第六章、休日2
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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ご満悦の直子さんだったが、強い要望でデパートに行きたいとの願いで、
街で唯一残っている、デパートに向かう為に車を走らせた。
街に到着するなり、43年前とは大幅に街の様子は、様変わりしたが、
まさに鼻が利く直子は、嗅ぎ当てたのだった。
すると閉店してしまった、デパートのシャッターを叩いた直子さん。
直子、「ちょっと開けてよ、何時だと思ってるのよ#!。
もう一時半よ!、日曜日よぉもぉ~、どうなっているのよぉ#!」。
現代組はその行動が、切なくて堪らなかった。
街のシンボルマークで、昔は市民のステータスだったからだ。
良子、「だから、潰れてしまったって言ったでしょ!」。
直子、「私のデパートよ!、勝手に潰さないでよ#!」と、激怒した。
更に切なさが増す、現代組だった。
春実、「あ~お姉さん、ここでなくてはダメかいな?」。
直子、「ダメよ#!、私のデパートなんだから#!」。
またシャッターを叩き続けた。
春菜、「物欲もここまで来ると、素敵に見えて来た」。
良子、「昔から物凄い執着心なのよ、このデパートに対して..」。
春実は仕方なく、無理やりシャッターから直子の手を持って、引き離した。
直子、「何するのよぉ#!」。
春実、「お姉さん、そのくらいにするでござる!。
もう三分叩いていると、お上に通報されるでのぉ!」。
直子、「そうしたら、ここのシャッター開ける様に、頼んでやる#!」。
春実はそのまま、直子の手を持って、「まあ、まあ、まあ..」と、言いながら、
駅近くの、今でも営業しているデパートに、連れて行ったのであった。
四人は店内に入ると、直子が、「これよ!これで無ければ、ならないのよ#!」。
現代組は同時に、「何が?」と、答えると。
直子、「デパートの1階は必ず、化粧品の香りがしなければ、いけないのよ!」。
現代組はやはり同時に、「確かに!」と、答えた。
するとあちらこちらと、
1階のフロアーを、歩き回り一言、「地味ねぇ~」と、溜息を付いた。
そして一人でエスカレーターに乗って、上がって行った直子だった。
現代組は更に同時に、「ヤレヤレ..」と、溜息を付いたのであった。
なぜ直子は、化粧品を見て地味と答えたか。
実は昔の色んな物の配色は、赤、黒、白と、はっきりした配色で、
今の様なパステル調の配色は、無かったのであった。
薄いピンクや、ハーフで淡い配色は無く、
直子の様な性格がアバウトな人の価値観には、合わなかった様なのだ。
直子の後ろを付いて行く三人であった。
するとまた嗅ぎ出した。
春実、「今度の臭いの素は、何であるかな?」。
良子、「服よ!きっと..」。
春菜、「ブー!ハズレ..、お腹空いたのよ!」。
そう言ってエスカレーターの、階数が書かれたプレートを見ると、
食堂のフロアーだった。
春実と良子は小さくこけた。
フロアーに降り立つと、わき目も振らず、臭いの素へと飛んで行った。
それを見た春実は、「考える前に、行動するね~。
母ぎみアレは使い様に寄っては、相当物になるでござるぞ!」。
良子、「あんた#!、その変な江戸言葉、いい加減止めなさいよ!」。
春菜、「もう身に付いてしまって、今更止められないんだって」。
春実、「ワッハ、ハ、ハ、ハ、ハ!」。
直子の行った先は、ありふれた喫茶店であった。
ありふれてはいたが、景色は良くてラウンジ感覚であった。
早速窓際の席に着いた直子、後の三人も同じ席に着いた。
春菜、「な..なんか、感じるんだけど、この雰囲気..」。
春実、「何をじゃ?」。
良子、「そうよこの雰囲気は、卸本町に在った、あの角の洋食屋よ!」。
春実、「するとぉ」。
そしてウェートレスが、水を運んで来た。
水をテーブルに置くと直子は、メニューも見ずに、「オムライスね!」と、答えると、
後の三人も続いて、「同じ物を!」と、答えた。
ウェートレスは、「オムライスを四つで!」と、答えると、四人は頷いた。
春実、「キターでござるな春菜!、春菜を病み付きにさせた、
シンプルオムライスの昭和44年組の元祖!」。
直子、「これが一番いいのよ!、あんな何とかテレーヌだとか、
フォアクロだかフォアクリだが、ビーフスノウガリフだの寄りも、
オムライスが一番、洋食の帝王よ!」。
春実、「テレーヌとフォアグロは、解ったでござるが、
ビーフスノウガリフは、わらわは、まだ口にした事は無いぞ!、美味そうじゃのぉ~、
皿の上にカキ氷を乗せて、その上にビーフを乗せ、
更にその上に、ガーリックを乗せた料理かの?」。
完全に惚けていたが。
春菜、「凄い想像力ね!お姉ちゃん!」。
良子、「春実その創作料理、今度作ってみたくなったわよ!」。
春実、「その上に塗すソースは、ホワイトで頼むぞよ!」。
春菜、「ミルクを使った甘いソース、夏のメニューにぴったりね!」。
直子、「何だかクドそうね..」。
そんな話をしていると、オムライスがやって来た。
定番のシンプルオムライスであった。
春菜、「わお~、私好みぃ」と、指を組んで耳元に持って行った。
春実は、オムライスの皿の縁を見て、春菜を伺った。
それを以心伝心した春菜も、春実を伺った。
すでにこの二人は、西部劇の銃を先に抜けと、言わんばかりであった。
それを見た良子、「あんた達、そんな女々しい駆け引き、止めなさいよ!」。
そして同時にパセリを摘んで、同時に、「ハーブ!」と、答えたのであった。
すると直子が、「パセリでしょ!、知らないの?」と、言われてしまった。
春実と春菜は、「しまったぁ~」と、悔しがったのであった。
何の事だかさっぱり、解らない直子は、「それ何のお呪い?」と、答えながら、
スプーンでオムライスを、頬張ったのであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。