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死者の声を聞く令嬢は婚約破棄されましたが、最後の竜葬師として無口な辺境伯に望まれました  作者: 磯辺


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21/54

死者はその後を知らない

 死者の声と、生きている者の証言が食い違っている。


 その事実を前にして、私はすぐに結論を出せなかった。


 黒竜の肋骨へ触れた日の夜。


 私はレムの宿場の一室で、机いっぱいに記録を広げていた。


 右手には、まだ薄い冷えが残っている。


 耳鳴りは夕方には治まった。


 味覚も、夕食のスープに塩気を感じられる程度には戻っている。


「今日はもう休むべきです」


 向かいに座ったオスカーが言った。


「能力は使っていません」


「頭を使うのも休養に含まれます」


「記録を読むだけです」


「そう言って、何時間目ですか」


 私は壁の時計を見る。


 思っていたより針が進んでいた。


「二時間ほどです」


「三時間半です」


「……そうでしたか」


「寝なさい」


「あと一つだけ確認したら」


「駄目です」


「ですが」


「では質問します」


 オスカーが腕を組む。


「今、触れた骨へもう一度触れば、何か追加で聞ける可能性がありますね」


「あります」


「そして、その分だけ残留思念は薄くなる」


「はい」


「今日触れますか」


「触れません」


「なぜです」


「必要性がありません」


「同じです」


 私は黙った。


「記録も、必要な時に読めばいい。今夜すべて理解する必要はない」


「ですが、考えておきたいのです」


「考えるなとは言っていません」


 オスカーは少し声を落とした。


「明日のあなたにも、考える仕事を残してください」


 その言葉に。


 私は返事ができなかった。


 明日の自分。


 以前の私なら、そんなものをあまり考えなかった。


 今日できるなら、今日する。


 少しくらい体調が悪くても。


 自分が我慢すれば済むなら。


「……あと十分だけ」


「五分」


「八分」


「六分」


「七分で」


「分かりました」


 なぜ治療師と時間の値切りをしているのだろう。


 けれど、オスカーは本当に時計を私の前へ置いた。


「七分です」


「分かっています」


 私は一枚の報告書を手元へ引き寄せた。


 六年前。


 ミラとルゥが失踪した直後の記録。


 そこには、アルフォンス様がルゥを目撃した日のことが記されている。


 王暦四百十二年。


 冬至十五日前。


 黒竜ミラ、および幼竜ルゥの所在不明を確認。


 冬至十二日前。


 グレイヴ領北部、黒杉の森にて幼い黒竜を目撃。


 右前脚の白い鱗三枚により、ルゥと推定。


 後脚に破損した拘束具あり。


 接近を試みるも、激しい警戒を示し逃走。


 同行者二名。


 その下に、騎士二人の署名がある。


 一人は、すでに退役している。


 もう一人は。


「ギルベルト」


 私は名前を読む。


 ギルベルト・ハーン。


 現在の辺境竜騎士団副団長。


「その人がどうかしましたか」


「ルゥを見た騎士の一人です」


「なら、本人にも確認できますね」


「はい」


 死者の声に、もう一度触れる必要はない。


 生きている証人がいる。


 私は紙の端へ書く。


 ――ギルベルト副団長への聞き取り。


「七分です」


「まだ六分四十秒ほどでは」


「今ので七分です」


「時計をごまかしていませんか」


「医者は患者を休ませるためなら、多少の時間は曲げます」


「それは記録の改竄では?」


「寝なさい」


 私は諦めて記録を閉じた。


          ◇


 翌朝。


 アルフォンス様は、すでに詰所に来ていた。


 昨日より右手の震えが強い。


 私はそれについて尋ねなかった。


 尋ねる必要がないと思ったのではない。


 今聞けば、彼は「問題ない」と答える気がしたからだ。


 代わりに。


「昨夜は眠れましたか」


 そう尋ねた。


 アルフォンス様が少し黙る。


「三時間ほど」


「少ないです」


「君に言われたくない」


「私は七時間眠りました」


「珍しいな」


「治療師に記録を没収されました」


「そうか」


 口元が少し動いた。


「アルフォンス様」


「何だ」


「昨日の続きを整理したいと思います」


「ああ」


「まず確認します。ルゥを目撃したのは、ミラとルゥが姿を消して三日後」


「ああ」


「BK・四七二の番号が発行されたのは、その翌日」


「そうだ」


「そして昨日触れた肋骨には、BK・四七二の刻印があった」


「ああ」


「そこで聞こえたのが」


 私は記録を読む。


「『私の子を、王都から返して』」


 アルフォンス様の右手が震えた。


 机の下へ隠そうとはしなかった。


「俺には、やはり理解できない」


「何がですか」


「ミラなら」


 彼は言葉を選ぶように、一度止まる。


