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人を好きになる理由(改良版)

※この作品はアンリ様の企画で一度書いたものでその時の作品に色々と設定を付け足して改稿してみました。


 人を好きになるって……どういう気持ちなのだろうか……。


 苦しくて……苦しくて……切なくて……。


 自分ではどうしようもないほど息苦しくて……。


 自分の力では立っていられないほどの重力を感じるという。


 そんな苦しくて辛い思いをしてまでなぜ人を好きにならなければならないのだろうか?

 私はそれが不思議でならなかった


 どうやら、私は『恋』というものを知らないらしい……



 私の名前は『夢嶋華恋ゆめしまかれん』……


 夢嶋財閥の令嬢としてこの世に生を受けた。そして、心優しい父と母のもとで最大限の支援を受けながら、何不自由なく育てられてきた。

 見た目はもちろんのこと、体力も知力も他のものを圧倒し、常に一番と呼ばれる地位に座してきた。


 そんな私に唐突に訪れた不可解な事象……それは『告白』……。


 私は中学2年生の時にクラスメイトである『田之上晋治たのうえしんじ』から告白された。


「1年生の時からずっと好きでしたっ!!!付き合ってくださいっ」

 彼はトマトのように顔を真っ赤に染め上げながらそう告げてきた。晋治はクラスでは真面目で何にでも一生懸命な男である。


 そんな彼が不器用ながらも自らの思いを他者に打ち明けてくるのは相当に勇気がいることであろう。だが……私には彼の熱い思いがよくわからなかった。


 それは私が今の現状に何不自由なく暮らしてきたため、今さら他者の助けなど必要なかったからである。


 そんなことを考えていると晋治は段々と顔色を暗くさせていった。どうやら私が何も返事をせず、沈黙していることに不安を感じているようだった。


 私は彼の思いに答えられない……

「……何で?何でそんなに私のことを好きになったの?」

 とりあえず、私は彼に私の何をそんなに好きになったのかについて訊ねてみた。それは単なる興味心であり、彼を好きになろうと思ったからではなかった。


「僕は……僕は君のその可愛らしい顔が好きなんだっ」

 晋治は渾身の思いで私への気持ちを叫ぶと熱い眼差しを向けながら私の瞳を一心に見つめてきた。


 私は疑問に思った。


 彼は私の整った顔が好きなのだと……もし、私がゴリラのような厳つい顔をしていたならば、彼は私のことを好きにはならなかったのだろう


「……ごめんなさい」

 私は大きく頭を下げると晋治の告白を断った。


 晋治は涙ぐみながらその場を立ち去っていった。


 時間が経てば人は嫌でも醜くなる生き物だ

 今の美しさを保ち続けることなど到底不可能なことだった。


 そんな理由では『恋』という苦しい思いをする気にはなれなかった。


 それから別の日、私は再び別の男子から告白された。


 告白してきた男子は『池島孝騎いけじまこうき』という見た目が恰好の良い男子であった。所謂、「イケメン」と言うやつだ。


 そんな彼に前回と同様に私を好きになった理由について訊ねてみた。


「君の性格が好きだから……」

 孝騎は照れ臭そうに頬を朱色に染めると私から視線を逸らしながらそう呟いた。


 私は前回と同様に疑問を感じた。


 彼は私のこの面倒臭い性格を好きなのだと……もし、私が我が儘で傲慢な性格だったならば、彼は私のことを好きにはならなかったのだろう


「……ごめんなさい」

 私は大きく頭を下げると孝騎の告白を断った。


 孝騎は引き攣った苦笑いを浮かべると肩を落としながらその場を後にした。


 人の性格は必ずしも不変なものとは限らない

