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僕たちの宿題  作者: 祓川雄次


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5/8

 八日に八神の家に集まった四人は、自由研究のある程度の事をまとめはじめていた。

「あとは原田の食生活などを聞いて、まとめればそれなりになるかな」

 吉岡がみんなの資料をまとめて言った。

「その前に、一つ問題がある」

 松本が珍しく問題提起をした。三人が真剣な顔をする松本に注目をした。

「この間、俺と広田で原田家に行った時に、おばさんに、自由研究のテーマを科学物質過敏症に変えたという事を伝えたけれども、当の本人にはまだ伝えていないはずだよな」

 確かにそうであったと三人が顔を見合わせた。原田に対して、誰もその事を伝えていないのだ。

「でもおばさんから聞いているのかな」

 想像で八神が言った。だが聞いているからいいという事ではないと吉岡が発言をした。

「聞いていたとしても、やっぱり俺たちが自分で伝えないとな。

そうじゃないと九班で自由研究をやったことにはならないような気がする」

「じゃあヨシ君が言うように、伝えに行かないとね」

 松本が吉岡の意見に乗っかった。

「明日は八神が無理だろうから、一番早く伝えに行けるとしても、一〇日か、広田、悪いけれどもおばさんに連絡をしておいてくれないかな」

「わかった、聞いてみるね」

 吉岡の頼みに対して広田は返した。

 これからの行動としては、原田にテーマ変更における了承を得ることと、母親から食事について聞くこと、というある程度の方向が定まることになる。

 思ったよりも早く自由研究が終わる可能性が出てきたことで、夏休みの後半は遊んで暮らすことができそうだ。松本は、今年の夏休みの楽しさを想像した。

 

 広田から、一〇日に原田に会えるという連絡があったのは、翌日の昼前であった。

 みんながなるべく科学物質を使わないようにして、自宅へと行ったが、やはり服は着替えて欲しいという母親の対応であった。やはり一、二回柔軟剤を使わなかっただけでは臭いは取れないようである。

 前回と同じように、着替えを済ませて、みんなは原田の部屋へと入った。もちろん前回と同じく、原田の体調を確認するために、母親も同席していた。

「みんな来てくれてありがとう」

 原田は前回よりも嬉しそうであった。それを尋ねたみんなは体調が良いからと取っていたが、原田からしたら違う感情がそこにはあった。

 学校に行けなくなってから、会う回数が少なくなってしまった同級生たちに、引っ越しをしたらもっと会えなくなってしまう。その思いがあったからこそ、余計に会える時間を大切にしたかったのだ。

「早速なんだけれども、自由研究についてなんだ」

 吉岡が切り出した。みんなが原田の反応を気にしていた。

「パンケーキだったよね。何か私もやることができたの」

 明るい笑顔の原田とは対照的に、話を耳にしていたが、娘には伝えていなかった母親の少し影をまとった顔がそこにはあった。その表情を松本と広田が確認した。伝えていなかったのかという思いと、自分たちが伝えて欲しいと言わなかったという思いが交錯していた。

「実は、自由研究のテーマを変えたんだ」

「えっ、そうなんだ。じゃあ何にしたの」

 原田は自分がテーマの発端になっていることなど、知るはずもなかった。それをどのように切り出そうか…吉岡は考えていたが、松本が口走った。

「化学物質過敏症について調べようという事になったんだ」

 別に悪気があったわけではない。計算をして動く吉岡と、真っ正直に動く松本の差であった。しかし、当事者である原田がどのように捉えるのか、それを思わずにいられない吉岡は、原田の反応を見るしかなかった。

「化学物質過敏症って、私がその病気になったからなの」

 先ほどと異なり、少し表情を暗くする原田がそこにはいた。キヨは何も考えないで話をするから……吉岡はそんなことを思い、松本に視線を送った。だが松本は原田の反応だけを見ているので意味を成さなかった

