フォークサーブ改造計画 宗像高校・イタリアン大暴走編
第74話
フォークサーブ改造計画
宗像高校・イタリアン大暴走編
その頃――
宗像高校女子バレー部では、とんでもない方向へ話が進んでいた。
*
発端は、美鈴の何気ない一言だった。
『今年の宗像高校は、どんなイタリアンになるんやろね』
この“比喩”を。
後輩たちは。
真面目に受け取りすぎた。
*
体育館。
練習前。
藤崎監督が入ってきた瞬間、固まる。
「……何しよるん?」
部室前。
なぜかカセットコンロ。
巨大鍋。
パスタ。
トマト缶。
オリーブオイル。
さらに。
エプロン姿の部員。
完全に料理部。
*
咲良が真顔で言う。
「黒崎先輩のイタリアンを継承します」
「違うそうじゃない」
監督、即答。
*
さらに柚葉。
「今年は“守備を煮込む”のがテーマです」
「バレーで説明しなさい」
*
琴音はホワイトボードに書いていた。
『アルデンテ=適度な緊張感』
『茹ですぎ=力みすぎ』
『塩加減=チームバランス』
監督、頭を抱える。
「なんでこんな真面目に間違えるん……」
*
そこへ美鈴が登場。
「こんにちはー」
後輩全員、キラキラした目。
「黒崎先輩!!」
「見てください!」
「イタリアン研究会です!!」
机の上には――
本当にパスタ。
「いやいやいやいや!!」
美鈴が慌てる。
「それ比喩たい!!」
*
だが、もう止まらない。
柚葉。
「先輩、“茹で加減が大事”って」
「それメンタルの話!」
咲良。
「“チームにソースを絡めろ”って」
「連携の話!」
琴音。
「“最後は盛り付け”って」
「試合運びの話!!」
*
さらに。
一年生の新入部員・野中ひまりが、真顔で聞く。
「黒崎先輩、試合前はペペロンチーノとカルボナーラどっちが強くなれますか?」
「知らん!!」
体育館爆笑。
*
そして最悪だったのが――
実際に茹で始めたこと。
「お湯沸きましたー!」
「塩どれくらい!?」
「アルデンテ七分!!」
「いや体育館で作るな!!」
美鈴、大混乱。
*
その時。
藤崎監督が、静かに近づく。
全員固まる。
監督、鍋を見る。
パスタを見る。
部員を見る。
そして。
「……誰が許可した」
沈黙。
誰も目を合わせない。
*
すると、なぜか咲良が前へ出る。
「責任は私にあります!」
「なんでキャプテンみたいな顔しとるん」
美鈴ツッコミ。
*
さらに琴音。
「ですが監督!」
「まだあるんか」
「イタリアンにはチームワークがあります!」
「説明してみなさい」
琴音、真顔。
「麺一本では料理になりません!」
部員たち。
「おおー!」
藤崎監督、静かに天を仰ぐ。
「誰かこの子たち止めて……」
*
だが。
次の瞬間。
鍋から煙。
「あっ」
「え?」
「水ない」
「は?」
完全に水が蒸発。
鍋の中で、パスタが黒くなり始める。
「ぎゃああああ!!」
「焦げた!!」
「イタリアンが炭化した!!」
「誰か火止めてぇ!!」
体育館、大パニック。
*
美鈴、大爆笑。
「だから言ったやん!」
柚葉が泣きそう。
「でも先輩、“失敗から学べ”って……」
「こんな学び方ある!?」
*
藤崎監督、深いため息。
「今日のメニュー追加」
「え?」
「体育館掃除一時間」
「はい……」
すると咲良が小声で言う。
「これも煮込み時間ですかね……」
「まだ料理引っ張るん!?」
また爆笑。
*
帰り際。
美鈴は後輩たちを見ながら笑っていた。
「でも、なんか宗像らしいね」
「え?」
「こんなアホなこと全力でやるとこ」
後輩たちも笑う。
*
その夜。
藤崎監督から部員全員へ通達。
⸻
【宗像高校女子バレー部・緊急通達】
・体育館でのパスタ調理禁止
・オリーブオイル持ち込み禁止
・アルデンテを戦術用語として乱用しないこと
・“イタリアン研究会”設立却下
⸻
翌日。
なぜか部室前に貼り紙。
『パスタは心で茹でろ』
藤崎監督。
「誰ぇぇぇぇ!?」