 性格は人との出会いや歩んだ環境でいくらでも変わってしまう。


 彼が今の私の性格が好きだというのであれば、私は彼のために一生この面倒臭い性格を維持し続けなければならない。


 そんな理由では『恋』という苦しい思いをする気にはなれなかった。


 それから数日後、私は3度目の告白を受ける。どうやら、私は人から告白を受ける要素をたくさん持っているようだった。


 今度の相手は『海塚熊雄うみづかくまお』というとても熱苦しい男であった。


 熊雄は包み隠さない性格で可愛い女には手当たり次第、声を掛けてくる最低男である。そんな彼にも同様の質問をしてみた。


「お前のその豊満な身体が好きだっ!だから……一発やらせてくれっ!!!」

 熊雄は微塵も煩悩を包み隠さず本音を駄々漏れで告白してきた。そして、ウネウネと気持ち悪く手を動かしながら恥ずかし気もなく私の大きな胸に迫ってきた。


「……断るっ」

 私は迫りくる熊雄を一言で切り捨てると力任せに彼の頬っぺたを引っ叩いた。そして、彼が怯んだ好きに右手を掴むとそのまま後方へと寝転ばせた。


 私は護身術のために合気道を習っていたため、熊雄を投げ飛ばすことなどわけはなかった。彼は呆然としながら空を仰いでいた。


 全くふざけた告白である

 ここまでくると告白というよりは脅迫に近かった。


 私のこの完璧なプロポーションは永遠ではない

 老いれば何時かは筋肉が垂れ下がり、最後にはただの脂肪の塊になるというのに……そんなものが好きだなんて本当にどうしようもない好き者野郎であった。


 そんな奴のために『恋』という苦しい思いをするなんて死んでもありえなかった。


 その後も私への告白は続いた。


「勉強ができるから」

「金持ちだから」

「目立つ存在だから」

「優しくされたから」


 そんな言葉を並び立てながら男達は私に言い寄ってきたが、どれもこれも私を納得させるだけの理由にはならなかった。


 それらは全て私が生まれ持ったものであり、私が相手を好きになる理由にはなりえなかったからだ。


 私は何時しか人に恋することに辟易とするようになっていった。


 私が求めている答えを誰も教えてはくれない


 こんな面倒臭い私が恋をすることなど、この先一生ないのかもしれない


 そう思い始めた矢先のこと、性懲りもなく私のことを好きだという男子が現れた。


「これで最後にしよう……」

 私は目の前にいる男子の告白を最後にすることを密かに決めていた。そして、私に告白する最後の男子は『田中大志たなかたいし』である。


 彼は特に目立つ存在でもなくどこにでもいそうな平凡な男であった。


「……それで?あなたはどうして私のことを好きになったの?」

 私は何時ものように告白してきた理由について訊ねてみた。


 私の見た目が好きだから?

 頭が良いから?

 金持ちだから?

 優しい性格だから?


 どうせ……そんな理由でしょ?

 私が何時ものように目の前の男もどうしようもない理由を言ってくるものだと思っていたのだが……大志の返答は全く思いも寄らないものだった。


「わからない……」

 大志は全く予想外の言葉を口にした。


 わからない?

 私を好きになった理由もわからないのに告白してくるなんて……全くふざけているっ!

 私は大志の全く無責任な返答になぜか無性に腹が立ってしまっていた。


「そんな……そんないい加減な理由で私に告白してくるなんて……ふざけているの?」

 私は思わず本音を口から出してしまっていた。


「ふざけてなんかいないっ!僕は君のことが好きなんだっ!」

 大志は真剣な眼差しで私の瞳を真っ直ぐに見つめていた。


 嘘は吐いていない……

 それなら彼は何で恋を知らない私なんかのことを好きだというのだろうか?