「きっかけはもちろんそうだったかもしれないけれども、純粋に知らないことを調べてみようという話になったからなんだ」

 広田が慎重な表情で言った。仲が良かったからこそ、原田がどのように考えているかが気になった。八神も見守るように固唾を飲む。

「何でそんな事を調べるの」

 一瞬で原田の目が釣り上がった気がした。

「私が病気になってかわいそうに思えるから、それとも当て付け……。

学校に行けない私がこの病気になって、どんなに苦しいか、みんなわからないからそんなに安易に、この病気の事を調べるなんて言えるんだ」

 釣り上がった目から、涙が溢れる。誰にも理解できない自分の気持ちなんて放おっておいて欲しかった。存在を忘れて欲しいわけではないが、自分が直面している問題を取り上げる必要はないと原田は思った。

「別にかわいそうとか、当て付けとか、そんな事は思っていないよ」

 八神が言う。それに同調して広田も首を縦に振る。

「きっとクラスのみんなも、私が学校に行けないから、色々な事を思っているんだ」

 完全な被害妄想であった。クラスの誰もそんな事は考えていない。逆に言えば、化学物質過敏症によって学校に来られないことを知っているのは、担任の倉又と母親から話を聞いた九班の四人だけでなのだ。

「私の病気の事なんて放おっておいてくれればいいのに…何でそんな事を」

 嗚咽を漏らす原田の言葉は長くは続かなかった。みんなが今まで見たことのない原田の姿がそこにはあった。学校に行けなくなって、どれほどつらい思いをしてきたのか、四人は想像していた。

「いいよ、どうせ私は二学期には引っ越しをするのだから」

 先日、両親と共に見てきた学校の風景が、原田の脳裏に蘇った。そこに行けば、今回のように自分が取り上げられることもない。ある種の見世物になることはないと思った。だからこそ、引っ越しの事を口にしたのでだ。

