね?」
「あっ? ほっとけ。丁寧な旅人だったからな。もっと面倒かと思ってたから、良かったと感じただけだ」
「ああ! そうですね。丁寧な言葉遣いでしたし」
「つーか綺麗な顔立ちって、テメーは男色かよ」
「違いますよ! ただ綺麗だと思っただけじゃないですか!」
「そうかー? まぁ綺麗な顔立ちしてた気がするがな」
俺としちゃ、まともな通行人なら歓迎だ。きちんと入町税払ってくれたし。
普通はゴネるから面倒なんだよな。ルールだっての。
臨時収入も有ったし、今日は一杯行くかね。
「あっ、先輩。冒険者の方が戻ってきましたよ。Eランクの二人ですね」
「あいつらか。ガラ悪いから苦手だぜ、俺」
「先輩、対応上手いじゃないですか。言葉遣いも」
「こんなもん慣れだ慣れ」
やれやれ。もうすぐ夕方だ。忙しくなるぜ。
門番さんは年季の入った門番さんです。
おっさんです。




