真冬の七夕伝説(「冬のあしあと」企画 参加作品)
ああ……彦星様
あなたは今どうしていらっしゃるのでしょうか?
わたくしは星屑の糸を紡ぎなら今日もあなたのことを考えています。
あの夏の初めに会って以来、あなたのことをずっと思い続けてきました。
年に一度しか会えぬあなたの笑顔を思い浮かべながら……
ただひたすらに機を織り続けています。
何やら下界の方では人間達が光り輝く夜の明かりの下、異国の神の生誕を祈りながら楽しげにお互いの愛を囁き合っています。
それなのに……
わたくしときたらあなたのお傍にはおられず、1人寂しく機を織るだけ……
もしも、天の川がこの寒さで凍り付いたならば、薄氷を渡りて会いにいけるというのに……
ああ、なんとも歯痒き天の川……
ですが……この川は天地がひっくり返ったとしても決して凍ることはないでしょう。
ああ、なんとも悲しき天の川……
この川に橋が架かるのは夏の一時しか叶わないのです。
ああ、なんとも寂しき天の川……
2人を隔てるこの川はなんとも距離が遠いことでしょう。
ならば、せめてわたくしのこの思いだけでもあなたに届けと願いを込めて悲しみの涙を溢します。
その涙は白い塊となりて地上に降り注ぎ、下界の人間達のもとへと届きます。
その涙を見て人間達はなぜか幸せそうな笑みを浮かべながら、お互いの愛をより一層深めていきます。
どうやら、わたくしの流した涙は人間達の心に足跡を刻みながら多くの幸せを紡いでいるようです。
そんな人間達の幸福そうな笑顔を見ているとわたくしの冷えた心も何だか温かくなっていきます。
ああ、彦星様
あなたもこの幸せそうな光景をどこかで見ていらっしゃるのでしょうか?
あなたに会いたい。
会いたくて、会いたくて、仕方がない。
ですが……
今は我慢して機を織ることに集中します。
あなたに会える次の七夕を楽しみにしながら……
人間達の幸せそうな笑顔を噛み締めながら……
彼らに託した笑顔の足跡があなたにも伝わると良いなと思いを込めながら……
今日もわたくしは機を織り続けるのです。
※この作品は真冬の織姫の気持ちを妄想して書いてみました。
人々がクリスマスに浮かれている光景を見て彼女は一体何を思うのか?
そんなことを想像して織姫が彦星に会いたいという気持ちを我慢しながら前向きに頑張っている姿を書き上げてみました。
この物語を読んでくれた方、ありがとうございました。