「えっ、亜美ちゃん、引っ越しをするの」

 広田が原田の言葉を聞いて呆然と言った。思わず口にしてしまった事を、原田が広田を見て気づいた。

「本当に引っ越すの」

 八神が続くように言った。原田は頷いてそのまま下を向いた。自分が学校に行くことのできない僻みで、みんなに言ってしまった事を後悔しているようでもあった。

「そう、引っ越しをするよ」

 原田の涙が、布団の上に落ちた。しばらくみんなの沈黙が続いた後、吉岡が口を開いた。

「原田に相談をしないで自由研究のテーマを変えたことは悪いと思っている。

けれども化学物質過敏症をテーマにしたことは、知らない事をできる限り解明したいという、純粋な思いからだったんだ」

「私は、少しでも私達が調べることで、亜美ちゃんが学校に出てこられるかもしれないって思って……」

 広田も原田に触発されて涙を流す。八神も同じであった。

「学校に出てこられるかどうかは、俺たちは医者じゃないから無理だっていう話になったんだけれども、少しでも原田の状況を理解できるかなと思ったりもしたんだ」

「なぜそのような病気が存在するかも、私たちは、好奇心もあるし、亜美ちゃんの事を思って考えてみたかったんだ」

 松本、八神が続く。女三人の涙が止まらずに、泣き声が部屋を埋め尽くした。

「原田が嫌だと言うなら、僕たちは今回のテーマをもう一度パンケーキに戻すことも考えよう。

 でも、僕たちが直面した事を調べて、それを少しでも解明する。これは好奇心でもあるし、それによって何かを切り開く材料にもしたいんだ。

 世の中には知らない事がいっぱい溢れている。僕たち子供は、大人以上に知っている事は少ない。けれども大人たちですら、知らないことはある。

 今回、化学物質過敏症を調べることによって、僕たちは大人たちでも知り得ない事を知ることができるし、それを知らない人たちに知らしめることもできる。

 そして少なからず将来、このような病気になる人が減ることを望むこともできる。

 それは僕たちが、この年令だからこそ、小学生だからこそ、今の段階で知り、未来を変える力を持てるかもしれない問題なんだ。

 僕たちの自由研究でもあり、未来に対する宿題でもあるんだ」

 いつもの冷静な言葉とは異なり、熱弁する吉岡に誰もが引き込まれた。

「ヨシ君がこの間、直面した事に対して考えることって言っていたけれど、そこまで考えてはいなかった。

 でもそうだよな。今回の原田に限らず、俺たちが色々な事を見て、聞いて、発信することによって、自分たちの将来に対して動かなければ行けないんだよな。

 もちろん今は大人が作った世界に住んでいるけれども、未来を作っていくのは、俺たちが大人になってからなんだよな」

 松本が吉岡の熱を受けるように強く言った。

「私たちが、作る未来」

 原田がポツリと呟いた。

「そうだね。私は大人になった時に、自分たちがどのように生きていくかなんて考えもしなかった。

 とりあえず言われた通りに勉強をして、まだ将来何になるかも考えずに行けばいいとしか思っていなかった」

「将来何になりたいかか…、やっちゃんと同じで、私も考えていなかったけれども、少しでも大人になった時に、今回の亜美ちゃんのような人を出さないような仕事につければいいかなって、ふと思ったよ」

 八神の後に続いて広田が言った。それを聞いて、女たちの泣き声が、更に大きくなった。

「多分、このような経験を経て、大人になったら何をしたいかが見えてくるのかもしれない。

僕たちの年齢でそれに気づけることは、早いことだと思う。大学生でも、何をしたらいいのかわからない人が多いみたいだけれども、少なからず身近な事で考えられることはいっぱいあるのだと思う。

 僕たちは宿題を一つずつクリアすることによって、自分たちの将来を、未来を作っていくことができるんだと思う」

「じゃあ、私にも将来はあるんだよね」

 原田は学校に行けずに悲観するしかなかった事を思い出すように言った。

「もちろん、亜美ちゃんの未来もあるし、私の未来もある。大きくなった時に、笑顔で亜美ちゃんにもやっちゃんにも会いたいもの」

 広田が泣き顔を、無理やり笑顔に変えて言った。八神もその言葉に頷く。

「そうだね。みんなで、笑顔で会いたいよね。

その時に、私は医者になっていたいな。私と同じ苦しみを味わう人を少しでも減らせるようにしたい」

「亜美ちゃんの成績ならなれるよ、きっと」

 八神も赤くなった目のままで笑顔を作って言った。

「決して原田をどうこう思って自由研究のテーマを変えた訳ではないんだ。

ただ夏休みの自由研究に、俺は今回はじめて真剣に取り組みたいと思った。それにはこのテーマじゃなきゃ駄目だと思ったんだ」

 松本は強く決意の籠った言葉を出し、原田を見つめた。

「じゃあ、最後までしっかり研究をしようね。

私は二学期から引っ越しをしてしまうけれども、研究の成果は聞かせてもらうからね」

「もちろん、ちゃんと届けるよ」

「何なら引っ越した先に遊びにいくからね」

 女二人が原田に近づき、手を握りあった。

 その時、原田は咳をし始めた。何かしらの化学物質に反応してしまったようであった。

 母親が原田に近づいた。大丈夫という顔を母親へと見せる原田を、みんなが見守った。

「みんなごめんね。でも自分に起きていることだから、少しは自由研究の力になれるのかな」

「もちろん原田の協力が必要だよ」

 原田の問いに、九班みんなが答えた。


「今日はみんなありがとう」

 原田の部屋から居間へと移ったみんなに、母親は礼を言った。先ほどまでのみんなの気持ちが嬉しかったからだ。

「それにしても引っ越してしまうのですね」

 広田が寂しそうな表情を見せて尋ねた。

「そう、亜美の体調を考えるとこのまま学校に行けない状態よりも、学校に行ける状況を作ってあげたかったの」

「という事は、引っ越しをするところでは学校に通えるのですね」

「化学物質のあまり溢れていない地域に引っ越しをするから、日常生活はできるようになると思うの。

 そこで改善ができれば将来こっちに戻ってくることも可能になると思うわ」

 母親と女たちのやりとりを、吉岡と松本は黙って聞いていた。

 その原田の自宅での帰り道、松本と吉岡は二人で歩いていた。

「将来に対する宿題か、良くあんな言葉がでてくるもんだね」

 松本は吉岡に感心していた。自分は兎に角、原田の病気について考えられれば、としか思っていなかった自由研究の先に、そんな吉岡の思いが秘められているとは思いもよらなかった。

