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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十五章

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734話 口撃してくる人たち

 余所者が宮を訪ねた際には、行動範囲を指定されるものだ。雨妹ユイメイが掃除係として片付けで入った際にも通る通路を限定されていたし、野猫イェマオに会いに行くのだってちゃんと許可を得てのことである。この許可を得るというのも、筆頭女官の呉の許可さえあればいいというわけではない。その場所ごとに管轄があるので、現場の女官なり宮女なりにその都度窺うのが揉めないコツだ。

 それで言うならば、皇后への見舞いに来た者たちがこのような場所へ通されるには、雨妹のように理由が必要だろうに。しかしあの三人は知り合いを探しているようにも、なにか用事があるようにも見えない。


 ――まあ、皇后宮の粗探しをしているのかな?


 皇后と敵対したいらしい叶賢妃宮の者がやることといえば、それ以外にないだろう。そんな三人について、ミンが呆れるように呟く。


「見舞いというのならば、ひっそりと騒がせないように気を付けるものでしょうに。なんと品のない見舞いでしょうか」

「人様の宮で、かなり調子に乗っていますねぇ」


これに雨妹もそう述べながらも、あの三人に似た雰囲気でキャッキャしていた人たちをかつて見たことがあるのを思い出す。それはマーがいた頃の皇后宮の人たちだ。後宮の回廊で出くわした彼女たちがイェン淑妃宮の者たちに自ら好んで絡みに行った光景は、雨妹の記憶にも新しいものである。この両者は似た者同士にも思えるのだけれど、皇后宮的にはあの態度はよろしくないらしい。やはり上位の宮だからと無駄に偉ぶるのは品がないのだろう。


 ――秀玲シォウリンさんは太子宮の人なのに、偉そうにしないもんね。


 ということは、あの時の人たちは教育足らずだったわけで、皇后宮運営としては戦力外であった説がやはり濃厚である。人員の大量処分が出た後だったので、本来外に出せない水準のまま出世してしまったのか。もしくは皇后宮内でも皇太后という重石が外れてしまい、畏怖による統制が取れていなかったのか。だがそれで己を律することができないのは、所詮それだけの器だったとも言えるし、迂闊であるが故に利用しやすく、馬が好んで動かしていたということだ。

 それはそうとして、いつまであの三人を放置しておくかという問題についてだが。誰か人を呼ぶべきではないかと、雨妹が考えた時。


「……来ましたね」


敏の呟きに一瞬遅れて、女官が一人蹴立てるような急ぎ足で三人のいる方向へ近付いて来た。


 ――敏さんが呼んだのかな?


 敏は雨妹たちの所に現れる前に、女官を呼ぶ段取りをしてきたのだろう。あの三人を叱責するにはある程度の身分が必要で、自身の身分では不足であると考えたか。

 その女官の姿に三人も気付いたのだろう、こそこそと言葉を交わしている様子が見える。


「このような場に勝手に入り込み、なにをしているのですか!?」


そして三人の元へやって来た女官は息を整えてから、厳しい顔で追及する。


「あら、ごめんなさいね。似たような建物ばかりで迷ってしまいまして」

「道を尋ねようにも、わたくしたちと話せるような者がいませんものね」

「仕方ないわ、宮は主を表すものですから」


しかしこんな風に、三人はあくまで余裕の態度を崩さない。

 実はこの辺りには、雨妹たち以外に誰もいないわけではない。野猫が通っていることでもわかるように、ここは下級宮女が通る区域であり、今も様々な用事で通り過ぎる宮女たちはいる。つまり、そこかしこで働くそのような宮女たちは、彼女たちにとって会話相手になり得る存在ではないと言いたいのか。なんとも傲慢な発言であるのに加えて、上位の人員が少ない人手不足をあからさまに馬鹿にしている形である。


「……!」


そして三人の言葉に怒らないはずがないあの女官は、一瞬ぐっと肩に力を込めた様子であったが、深く息を吐いてから気を取り直そうとしている。皮肉られた宮女たちはチラチラと三人を窺いながらも、「絡まれてはたまらない」とばかりに速足で過ぎていく。


 ――皇后宮側は悔しいだろうな。


 人員の質はともかく、量さえ確保できれば、少なくとも建物を閉鎖しているのを笑われることは避けられるのに、それが出来ない。しかもこの先、人員が確保できる予定も立たないのが現状なのだから。以前であればたとえ下級宮女であっても、皇后宮側こそがあの三人を馬鹿にして笑う側であっただろうに。それこそ、敏が直に追い返しに行ってもなんの問題もなかったはずだ。

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