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「魔法使い見習いと生意気な猫」  作者: れおん
第2章 『黒猫の魔導王と、美食を求める乙女たちの行進 〜淀んだ大地を七色に塗り替えろ!〜』

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第54話:卒業生の背負い袋と、職人のこだわり

「……おい、小娘。断言するが、この村の復興における最大の障害は、澱みの怪物でも食料不足でもない。……我の髭が、背後から迫る『物理的な絶望』を捉えたぞ。……これは、貴様らが我が真理の供物(チーズと燻製肉)を、あまりにも無造作に、かつ無慈悲に、その安物の袋へ詰め込もうとしていることへの、宇宙規模の抗議だ!」

オード村を出発する直前。

村人たちから贈られた、大量の感謝の品々を前に、一行は深刻な積載問題に直面していた。

「……無理よ、アルマ。……。……これ以上詰め込んだら、袋の紐が弾けて、私の背骨が先に真っ二つになるわ」

キャスカが、今にも破裂しそうな巨大な背負い袋を前に、白目を剥いて立ち尽くしていた。

「(……。……。……。……。……おのれ、無能どもめ! ――我が集めた真理の結晶を、道端に捨てていくというのか!? ――アルマ、今すぐ貴様のシャボン玉を巨大化させ、その中にすべての荷物を詰め込み、反重力で牽引しろ! ――それができないなら、我がこの場でこれらすべてを胃袋へ緊急避難(完食)させるしかないではないか!)」

「……そんなことしたら、ノアが歩けなくなるでしょ!!」

アルマが頭を抱えたその時、村の集会所の奥から、ズシン、ズシンと重い足音を立てて、一人のドワーフの女性が現れた。

「……おいおい、相変わらずだねぇ、後輩さんたち。……。……そんなボロ袋に村の宝を詰め込むなんて、王立アカデミーの面汚しだよ」

現れたのは、ドワーフの職人・ケットルだった。

小柄な体躯に似合わない巨大な金槌を腰に下げ、不敵な笑みを浮かべている。

「……あ、あの、あなたは……! ――工学学部の、ケットル先輩!?」

アルマが驚きの声を上げた。ケットルは学園の数代上の先輩であり、在学中から「理論よりも実践」と、独自の魔導工作を繰り返していた変わり種として有名だったのだ。

「……はは、覚えててくれたかい。……。……卒業してからは、こうして各地を巡って魔導具の修理や調整をしてるのさ。……。……あんたたちの魔法、遠くから見てたよ。……。……特によ、その肩に乗ってる『偉そうな黒いカボチャ』。……。……あいつが泥をぶっ叩いた時の『重みの響き』……。……。……学園の実験室じゃ、逆立ちしたって聞けない本物の音だったね」

「(――フン。……。……カボチャだと? ――ドワーフの小娘……いや、卒業生よ。……。……音で我の質量の真理を理解したという点だけは、わずかに評価してやってもよいぞ)」

「……はは、威勢がいいねぇ! ――気に入ったよ、猫の魔導王さん! ――そんなあんたたちに、卒業生からの『餞別』だ。……。……これを持っていきな、私の自信作さ」

ケットルが差し出したのは、彼女の身長よりも高い、複雑な仕掛けが施された『特製・巨大背負い袋』だった。

「……これ、ケットル先輩が卒業制作で魔導院にケチをつけられたっていう、あの『空間拡張型』の袋ですか!?」

「……ああ。……。……あいつらには理解できなかっただろうが、……あんたたちの『シャボン玉』の循環を動力源にすれば、……こいつは無限の重さを支える最強の倉庫になる。……。……さらに、横には洗浄砲も付けといた。……。……旅は清潔が第一だからね!」

ケットルの手助けにより、山積みのチーズや肉は、魔法のようにスッキリと袋の中へと収まっていった。

アルマのシャボン玉を袋の動力核として接続した瞬間、あれほど重かった荷物が、まるで羽根のように軽くなったのである。

「(……。……。……。……。……。……。……ほう。……。……。……。……。……卒業生よ。……。……。……。……貴様の技術、……我が真理の旅を支える『兵站』として、正式に採用してやろう。……。……。……。……これで、……あと三十個はチーズを追加できるな。……。……おい、アルマ! ――村長を呼んでこい! ――まだ蔵に予備があったはずだ!)」

「……もう、増やさないの!! ――軽くなったからって、限界はあるんだからね!?」

頼もしい先輩との再会、そして彼女の「技」を授かった一行は、オード村を後にした。

背後でガハハと笑いながら手を振るケットルの姿が小さくなる中、アルマたちは、自分たちの旅が、学園で培った絆を外の世界へ繋いでいく旅なのだと、改めて実感していた。

「……よーし、出発進行! ――ケットル先輩の袋があれば、どこまでもいけるね!」

「(――その前に、我が腹が緊急事態を宣言している! ――アルマ、歩きながらでいい、……あの袋の三段目にある、一番香ばしい燻製肉を……三枚射出せよ!)」

「……だから、さっき食べたばっかりでしょ!!」

秋の風に吹かれながら、最弱パーティの賑やかな行進は、次なる淀みの地へと続いていく。

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