「僕たちは、常に考えていかなければならないんだ。自分たちがどのようにして生きていくかという事に繋がる。

 自分がより良く生きるために、人生を楽しく過ごすために考えるという事は、必要な物だと思うんだ」

「俺にはそんなに大それた考えはなかったな。将来なんて特に考えていないし、黙っていてもくるものだと思っているから余計なんだろうけれども」

「僕たちの未来は、僕たち自身で切り開かなければならないんだ。誰かが決めたレールに乗っていたのでは、その中でしかいきつかない」

「そんな事を考えられるなんて、やっぱりヨシ君は凄いよ」

 松本に心底感心をされて、嫌な気分ではなかったが、吉岡はそこでは満足できなかったのかと思った。

「凄いとかじゃないよ。今回の自由研究のテーマじゃないけれども、自分たちの身の回りで起きていることに対して、どう動くかが問題なだけだよ」

「だからそんな風に考えられるヨシ君が凄いんだよ」

 吉岡はそんな言葉をかけられて、脚を止めた。そして松本を正面から見た。

「前にテレビを見ていて思ったんだ。誰かが勝手に決めて、それに従っているほうが楽だとは思うけれども、それだと自らの状況は変えることはできないんだと……。

そう思ったからこそ、考え方を変えたんだ」

 いきなりの吉岡の強い言葉に松本は少し驚いた。いつも冷静に状況を判断して、なるべく自分の中で咀嚼をしてから言葉を出すような感じではない。今は感情的に自らの意見を思った通りに述べているように見えた。そして吉岡も小学生なのだとも……。

「…」

 吉岡は言葉をなくし、あっけに取られている松本を見て、我を取り返したように、一度冷静になろうとした。

「すまない、単純に僕がこういう事を考えているという事を褒めてくれたんだよな」 

 吉岡は松本を見ずに、自らの手を握り締めて、下を向いて言った。そして拳を解いた。

「ああ、俺の伝え方が悪かったのかもしれない。すまない」

 普段、語気を強めない吉岡の言葉に、思わず松本は謝った。悪いとかそんな事ではない、ただ気圧されただけであった。吉岡の冷静ではない姿を見ることはあまりなかったから、余計にその思いは強いのだと思えた。

「いや、今回悪いのは僕のほうだ。

 ただ何となく決められたことや、人が勝手に考えていることに乗りたくなかっただけなんだ」

「何かきっかけがあったの」

 松本は自分を責めているような吉岡の、心の奥にある声を聞ければと、あまり考えない中で思っていた。

 吉岡は、一度頭の中で物事を整理した上で、言葉を選ぼうとしていた。それほど長くない時間が、松本には非常に長く感じられた。

「きっかけか…」

 吉岡は一言だけ呟くと、松本を見ることもなく歩きはじめた。松本は吉岡の背中を見た。暑さのせいか、Tシャツの背中の色が、汗で変わっていた。その後ろ姿を追うようにして松本は歩きはじめた。

「キヨ、ちょっと時間あるかい」

 吉岡は振り返りもせずに言った。そんな吉岡の背中がいつもよりも広く感じられた。

「ああ」

 松本はそう答えるしかなかった。

 しばらく沈黙のまま、吉岡は歩き、自らの自宅へと松本を招いた。

「さっきはすまない」

 吉岡は母親のいない自宅の冷蔵庫から麦茶を出して、床に座る松本へと出した。

「とんでもない。それにしても何かあったのか」

 松本は先ほどの気圧された事を忘れているように言った。しかしながら、いつもの軽口というような感じではない。吉岡にも何かがあるのだと感じていたからだ。

「元々の性格は変わらないだろうが、僕が考え方を変えたのは去年だったかな」

 吉岡は足を崩して座り、静かに話しはじめた。

「前に僕が住んでいた家が、ここじゃなかったのはキヨも知っているよね」

「ああ、確か社宅だったよね」

 思い出したかのように松本が言う。

「そう、父さんが亡くなるまでは社宅に居たんだ。でも父さんが亡くなってから、うちは社宅をでなきゃいけなくなって、ここに引っ越してきたんだ。学区が変わらなかったから、同じ学校へと行けたけれどもね」

