表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑う母の物語  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/85

三連覇への挑戦後編

 身体検査の結果は、藤崎香織監督の手元にも届いた。


 監督室。


 藤崎監督は、黒崎美鈴の測定表を見て、思わず眉を上げた。


「……これは」


 身長175センチ。


 体重は競技者として理想的な範囲。


 体脂肪率は低すぎず、しかし余分なものは削ぎ落とされている。


 さらに、ジャンプ力、腹筋、腕力、背筋。


 どの項目も、宗像高校女子バレー部の歴代選手の中でもトップクラスだった。


 藤崎監督は、しばらく黙って数値を見つめた。


「黒崎……ここまで体を作ってきましたか」


 *


 体育館。


 美鈴はいつも通り、後輩に声をかけながらスパイク練習に入っていた。


 助走。


 踏み込み。


 跳躍。


 打点が高い。


 腕の振りも鋭い。


 着地後の切り返しも速い。


 藤崎監督は、その姿を見ながら静かに言った。


「身体能力だけなら、歴代でも相当上位です」


 隣のコーチがうなずく。


「ジャンプ力、背筋、体幹。全部そろってますね」


「ええ。ただの技巧派ではなくなっています」


 監督の視線の先で、美鈴が強烈なスパイクを打ち込んだ。


 床に響く音が、去年より明らかに重い。


「分析力と統率力に、身体の強さが追いついてきた」


 *


 練習後、藤崎監督は美鈴を呼んだ。


「黒崎」


「はい」


「身体検査の結果を見ました」


「あ、何か悪かったですか?」


「悪いどころか、驚きました」


 美鈴が目を丸くする。


「監督が驚くことあるんですか」


「あります」


 藤崎監督は測定表を見せた。


「あなたの体型は、宗像高校の歴代選手の中でもトップクラスです。ジャンプ力、腹筋、腕力、背筋。どれも非常に高い」


 美鈴は少し照れたように笑った。


「全国で揉まれたら、こうなりました」


「冗談ではなく、その積み重ねです」


 藤崎監督は表情を引き締めた。


「ただし、力がついた分、怪我のリスクも上がります。強い体ほど、使い方を間違えると壊れます」


 美鈴はうなずいた。


「はい」


「あなたは今年、主将です。無理をして倒れることは、チーム全体に影響します」


「分かっとります」


 美鈴は測定表を見つめた。


 強くなった体。


 それは、自分だけのものではない。


 チームを背負うための体だった。


 *


 藤崎監督が言った。


「黒崎」


「はい」


「今年のあなたは、技術と頭脳だけではなく、身体でもチームを引っ張れます」


 美鈴の目が静かに燃えた。


「はい」


「でも、忘れないこと。身体能力は武器です。武器に振り回されてはいけません」


 美鈴は少し笑った。


「包丁持って暴れる料理人になったら危ないですもんね」


 藤崎監督は一瞬だけ黙った。


「……例えは妙ですが、その通りです」


 美鈴は背筋を伸ばした。


「今年は、ちゃんと火加減も刃物の扱いも覚えます」


「バレーの話です」


「はい、バレーの話です」


 監督は小さくため息をつきながらも、口元を少し緩めた。


 *


 黒崎美鈴、高校三年。


 身長175センチ。


 鍛え上げられた体。


 ずば抜けた跳躍力と体幹。


 強くなった腕と背中。


 そして、試合を読む頭脳。


 宗像高校女子バレー部の歴代でも屈指の完成度を持つ選手へと、美鈴は成長していた。


 だが、その力をどう使うか。


 そこからが、主将・黒崎美鈴の本当の勝負だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