未来への内定通知
第84話
未来への内定通知
冬。
白金荘のポストに、一通の封筒が届いていた。
*
差出人。
福岡市教育委員会。
*
美鈴は、しばらく封筒を見つめていた。
心臓がうるさい。
手汗がすごい。
*
「……春高決勝より緊張するんやけど」
深呼吸。
そして。
ゆっくり封を開ける。
*
紙を取り出す。
文字を読む。
*
一瞬。
思考が止まる。
*
次の瞬間。
「……受かった」
涙があふれた。
*
幼稚園教諭採用試験。
合格。
*
夢への切符だった。
*
美鈴は急いで荷物をまとめる。
「よし、実家帰ろ」
*
黒崎家。
玄関。
ガチャ。
「ただいまー!!」
佳代が顔を出す。
「あら、美鈴?」
*
その瞬間。
美鈴、通知書を掲げる。
「受かった!!」
*
一瞬静止。
そして。
「えっ!!?」
佳代、涙腺崩壊。
*
「ほんとね!?」
「ほんと!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
抱きつく母。
*
そこへ父・正一。
「なんの騒ぎ――」
通知書を見る。
数秒沈黙。
*
そして。
「……よく頑張ったな」
静かに笑う。
*
だが次の瞬間。
誠一。
「姉ちゃん先生になると!?」
「なる!」
「園児逃げてぇぇぇ!!」
「なんでよ!!」
黒崎家、大爆笑。
*
佳代、涙を拭きながら言う。
「でも本当に良かった……」
「うん」
「小さい頃から、あんた人の面倒見るの好きやったもんね」
*
美鈴は少し照れくさそうに笑う。
「……やっとスタートラインかな」
*
その翌日。
美鈴は宗像高校へ向かう。
*
懐かしい体育館。
扉を開けた瞬間。
「黒崎先輩ぃぃぃ!!」
後輩たち大絶叫。
*
「うわっ!?」
囲まれる。
抱きつかれる。
腕引っ張られる。
*
「先生合格おめでとうございます!!」
「ニュースより早く知りました!!」
「なんで情報回るの早いん!?」
*
さらに。
咲良が敬礼。
「我々は先輩の教えを守り続けています!!」
「不安しかない」
*
藤崎監督も現れる。
「おめでとう、黒崎」
「ありがとうございます!」
「ちゃんと夢掴んだね」
*
体育館を見回す美鈴。
ここで泣いて。
笑って。
怪我して。
全国を戦った。
*
青春が全部詰まっていた。
*
すると。
琴音が言う。
「先輩、文化祭来れなかったですよね?」
「うん、忙しくて」
「じゃあ写真見ます?」
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数秒後。
美鈴、腹筋崩壊。
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「ちょっ、待っ、何これぇぇぇ!!」
写真。
完全にカオス。
*
まず看板。
⸻
宗像高校バレー部
イタリアン研究会
⸻
「だから何で研究会化しとるん!!」
*
さらに。
部員全員コック帽。
なぜかユニフォームの上からエプロン。
*
メニュー。
⸻
・高速フォークパスタ
・アルデンテ焼きそば
・レシーブミネストローネ
・時間差カルボナーラ
⸻
「時間差カルボナーラって何ぃぃ!!」
体育館大爆笑。
*
さらに写真二枚目。
咲良、パスタ湯切り中。
なぜかフォームが完全にスパイク。
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「いやバレーやん!!」
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三枚目。
琴音。
真顔で寸胴鍋分析。
「麺の回転数を計算しています」
「何しよるん!!」
*
さらに。
ひまりが叫ぶ。
「監督! アルデンテ入ります!!」
「選手交代みたいに言うな!!」
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美鈴、涙流して爆笑。
「もうダメ……お腹痛い……」
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藤崎監督、遠い目。
「黒崎」
「はい?」
「全部、君のせい」
「えぇぇぇ!?」
*
でも。
美鈴は嬉しかった。
自分が残したものは。
勝利だけじゃない。
笑顔だった。
*
最後。
体育館中央。
後輩たちが整列する。
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「黒崎先輩」
「先生合格、おめでとうございます!!」
全員、一礼。
*
美鈴は少し目を潤ませる。
「ありがとう」
この場所は。
やっぱり、自分の原点だった。
⸻
次回予告
第85話「卒業前夜」
卒業論文。
最後の実習。
社会人バレー。
慌ただしい毎日の中、美鈴は少しずつ“学生最後の日々”を実感し始める。
一方フェニックス福岡では、美鈴の新型サーブ対策が全国規模に。
「もう映像解析されとるぞ」
「プロ野球みたいになっとる!?」
さらに宗像高校では、“イタリアン研究会”がまさかの来年度存続決定。
「だから何の部活なん!!」
そして白金荘では、美鈴の隣室についに新住人が引っ越してくる――。
次回、第85話「卒業前夜」。
黒崎美鈴、新しい人生の扉が静かに近づいてくる。




