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「魔法使い見習いと生意気な猫」  作者: れおん
第2章 『黒猫の魔導王と、美食を求める乙女たちの行進 〜淀んだ大地を七色に塗り替えろ!〜』

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第69話:朝靄の決意と、再開の道

「……んっ、……あ、朝……?」

アルマが瞼を押し上げると、視界に飛び込んできたのは、薄藍色の空と、うっすらと岩肌を包み込む朝靄でした。

昨夜、あれほど激しく燃えていた焚き火は、今は白い灰となって静かに鎮まっています。

「いたたた……。全身、岩みたいに硬くなってるわ……」

隣で体を丸めていたキャスカが、鈍い音を立てて体を伸ばしました。

その横ではアリスが寝癖を抑えながら「……あと、三秒だけ……」と寝言を返し、ジャムは無意識に杖を抱きしめ直しています。

その光景に苦笑しながら、アルマは傍らで優雅に毛繕いを始めている黒い影に目を向けました。

「おはよう、ノア。……体調はどう?」

「フン。当然、最悪だ。昨夜の供物程度では、我の深淵なる魔導回路を完全に修復するには程遠い。おい、アルマ。空腹による意識混濁で、我がうっかりこの地を焦土に変えてしまう前に、朝食という名の真理を提示せよ」

ノアは相変わらず不遜な態度で、岩の上からアルマを見下ろしました。

しかし、その金色の瞳には昨夜のような鋭い飢えはなく、どこか仲間たちの様子を観察するような落ち着きが戻っています。

アルマは再びケットル先輩の背負い袋を開き、昨夜の残りのパンと、保存の利く干し肉、そして温かいスープの素を取り出しました。

冷えた空気の中で、魔法のコンロが再び小さな火を灯します。

「ほら、みんな起きて。温かいスープができたよ」

アルマの呼びかけに、ようやく全員が這い出してきました。

湯気の上がるカップを手に取ると、凍えていた指先から熱が伝わり、固まっていた思考がゆっくりと解き放たれていきます。

「……おいしい。……。なんだか、ようやく自分の足が地面に着いてる実感が湧いてきたわ」

キャスカがスープを飲み干し、ふぅ、と長い息を吐きました。

昨日の死闘の痕跡は、彼女たちの服や、使い込まれた装備の端々に刻まれています。

けれど、誰もがその瞳に昨日までにはなかった、静かな光を宿していました。

一息ついたところで、アルマが傍らに立てかけてあったホウキを手に取ると、それまでスープを味わっていた三人の顔が同時に引きつりました。

「……ねえ、アルマ。一つ、これからの旅の『絶対条件』を言わせてもらうわね」

キャスカが真剣な表情で一歩踏み出し、アリスとジャムも、まるで事前に打ち合わせていたかのように力強く頷きました。

「……? なあに、キャスカ」

「いい? もう絶対に、何があっても、死んでも、あんたのホウキには乗らないから。次は自分の足で歩くか、さもなくば崖を這ってでも移動するわ。……いいわね?」

「そ、そうですわ! わたくしの三半規管は、もうアルマさんの『千鳥飛行』には耐えられませんもの!」

「……うん。私も……地面を歩きたい……」

三人の切実すぎる訴えに、アルマは頬を染めて視線を逸らしました。

「そ、そんなに酷かったかな……。私なりに必死に制御してたんだけど……」

「フン。小娘、自覚を持て。貴様の操縦は、もはや飛行術ではなく『空飛ぶ拷問具』だ。我という真理の重石がなければ、今頃この連中の胃袋の中身は、文字通り宇宙の真理へ到達していただろう」

ノアが追い打ちをかけるように鼻を鳴らしました。

「わかったよ……。じゃあ、今日は歩きだね」

アルマが苦笑しながらホウキを肩に担ぎました。

周囲の朝靄は少しずつ晴れ、遠くの地平線が黄金色に輝き始めています。

彼女たちの旅路は、その光に背中を押されるように、新たな一歩と共に再開されました。

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