表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑う母の物語  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/93

夢へ続く試験

第82話


夢へ続く試験


 短大二年。


 黒崎美鈴の毎日は、さらに忙しさを増していた。


     *


 大学。


 実習。


 レポート。


 フェニックス福岡での練習。


 そして――


 教員採用試験。


     *


 受からなければ。


 幼稚園教諭にはなれない。


 夢は届かない。


     *


 白金荘二〇一号室。


 夜九時。


 美鈴は机に向かっていた。


 教育法規。


 発達心理。


 幼児教育論。


 ノートにはびっしり書き込み。


     *


「……頭こんがらがるぅ」


 ぐったり。


 だが。


 その横には、フェニックス福岡の試合動画。


 完全に“文武両道フル回転”状態だった。


     *


 それでも。


 美鈴には一つだけ決めていることがあった。


 身体を壊さないこと。


     *


 どんなに忙しくても。


 食事。


 休養。


 これは絶対に雑にしない。


 それがアスリートとしての基本だと知っていた。


     *


 もちろん。


 忙しい日は即席料理にも頼る。


 カップ麺。


 冷凍食品。


 レトルト。


 でも。


 毎日それではダメ。


     *


 美鈴は冷蔵庫を開ける。


「今日は何作ろっかなぁ」


 中を見つめる。


 野菜。


 卵。


 鶏肉。


 ラディッシュ。


     *


「よし」


 エプロン装着。


     *


 今夜のメニュー。


 酢の物。


 ラディッシュを使った美鈴特製サラダ。


 野菜スープ。


 そして雑穀ご飯。


     *


 包丁の音が響く。


 トントントン。


 高校時代より、かなり上達していた。


     *


「……前はペペロンチーノ爆発させかけたもんね」


 一人で苦笑い。


     *


 料理をしながら、美鈴は考える。


 身体は食べたものでできる。


 だから。


 何を食べるかも大事。


     *


 試験勉強も同じ。


 無理しすぎれば壊れる。


 だから。


 ちゃんと休む。


     *


 時計を見る。


 十時四十分。


「よし、今日はここまで」


 どれだけ忙しくても。


 夜十一時には勉強を終える。


 それも自分ルールだった。


     *


 お風呂。


 湯気。


「はぁぁぁ〜……」


 疲れが抜けていく。


 左足首をゆっくりマッサージする。


     *


 社会人バレー。


 新型サーブ。


 負担は確実に増えていた。


 特に左足。


 古傷は、簡単には消えない。


     *


 神崎亜美の言葉を思い出す。


『無茶したら、また壊れるよ』


 美鈴は静かにうなずく。


「分かっとる」


     *


 そして十一時半。


 布団へ入る。


 睡眠。


 これも大事な練習。


     *


 一方――


 フェニックス福岡。


 新型サーブは、ついに完成形へ近づいていた。


     *


 普通のジャンプサーブ。


 緩いサーブ。


 高速フォーク。


 そして。


 “予測以上に伸びる”変化球。


     *


 相手は読めない。


 落ちると思えば伸びる。


 伸びると思えば落ちる。


     *


 松永沙紀が苦笑する。


「ほんと嫌なサーブになったね」


 美鈴、少し笑う。


「最高の褒め言葉です」


     *


 一方――


 宗像高校。


 こちらも進化を続けていた。


     *


 全国の監督たちが頭を抱える。


「宗像高校、対策不能です」


「試合ごとに形が変わる」


「誰が中心なのか分からん」


     *


 これこそ。


 黒崎美鈴が残した最大の遺産。


 “考えるバレー”。


     *


 そして夏。


 インターハイ。


     *


 宗像高校、再び全国制覇。


     *


 決勝。


 最後の一点。


 スパァン!!


 コートへ突き刺さるスパイク。


 試合終了。


     *


「よっしゃあぁぁぁ!!」


 歓声。


 抱き合う部員たち。


 涙。


     *


 藤崎監督は、静かに笑った。


「……ちゃんと受け継がれとるね」


 コートには。


 黒崎美鈴がいなくても。


 確かに“宗像高校のバレー”が生きていた。


     *


 その頃。


 白金荘。


 テレビで試合結果を見た美鈴は、小さく笑った。


「みんな、おめでとう」


 少しだけ涙ぐみながら。


     *


 自分の高校時代は終わった。


 でも。


 自分が残したものは、ちゃんと未来へ繋がっている。


     *


 そして。


 美鈴自身もまた。


 次の夢へ向かって、歩き続けていた。



次回予告


第83話「面接という名の試合」


 教員採用試験が目前に迫る。


 筆記。


 実技。


 そして最大の難関――面接。


「あなたは、どんな先生になりたいですか?」


 美鈴は、自分の言葉で夢を伝えようとする。


 一方フェニックス福岡では、新型サーブがついに公式戦で猛威を振るう。


 しかし、その異質すぎる軌道に審判団まで困惑。


「……今の、どう曲がった?」


 さらに宗像高校では、“イタリアン研究会”がなぜか文化祭出店を計画。


「だからここバレー部やけん!!」


 次回、第83話「面接という名の試合」。


 黒崎美鈴、“未来の先生”として初めて試される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