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タノシイ昼食交流


「はーい、ザっと学園内を回りましたが、大体はこんなところですねー」



 魔法関連の設備以外にも食堂やら購買やら図書室など、一般的な学園らしい場所の案内も終わり、軍事部門の教室へ戻った。

 この後の時間だが、初日から授業するわけでなく終礼をしてからはフリータイムらしい。



「明日は新入生の歓迎も兼ねて、対人戦闘の実技試験の場を設けてありますー。先輩方と手合わせをして、実力を確かめつつ親交を深めていくための場でもありますので、頑張ってくださいねー」



 先輩方と親交を深める場、ねぇ。

 ……やっぱ、アイツもちょっかいかけてくるんだろうなぁ。




 終礼を済ませた後、とりま昼食のために食堂へ。

 御同輩の4人も同じく腹を空かせた様子で歩を進めている。


 食堂に着くと、ズラリと並ぶ彩り豊かなごちそうの数々が目に入った。

 貴族御用達のフルコースメニューのような料理が並び、そのどれもが高クオリティであると一目で分かる。



「おおー、ビュッフェだ……え、もしかして毎日好きなモン食い放題なのか!?」


「いや初日だけだぞ。明日以降は事前に注文したものが給仕されるって説明されてたろ」


「初日くらいは贅沢させてもらえるってわけね。ありがたい話だわ」


「ふわぁ……」



 豪華な料理を取り放題という状況に、皆年齢相応に目を輝かせている。年長のオトザ君は童心に帰ったような顔してるが。

 かくいう俺も内心テンション上がってたり。……今日くらいはイモムシ抜きの食事に舌鼓を打たせてもらうとしよう。



「んめぇー! ウチのシェフに負けてねぇなこのメシ!」


「カトラリーくらいまともに持ちなさい。はしたないわよ」


「かたいこと言うなって! 久々に家で親父に睨まれながら食べずに済むんだし、気兼ねなく無礼講でいこうぜ!」


「……シャルクル侯爵殿の苦労が目に浮かぶな」



 ゴルディア君、美味しい料理にがっつきたい気持ちは分かるがフォークを握り締めながら皿を掻っ込むのは止めろ。

 一歩間違えば俺もこんな食い方を晒すことになってたのか……大丈夫かこの子は。



「ラインを見ろ、最年少なのに引くぐらい綺麗に食ってるだろ」


「マールも平民とは思えないくらい丁寧な食べ方ね。貴族と遜色ないくらいよ」


「え、ええ、これくらいは、普通ですから……」



 よしよし、子爵家での英才教育が実を結んでるな。

 というか、マールちゃんも明らかにカトラリーの使い分けに慣れてるよな。

 もしかして貴族であることを隠してるとか?



 ゆっくりと食事をしながら雑談は続いた。

 趣味はなんだ、どの飯が好みだと、気が付いたら主にゴルディア君が話を振って、それぞれが答えていく形になっていた。

 やっぱリーダー向きだわゴルディア君。コミュ強。



「ムグムグ……にしても、明日は対人の実戦実習か、ちょっと怖いなぁ。オトザ、自信あるか?」


「……正直言って、私は荒事が苦手だ。自信があるかないかで言えばまったくない」


「え、じゃあなんで軍事部門に入ったんだよ?」


「本当は農業部門あたりに入りたかったんだが、今年は倍率が高く定員オーバーで落ちてしまい……母上に相談したら『なら定員割れの軍事部門にでも入りな。入学できなきゃコロス』と言われ、やむなくな」


「……ドンマイ」



 そちらの母上殿怖すぎない? 苦労してんなオトザ君。

 ……俺が言えた義理じゃないか。



「そういうゴルディアはなんで軍事部門に?」


「ダラダラ遊び惚けたりしすぎて『軍事部門で根性叩き直してこい』って親父にケツ引っ叩かれてな。まあ学園も結構楽しそうだからいいけどな!」


「自覚してるなら直せよ……」


「やー、無理! ヒトに言われないとこういうの直すの無理っぽいわ! ……さすがに1週間音信不通で街の中を散財して遊び回ってたのはまずかったかな。親父、超キレてたなぁ」


「当たり前だろ。ウチの家でそんなことすりゃ母上に殺されるぞ」



 ゴルディア君、気持ちは分かるが動機が自堕落の末路すぎるぞ。

 別に悪い奴じゃないかもしれんが特にいい奴でもなさそう。



「それじゃあ次、ラインは?」


「そうですね―――」








「お隣、失礼するわよ」


「……っ!」





 ……おうふ。


 オトザ君に動機を振られて、答えようとしたところで後ろから声をかけられた。

 心の奥底でラインハルトが総毛立っているのが分かる。

 落ち着け、隙を見せるな、動揺を悟られるな。



「いいわよね、()()()()()()()?」


「……ええ、もちろん。わざわざそちらから話しかけていただき光栄です、()()()()()()



 営業スマイルでそう返すと、つまらなそうに鼻を鳴らしつつイスを引いた。

 俺の隣へ腰かけてきたのは、赤い髪の少女。


 レオポルド公爵家の令嬢、毒姉ことメリーナリス・レオポルド。

 ……思ってたよりも早く接触してきたな。随分と積極的じゃないの姉上サマ。



「あ、あなたは、いえ、貴女様は……!?」


「え、誰?」


「バカ、知らんのか! この方はレオポルド公爵家のメリーナリス・レオポルド様だ!」


「公爵家……レオポルド……?!」



 アホ面で首を傾げるゴルディア君をオトザ君が諫め、対面に座っているリーリャちゃんとマールちゃんが顔を引き攣らせながら目を見開いている。

 いきなり公爵家の先輩、それも特待生が接触してきたらそりゃ驚くわな。



「そんなにかたくならなくてもいいのよ。なにせ、有望な可愛い後輩たちですもの。特にあなたは、ね」


「もったいないお言葉です」


「ふふ……いい機会だし、少しお話しましょう。あなたのこと、聞かせてくれないかしら?」



 うぜぇー。目が笑ってない笑顔で迫ってくるのがくそウザい。絶対なにか粗を見つけて揶揄ってやろうって魂胆が見え見えだわ。

 本音を言えば今すぐコイツの陣中に分銅叩きつけて前歯全折りしてやりたいところだが、んなことすりゃ公爵家と対立どころかふつーにこっちの家が潰される。

 我慢我慢。我慢した分だけ後の復讐タイムの楽しみが増すと思って耐えよう。

 お読みいただきありがとうございます。

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