「ルゥが逃げたことを知らないはずがないと思っていた」


「なぜですか」


「親子だった」


「それだけで?」


 アルフォンス様の眉が寄る。


「竜は、人間より感覚が鋭い」


「離れていても、子の居場所が分かる?」


「ある程度は」


「どの程度ですか」


「……分からない」


 アルフォンス様が認める。


「ノクスとミラは、互いの位置を大まかに感じ取っていた」


「それは伴侶だから?」


「おそらく」


「ルゥとも?」


「子が幼い頃は、ミラがどこにいるか察しているように見えた」


「見えた」


「確証はない」


 私はうなずいた。


「では、分けましょう」


「何を?」


「分かっていることと、推測です」


 紙を一枚取り出す。


「分かっていること。ルゥは失踪三日後、グレイヴ領内で目撃された」


「ああ」


「ミラと思われる黒竜の骨には、ルゥが王都にいると認識しているような思いが残っていた」


「ああ」


「そこから先は、まだ推測です」


 私は筆を置いた。


「たとえば」


 考えられる可能性は、一つではない。


「ミラとルゥが途中で引き離された」


 アルフォンス様が顔を上げる。


「ミラには、ルゥが王都へ運ばれたように見えた」


「だが実際には逃げた」


「はい」


「ミラはそれを知らなかった」


「その可能性があります」


「他には?」


「ルゥが逃げたのが、ミラの死後だった」


 室内が静かになる。


 この場合。


 何も矛盾しない。


 ミラが死ぬ。


 その時点で、彼女はルゥが王都へ連れていかれると思っている。


 その後。


 生き残ったルゥが輸送途中に逃げる。


 三日後。


 グレイヴ領でアルフォンス様たちに目撃される。


「死亡時刻は分かるのか」


「骨からは分かりません」


「聖竜院の台帳は」


「日付が書き換えられています」


「使えないな」


「少なくとも、その部分をそのまま信用することはできません」


 アルフォンス様が目を閉じる。


「他の可能性もあります」


「まだある?」


「声の主がミラではない」


「ああ」


「BK・四七二が一頭の個体番号ではない」


「ああ」


「あるいは、『王都』という認識そのものが間違っていた」


「ミラが?」


「死者は、知らないことまで正しく理解できるわけではありません」


 夜会で。


 私はアルフォンス様へ説明した。


 死者は意図的な嘘をつかない。


 けれど。


 思い違いはする。


 恐怖で判断を誤ることもある。


 そして。


 昨日、もう一つ気づいた。


「死者には、その後の出来事を知る方法がありません」


 口にした瞬間。


 その当たり前のことが、妙に重く感じられた。


 アルフォンス様が私を見る。


「その後?」


「はい」


「死んだ後ということか」


「そうです」


 死者の声を聞く。


 その力のせいで、私はどこかで。


 死者が今もこちらを見ているように考えていたのかもしれない。


 けれど。


 私が聞いているのは、死者そのものではない。


 遺品に残った思いだ。


「声は、死んだ時点で止まっています」


 私はゆっくり言った。


「その人が最期に知っていたこと」


 あるいは。


「最期に、そうだと思っていたこと」


 そこから先は。


 更新されない。


「ルゥがその後に逃げても」


 私は続ける。


「ミラの声は、それを知りません」


 アルフォンス様は長く黙っていた。


「なら」


 やがて言う。


「ミラは今も、ルゥが捕まっていると思っているのか」


 私は首を横に振った。


「その言い方も、少し違うと思います」


「違う?」


「『今も思っている』のではありません」


 死者と会話できるわけではない。


 どこかに意識が残り続けて、考え続けているわけでもない。


 少なくとも、私の能力からはそう判断できない。


「残っているのは、最期の思いです」


「……止まったまま?」


「はい」


 時計の針が止まったように。


「だから」


 私は肋骨の記録へ目を落とす。


「ミラがルゥの生存を知らずに死んだのであれば」


 あの言葉は。


 現在のルゥの居場所を知らせる声ではない。


「『子を返して』は、現在の命令ではありません」


 アルフォンス様が息を止めた。


「どういう意味だ」


「死者が、今の私たちへ『王都からルゥを連れ戻せ』と指示しているわけではないということです」


「だが、そう聞こえた」


「言葉はそうです」


「なら」


「死者の言葉を、そのまま現在への命令として扱ってはいけません」


 私ははっきり言った。


「もしルゥがすでに辺境へ逃げていたなら、存在しない問題を解決しようとすることになります」


 王都を探し回る。


 誰かを疑う。


 まだ捕らわれていると決めつける。


 それは。


 ミラの声を尊重することとは違う。


「では、死者の願いを無視する?」


「いいえ」


 私は首を横に振る。


「なぜ、そう願ったのかを考えます」


 子を奪われた恐怖。


 引き離された苦しみ。


 子どもの行く末を知らないまま死んだ無念。


