園長先生とドンタクスの女王
第122話
「園長先生とドンタクスの女王」
2045年春。
福岡の街にある、
博多南幼稚園 。
朝。
園庭には、
子どもたちの元気な声が響いていた。
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「みすずせんせーーー!!」
「園長せんせぇぇぇ!!」
小さな子どもたちが、
一斉に駆け寄ってくる。
その中心にいるのは――
小倉美鈴 。
かつて、
死の淵を彷徨い、
幽霊として白金荘を漂っていた女性。
そして今は。
博多南幼稚園の園長先生となっていた。
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「こらこらー!
走ったら危なかろーもん!」
そう言いながらも、
美鈴は笑顔で子どもたちを受け止める。
「園長先生!
今日カエル捕まえた!」
「見てー!」
「いやなんで朝から虫カゴ持っとるん!!」
職員室からは笑い声。
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若い先生たちにとっても、
美鈴は特別な存在だった。
「小倉園長、
本当に子どもの心掴むの上手ですよね……」
「怒る時も、
ちゃんと愛情あるんですよね」
「しかも保護者対応が神」
「ただ時々、
ツッコミが高速すぎる」
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昼休み。
職員室。
副園長が苦笑する。
「園長先生、
今日も保護者会で爆笑取ってましたね」
「いやー、
空気重かったけんねぇ」
「保護者会をライブ会場にせんでください」
「えへへ」
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だが。
業務が終わると――
美鈴は、
再び“戦士”へ戻る。
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火曜日と木曜日の夜。
そして土曜日の昼。
体育館。
そこには、
ママさんバレー界を震わせるチーム。
《博多ドンタクス》。
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「集合ーーー!!」
美鈴の声が響く。
「はいっ!!」
平均年齢40代後半。
湿布率高め。
でも。
空気だけは、
まるで高校部活だった。
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「今日のテーマ!
“出汁の効いたレシーブ”!!」
「また始まった!!」
「料理理論やめてください!!」
体育館、
爆笑。
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だが。
笑いながらも、
全員知っていた。
この人が、
本当に強いことを。
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サーブ練習。
美鈴が、
ゆっくりボールを握る。
46歳。
だが。
高校時代から、
フェニックス福岡で活躍していた頃と変わらない、
鍛え抜かれた身体。
肩。
背中。
脚。
積み重ねてきた年月が、
その筋肉に刻まれている。
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「……いきます」
トス。
踏み込み。
そして――
ドォォォンッ!!
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轟音。
ボールが一直線に突き刺さる。
床に叩きつけられた瞬間、
体育館がどよめいた。
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「うわっ……!」
「まだこんな球打つと!?」
「芸術やん……」
「46歳のサーブちゃう……」
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その様子を。
体育館入口から、
二人の人物が見つめていた。
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黒崎正一 。
そして。
黒崎佳代 。
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正一は、
今やフェニックス福岡監督。
佳代も、
長年チームを支える存在となっていた。
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「……戻ってきたな」
正一が静かに呟く。
「うん……」
佳代は、
目を細めながら笑った。
「あの子、
ほんとにバレー好きやったもんねぇ」
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コートの中。
美鈴が、
楽しそうに笑っている。
仲間と。
ボールを追い。
汗を流し。
声を出し。
生きている。
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かつて。
命の境界を彷徨った少女は。
今――
園長先生として。
母として。
妻として。
そして。
一人のバレーボール選手として。
誰よりも、
輝いていた。
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次回予告 第123話「全国ママさんバレー開幕!」
ついに始まる、
全国ママさんバレー福岡予選!
だがドンタクスは——
「平均年齢高くない!?」
「黙れ!
経験値で殴るぞ!!」
一方幼稚園では——
「園長せんせー!
トカゲ逃げたぁぁ!」
「なんで園長室に放つと!?」
さらにフェニックスでは、
正一監督が対抗心メラメラ。
「……あいつ、
まだ現役みたいな顔しとる」
「娘に嫉妬せんでください」
そして美鈴、
久々の公式戦へ。
「全部繋ぐよ。
このチームで」
次回、
第123話「全国ママさんバレー開幕!」
40代、
湿布まみれ、
でも青春はまだ終わらない。




