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若葉を失った後の俺の人生は、魂の抜け殻のようなものだった。
親の決めた政略結婚を断固として拒絶し、葛木の家督を弟に譲り渡すと、俺は生涯を独身のまま過ごした。
短歌を詠み、若葉の面影だけを抱きしめて生きた。
やがて戦争の激動を越え、昭和も終わりの頃、老衰で息を引き取るその瞬間まで、俺の胸の中にあったのは「若葉、今度こそお前に逢いたい」という強烈な執着だけだった。
――そして、魂が肉体を離れ、深い暗闇の底へと沈んでいく輪廻の狭間で。
俺は、奇妙な【もう一つの記憶】の泡に触れたのだった。
『……我が愛妻よ。なぜ、私より先に逝ってしまうのだ……!』
武家屋敷の薄暗い一室。
畳の上で血を吐いて横たわる【女の身体】の自分。
その手を握りしめ、前髪を髷に結った屈強な武士が、子供のように大粒の涙を流して号泣していた。
若葉と出会った前世よりも、さらに数百年前――江戸の時代。
俺自身が【女】として生まれ、病弱な妻として、不器用ながらも命懸けで自分を愛してくれた【夫】の温もり。
(ああ……俺にも、誰かの妻として愛された前前世があったのか……)
けれど、その記憶の輪郭はすぐに遠のき、やがて若葉のあの最後の言葉が、激流となって意識を飲み込んでいった。
『来世では……今度こそ、貴方のすべてをちょうだいね……』
そうだ。
俺は約束したんだ。
来世では、誰にも憚ることなく、お前のすべてを奪い、俺のすべてをお前に捧げると。
手も握れず、抱きしめることもできなかったあの痛みを、今度こそ最高の熱量で塗り替えてみせると――!