 私は何とも不思議なことを口にする大志に興味を持ち始めていた。


『もし、彼が私を好きだという理由がわかれば私の答えを導けるかもしれない』

 何故だか、そんな気がしていた。


「あなたはどうして私に声を掛けようと思ったの?」

「それは……君を一目見た瞬間に僕の身体の中に衝撃が駆け巡ったんだ」

 どうやら彼は『一目惚れ』というものをしてしまったようだった。


「そして……気が付いたら何時も君のことが頭の中に思い浮かんで離れないんだ」

 大志は口許を緩めると恥ずかしそうに頬を朱色に染めていた。


「私を見て?……ということは私の見た目に惹かれたということ?」

「それは違う……」

 大志は首を横に振ると私の意見を否定した。


「見た目じゃない?それなら……私の性格?」

「それも違う……」

 大使は再度首を横に振った。


「それじゃ……あたしのこの身体が欲しいの?」

 私は大きな脂肪の塊を前後に揺らすと軽く腰をくねらせた。


「断じてっ、そんなことはないっ」

 大志はムッと表情を険しくさせると強く否定してきた。


 これじゃ、私が馬鹿みたいじゃない……

 私は大志の真面目な態度に何だかとても恥ずかしく思えた。


「私の頭が良いから?金持ちだから?それとも目立つ存在だから?」

 私はむきになってこれまで告白されてきた理由を並べ立てると彼の反応を見つめた。


「全て違う……そんなんじゃないんだ……」

 大志は首を横に振ると私の意見を全て否定した。


「それなら何で……」

 私は煮え切らない大志の態度に困惑していた。こんな男子は初めてだった。


「本当に……理由がわからないんだ。君のことを考えるだけで胸が締め付けられるような衝撃が身体の中を駆け巡るんだ……」

 大志は苦しそうに胸を押さえ付けると表情を歪めた。


「君のことが……好きでっ!好きでっ!仕方がないんだっ!!!」

 私は大志の言葉に衝撃を受けていた。どんな男に言い寄られても揺るがなかった私の心がゆっくりと動かされていく感じだった。


「そんな衝撃が込み上げてきて僕は自分自身を抑えられなくなっている」

「そんなに私ことが好きなの?」

「好きだっ!」

 大志は再び私に熱い眼差しを向けてきた。そんな彼に私は心の奥底から込み上げてくる何かを感じていた。


「それなら……どうして私のことがそんなに好きなのか……その気持ちを教えてくれない?」

 私はずっと抱え続けてきた思いを大志にぶつけた。


 私は何としても人を好きになる理由を知りたかった。こんな気持ちにさせてくれる彼にならば、その答えを導いてくれる気がしていた。


「そんなに大事なこと?人を好きになる理由なんて?」

 大使は反対にあたしに質問してきた。


「それは……」

 私は大志の質問に答えられなかった。なぜならば私もその答えがわからなかったからだ。


「人を好きになる理由なんて人それぞれだし、そんな曖昧なものに拘る必要はないんじゃないかな?」

 大志は真剣な表情で戸惑う私の顔を見つめていた。


「確かに……」

 私は大志の言葉に納得させられてしまっていた。


 人を好きになる切掛けなんて所詮は単なる通過点にすぎない。


 大切なのはそこからの歩み寄りなのだ。


 私は後ろばかりを気にして先を見ようとしていなかった。その事に気付かされると人を好きになる理由に捕らわれていた自分がとても馬鹿馬鹿しく思えた。


「どうして……あなたはそんなに私のことを好きでいられるの?」

 私は好きになった理由でなく大志の気持ちを確認した。


「それは……僕が君を好きだという気持ちにこれ以上嘘を吐きたくなかったからだっ」

 大志は臆面もなく自らの気持ちを曝け出してきた。そして、私はその言葉に心を射抜かれた。


 あぁ……これが人を好きになるって気持ちなんだ……

 私は何とも表現し難い高揚感に包まれていた。


 完全に私の敗北だったが、嫌な気持ちには全くならなかった。それどころか、どこか清々しい気持ちだった。


「あなたのことが好きです……付き合ってください」

 私は初めての勇気を振り絞ると目の前の彼に告白した。


「もちろんっ!喜んでっ!」

 大志は2つ返事で私の思いに応えてくれた。


※前回よりもつまらなく感じてしまったならばすみません。


改稿前の作品は非公開作品の中に残されているのでよろしければそちらもご覧ください。


この作品を再び読んでくれた方、もしくは新たに読んでくれた方、ありごとうございました。


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