「願いを、そのまま実行するのではありません」


 以前、ノクスの弔いについて話した時にも考えた。 死者を黙らせることではない。 死者の言いなりになることでもない。


 死者を黙らせることではない。


 死者の言いなりになることでもない。


「今の生者が、何が起きたのかを知って」


 そして。


「その続きを、生きている者の側で引き受けるのだと思います」


「続きを」


「はい」


 ミラは知らない。

ルゥが追手を振り切り、グレイヴ領まで逃げ延びたことを。

その後も、生き続けているかもしれないことを。


「もしルゥが生きているなら」


 私は言った。


「ミラが知らなかった続きを、私たちが知ることができます」


「それをミラに伝えられるのか」


 私は答えられなかった。


 死者との会話はできない。


 こちらから語りかけた言葉が、死者へ届く保証もない。


「分かりません」


 正直に答える。


「届くとは約束できません」


「そうか」


「ですが」


 私は続ける。


「弔いは、死者に理解してもらうためだけにするものではないと思います」


「なら、誰のためだ」


「残った人のためでもあります」


 アルフォンス様。


 ルゥ。


 そして。


 ミラを記憶する者たち。


「ミラが知らずに終わった続きを、記録へ残すことはできます」


 子は逃げた。


 戻ってきた。


 生きていた。


 もし、それを確かめられれば。


「死者の最後の思いを、永遠に最後の頁にしなくてもよいのではないでしょうか」


 アルフォンス様は何も言わなかった。


          ◇


 昼過ぎ。


 ギルベルト副団長が、詰所へ到着した。


 三十五歳。


 背の高い男性だった。


 灰色がかった茶髪を短く切り、騎士団の黒い外套を身につけている。


「ギルベルト・ハーンです」


 彼は私へ形式的に一礼した。


「リーゼロッテ・アルヴァです。急にお呼び立てして申し訳ありません」


「辺境伯閣下の命令ですので」


 口調は礼儀正しい。


 けれど。


 私を見る目には、歓迎されていないことが分かる。


 死者の声を聞く女。


 竜葬師。


 その噂は、すでに辺境にも届いているのだろう。


「六年前のルゥについて確認したいのです」


 私が言うと。


 ギルベルトの表情が一瞬固まった。


「記録にある通りです」


「記録以外のことも伺いたいのです」


「何のために?」


 わずかに刺のある問いだった。


「死者の声と、生者の証言を分けるためです」


「死者?」


「昨日、黒竜の肋骨へ触れました」


 ギルベルトの視線が、私の黒い手袋へ落ちる。


「何が聞こえた」


 アルフォンス様ではなく。


 ギルベルト自身が尋ねた。


「『私の子を、王都から返して』と」


 彼の顔色が変わった。


「それだけです」


 私は続ける。


「誰が連れ去ったか。どこへ運ばれたか。いつの声か。それらは分かりません」


「その黒竜をミラだと?」


「可能性が高いと考えていますが、確定していません」


 ギルベルトは黙る。


「ですから、あなたが見たものを教えてください」


「閣下から聞いているだろう」


「あなたが見たものを聞きたいのです」


 同じ出来事でも。


 人によって見えているものは違う。


「六年前。黒杉の森で、本当にルゥを見ましたか」


 ギルベルトはアルフォンス様を見る。


 アルフォンス様は何も言わない。


 答えるよう命じもしなかった。


 しばらくして。


 ギルベルトは私を見る。


「見た」


「距離は?」


「最初は三十歩ほど」


「その後は?」


「十歩程度まで近づいた」


「右前脚の白い鱗は?」


「三枚」


「拘束具は?」


「左後脚だ」


 私は記録を見る。


「報告書には『後脚』とだけ」


「俺が書いた原報告には左と書いた」


「では、写しを作る際に省略された?」


「知らん」


 小さな違い。


 けれど。


 こうして記録は少しずつ変わる。


「拘束具の形を覚えていますか」


「黒い金属。輪の一部が割れていた」


「聖竜院の印は?」


 ギルベルトの表情が硬くなる。


「見ていない」


「なかった?」


「見ていない、と言った」


 否定ではない。


 確認できなかったという意味。


「分かりました」


 私はそのまま記録する。


「ルゥはアルフォンス様を見て逃げたと」


「ああ」


「あなたを見ても?」


「逃げた」


「人間全体を警戒していた?」


「そう見えた」


「それは推測ですね」


 ギルベルトが私を見る。


「……そうだ」


「分けて記録します」


 彼は少しだけ眉を寄せた。


「妙な女だな」


「よく言われます」


「普通なら、死者から答えを聞いたなら、それを正しいと言い張る」


「私は、死者から答えを聞いていません」


「声を聞いたのだろう」


「証言を一つ聞いただけです」


 ギルベルトが黙る。


「生きているあなたの証言も、一つです」


「俺も疑う?」


「はい」


 即答すると、アルフォンス様がわずかにこちらを見た。


