簡単な手段
「王国ではどうしていた」
「農家が回収に来ていました。そういえば農家は回収に来ないのですか?」
「聞いたことがないな。じゃあ行ってみるか?」
「はい」
私はシェーヴルに連れられ、
農家に向かった。
「ピコドンさん」
「おぉあんたはシェーヴルさん。どうした珍しい」
「いえ。今日は質問があって。ほらヤジー」
「はじめまして。行政官のヤジーです」
「どうも農家やってます。ピコドンです」
「あのお伺いしたいのですが?」
「どうぞ」
「肥料は何を使ってますか?」
「家畜の糞ですね」
「家畜の糞か……。人のし尿は使いませんか?」
「あぁ王国のやり方ね。あれ悪くはないのですが、寄生虫の心配があるし、管理が結構難しいのですよ。
それに運搬の経費がかさむ。
家畜であれば、すぐに手に入りますからね」
「あぁ、そういう事ですか」
「し尿でお困りで?」
「はい」
「どこかの部族では、し尿を乾燥させて薪代わりにすると聞いたことがあります」
「薪代わりか……、それは面白いですね。どうです。シェーヴルさん」
「そうだな。
乾燥しているし尿が薪代わりに使えると知れば、街の乾いたし尿が回収されるかもしれんな」
「そうですよね。雨が降る前に回収できれば、雨上がりの臭いはマシになる」
農家に礼を言い、
団長の元に向かう。
「団長!帰りました」
「おぉお帰り。収穫はあったか?」
「どこかの部族では、し尿を乾燥させて薪代わりにするそうです」
「それで?」
「これを街でしようかと」
「そうか。じゃあまずお前のところでやってみろ」
「実験台という事ですか?」
「そりゃそうだろ」
「はい。わかりました」
私は街に出る。
たしかにあちこちに乾いた糞は落ちている。
しかし、
拾う勇気がない。
少年達は糞を転がして遊んでいる。
人は使っていい。
団長の言葉がよぎった。
「ねぇ君たち」
少年達に声をかける。
「なにお兄ちゃん」
「それなにして遊んでるの?」
「糞転がす遊び」
「嫌じゃないの?」
「あんなのあちこちに落ちてるだろ」
「そっか。あの糞って燃料になるんだって」
「燃料って何?」
「薪代わりだよ」
「嘘。あれ燃えるの?」
「お兄ちゃんも、さっき聞いたところなんだけど」
「嘘。見てみたい」
「じゃあお兄ちゃんの所でやってみる?」
「うんやる」
「じゃあいくつか取ってきてくれる?」
「うん。ちょっと待って」
少年達は、カゴいっぱいに糞を集めた。
それが自分の部屋に入ると考えると少し憂鬱だった。
部屋に入り、暖炉に糞を入れてもらう。
私は火をつける。
糞は静かに燃え上がる。
臭いはどうだろう。
慎重に臭いをかぐ。
街中がそもそも臭いので、
臭さは気にならない。
「臭いか?」
私は尋ねた。
「臭いはしないかな」
少年達は言った。
「どう?」
「うん。すごく面白い」
「そうか。面白いか」
私はその言葉で救われた。
先ほどまで、
子供を口先一つで利用する大人。
そんなレッテルを自ら張り付けていた。
しかし、
燃えるのはわかった。
臭いも少なそうだ。
でも、
誰が好んで利用する?
「これ君たちの家で使える感じかな?」
「うん……、どうだろ?母ちゃんは怒るかな」
「父ちゃんも嫌がりそう」
「うちの父ちゃんなら別に普通だと思う」
「君のお父さんは何をしている人?」
「馬小屋で仕事をしてる」
「紹介してくれないか?」
「良いけど。お兄ちゃんは何をしてる人」
「行政官」
「行政官?」
「あっこのお兄ちゃん知ってる。痒いのがなくなる草の人だ」
「あっ本当だ。わかった。父ちゃんを紹介するよ」
「ありがとう。じゃあ行こうか」
私達は少年の父親の元に向かった。
「ねぇ。この人が父ちゃんを紹介してくれって」
「誰だ?」
「あの虫がいなくなる草の人」
「あぁ変わり者の行政官か。わかった会いに行こう」
「それで要件って?何か面白い事か」
少年の父親は目を細めた。
何から切り出そう。
「あの糞は燃えるんです。燃料として使えるんです」
私は言った。
何を言っている。それで通じるはずはない。
少年の父親はポカンとしている。
「何を言っている。そんなのは普通のことだ」
「もしかして使ってるのですか?」
「いや使ってはない。糞はそこらに捨ててる」
「そうですよね。それを燃料として使いませんか?」
「燃料として……、まぁ別に構わないが、理由を聞かせてもらえるか?」
「はい。この街はし尿で溢れています。王都では農家が汲み取りに来ており、臭いがマシです」
「そういえば、慣れて忘れていたが、この街は臭いがひどかった」
「農家に尋ねたところ、色々な理由で汲み取りは困難だそうで、そこである部族では糞を燃料として使っていると聞いたのです」
「つまり君は、その糞を燃料として使うことで、臭いを減らそうって魂胆なんだな」
「そうです」
「なるほどな。やっぱ兄ちゃんは変わり者だ。わかった。家では女房がぐだぐだ言いそうだから、やめとくが、こっちでは使うようにするよ。同じ仕事仲間にも声をかけておく」
「ありがとうございます」
「何を言ってる。俺達が暮らしやすくする為に動いているんだろ。これぐらいするぜ。それに薪代の節約にもなるしな。それで、これからどうする?」
「他にも、使ってくださる方を探そうかと」
「そうか。清掃人とかなら、抵抗が少ないかもしれないな」
「わかりました。行ってみます」
私は少年の父親と少年達に礼を言い、
その場を立ち去った。
私は団長に報告しに行く。
「団長!臭いは大丈夫そうでした。あと馬小屋で働いている方が、採用してくださいました」
「早いな。馬小屋か……、なるほど抵抗は少なそうだな。それで次はどこに行く?」
「清掃人なら、抵抗が少ないかもと言われまして……」
「そうか。あいつらキレイ好きだからな。そもそも糞を毛嫌いしている。燃えると知ったら、どんどん燃やすかもしれないな。ちょっと待ってろ。おーいザーネン。ザーネンはいるか?」
「はいはい団長。何かお呼びですか?虫でも出ましたか」