 吉岡は麦茶を飲んでから言葉を続けた。

「そこに待っていたのは、貧困だったんだ。

お父さんの生命保険は、何だかんだと言いながら、小額しか出ないようになっていて、お母さんのパートで凌ぐしかなかった。

 それでも僕はいいと思っていたんだ。

 けれども、ある時、将来についての考えを変えなければならない事に気が付いたんだ」

 松本は、話し口調こそいつもの冷静な吉岡と変わらないように思えたが、なぜか引き込まれるような調子に聞き入ってしまった。緊張からか口に溜まった唾を松本は飲み込んだ。

「親の貧困が、連鎖して、子供が貧困に陥るという話しだった。

 多分どこかの政治家が政治利用しようとして言った言葉だと思う。何だかそれを聞いて腹立たしくなったんだ」

「ヨシ君でもそんな風に思うことがあるんだ」

 松本はいつになく重たい口調で話す吉岡の気持ちを察するように答えた。

「ああ、貧困が貧困を連鎖するなんて、ふざけた理屈だと思ったよ。

 貧困が連鎖するんじゃなくて、莫迦の連鎖でしかないと思う。子供がしっかりと考えて抜け出そうとしたら、抜け出せないわけじゃない。

 成績優秀者ならば、学費が免除されるような学校もある。僕は、中学校は公立に行くつもりだけれども、そこでもトップクラスの成績を取ろうと考えている。

 その上で、大手の進学塾などに名前を貸すなどができれば、場合によっては支度金などももらえる。

その上、高校も推薦で行ければと思っている。その先だって、成績優秀であれば、返済しなくても良い奨学金だって得られる場合がある。

 莫迦の連鎖から抜け出せないのは、自分が努力をしないからだって思ったんだ。

 それを証明するわけではないけれども、日本の創業者は貧困から抜け出して創業した人もかなりいるしね」

 一気に話をすると、吉岡は麦茶を一気に流し込んだ。松本も習うようにして麦茶を飲み干した。

「考えることが当たり前と、勝手に僕の中で判断していたんだ。だから当たり前の事を褒められて、それに対して冷静じゃいられなくなったんだ。ごめん」

 吉岡は頭を下げた。だが松本はそんな事を考えもしていなかった。

「そっか、俺からしたら将来のことや色々と考えることは、凄いと思うけれども、ヨシ君の中では当たり前か、確かに当たり前にできることを褒められても嬉しくはないよな」

 自分に置き換えると、少しだけ松本は吉岡の気持ちが理解できた。

「何だか胸の内を話したら、気が楽になったよ。ありがとう」

 吉岡は今度や謝罪ではなく、素直な気持ちで頭を下げた。松本は逆に恐縮した。凄いと思える人は、謙虚なんだ。それも同時に学んだ気がした。

「そんな事ないよ。ヨシ君の考えがわかっただけでも良かったよ。そうじゃなければ、いつかまた同じ事を繰り返していただろうからね。でも本当にヨシ君は同じ歳なのかよ」

「そうだよ、キヨと同じ、僕も小学六年だからね」

 二人は顔を見合わせて大きな声で笑った。何だか秘密の基地を作ったような、誰にも言えない本音を言えたことが、お互いの絆を強くしたような気がしていた。

「ま、原田も納得した訳だし、もう少し自由研究を頑張ろう」

「そうだな、今年は俺も宿題がはかどっているから、楽しい夏休みにできそうだし」

 二人は顔を見合わせて頬を緩めた。。


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