「アルフォンス様の証言も疑います」


「俺もか」


「当然です」


 私は答える。


「お二人が嘘をついていると思っているわけではありません」


 六年前の記憶だ。


 間違えることもある。


 見落とすこともある。


「だから、二人の証言と記録を比較します」


 死者だけを特別扱いしない。


 生者だけを特別扱いもしない。


「一つだけ」


 ギルベルトが言った。


「記録にはないことがある」


「何でしょう」


「ルゥは逃げる直前」


 彼の声が低くなる。


「一度、北を見た」


「北?」


「ああ」


「何がありますか」


「聖竜院の北部施設があった方向だ」


 室内の空気が変わる。


「それを、当時どう考えましたか」


「追手を警戒しているのだと思った」


「今は?」


「知らん」


 ギルベルトはきっぱり答えた。


「六年前の俺がそう思ったというだけだ」


 私は筆を止めた。


 そして。


「ありがとうございます」


 そう言った。


 ギルベルトが怪訝そうな顔をする。


「何がだ」


「今の言い方です」


 当時はそう思った。


 でも、事実かは分からない。


 それこそ。


 死者の声にも必要な扱いだった。


          ◇


 ギルベルトが帰った後。


 私は新しい頁を開いた。


 上に一行書く。


 ――死者は、その後を知らない。


「確定するのか」


 アルフォンス様が尋ねる。


「能力の性質としてです」


 私は答える。


「少なくとも、私がこれまで聞いた声には、死後に起きたことを知っていると判断できるものはありません」


「死者がどこかで見ている可能性は?」


「否定も証明もできません」


「なら」


「ですが、私の力で聞こえるものについては、死亡時点で止まっているものとして扱います」


 それが一番安全だった。


「もし今後」


 私は続ける。


「死者の声と、その後の事実が食い違った場合」


 死者が嘘をついた。


 生者が嘘をついた。


 どちらか一方へ、すぐ決めつけない。


「まず、死者がその事実を知らずに亡くなった可能性を考えます」


 アルフォンス様がうなずく。


「ミラも」


「はい」


 私は昨日の記録を見る。


 ――私の子を、王都から返して。


「あれは、現在のルゥの居場所を示す言葉ではありません」


「ミラが死ぬ時に信じていたこと」


「おそらく」


「そして、願ったこと」


「はい」


 子を返して。


 その願いの中にあるものは消えない。


 けれど。


 六年前から世界まで止まったわけではない。


「なら」


 アルフォンス様が立ち上がる。


「次に確認すべきは、ルゥか」


「いえ」


 彼の足が止まる。


「違うのか」


「ルゥが今どこにいるかは重要です」


「なら」


「ですが、私がここへ来た最初の目的を忘れています」


 アルフォンス様が黙る。


「ノクスです」


 その名を口にすると。


 右手の震えが強くなった。


「俺は、忘れていない」


「ならば順番を変えません」


 ノクスを弔ってくれ。


 その依頼を受けて、私は辺境へ来た。


 ミラの骨。


 ルゥの行方。


 気になることは増えた。


 けれど、すべてを一度に追いかければ。


 また私は、自分が聞ける声すべてを背負おうとする。


「明日」


 私は言った。


「ノクスに会わせてください」


 アルフォンス様の顔が強張った。


「会う?」


「遺骸を確認します」


「触れるのか」


「まだ触れません」


 すぐに答える。


「まず、見ます」


 傷。


 欠損。


 周囲の状態。


 過去に行われた弔い。


 残された遺品。


「その後で、どの遺品へ触れる必要があるのかを決めます」


 アルフォンス様は何も言わない。


「難しいですか」


「いや」


 声が低い。


「案内する」


「ありがとうございます」


 私は記録帳を閉じた。


 昨日まで。


 私は死者の声を、過去から届く言葉だと思っていた。


 それは間違いではない。


 けれど。


 過去から届くからこそ。


 その声は、未来を知らない。


 救われたことを知らず。


 逃げられたことを知らず。


 謝罪されたことも。


 許されなかったことも。


 生き残った者が、その後どんな人生を選んだのかも知らない。


 だから。


 死者の声だけを聞いていてはいけない。


 その声が途切れた先を。


 生きている者たちから聞かなければならない。


 私は窓の外を見る。


 遠く。


 灰色の山の向こうに、竜骨の谷がある。


 さらに、その奥。


 六年間。


 眠ることのできない黒竜がいる。


「ノクスは」


 私はアルフォンス様を見る。


「何を知らずに死んだのでしょうね」


 彼は答えなかった。


 答えられるはずがない。


 だから明日。


 まずは。


 死者の声ではなく。


 死者が残した傷跡を、自分の目で見る。

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