双子誕生と白金荘壊滅
第113話「双子誕生と白金荘壊滅」
七月。
白金荘201号室は、
完全に“戦場”になっていた。
『おぎゃあああああ!!』
『ふぎゃあああああ!!』
「同時に泣くなぁぁぁぁ!!」
優馬、
完全崩壊。
右手に哺乳瓶。
左手におむつ。
肩にはガーゼ。
目は死んでいる。
「俺今……
三日くらい瞬きしてない……」
「人類やめかけとるやん」
美鈴も笑ってはいるが、
髪ぼさぼさ。
完全に“ママ一年生”状態だった。
光子が泣けば、
優子も泣く。
優子が寝れば、
今度は光子が起きる。
「なんで連携プレー完璧なん!?」
「双子やけんやろ」
「敵チームみたいに言うな!」
さらに。
夜中三時。
ようやく静かになったと思った瞬間。
『ふぇ……』
「!?」
『おぎゃああああ!!』
「起爆スイッチ軽すぎる!!」
優馬、
反射で立ち上がろうとして、
テーブルに膝を強打。
「ぐぉぉぉぉ!!」
「静かに転びぃ!!」
⸻
だが――
そんな二人を支えてくれる存在がいた。
週末。
ピンポーン。
「援軍来たよ〜」
黒崎佳代だった。
両手いっぱいの買い物袋。
その後ろには、
正一もいる。
「今日は二人とも寝とき」
「え……?」
佳代、
真顔。
「あんたらは、
二人を育てるのが仕事」
正一も頷く。
「休める時に休まんと、
ほんとに倒れる」
さらに翌週は――
「ただいま〜!」
今度は小倉家。
父・小倉隆志、
母・小倉千恵が大量の作り置きを抱えてやってきた。
「肉じゃが」
「ハンバーグ」
「筑前煮」
「冷凍おにぎり」
「量が炊き出しなんよ」
優馬、
涙目。
「母ちゃん……
神様なん……?」
「今さら気づいたと?」
千恵、
双子を抱っこしながら笑う。
「はいはい〜、
今日はばあば隊が担当ですよ〜♡」
すると。
光子、
ぴたりと泣き止む。
優子も、
すやぁ。
「……え?」
優馬、
硬直。
「なんで俺ら抱いたら泣くのに、
一瞬で寝るん……?」
佳代、
即答。
「人生経験」
「強すぎる」
⸻
その間に。
美鈴と優馬、
久々に“人間らしい休憩”を取る。
ソファに並んで座る二人。
静か。
泣き声がない。
「……静かやね」
「逆に怖い」
「分かる」
二人、
顔を見合わせて笑う。
その瞬間。
優馬、
そのまま意識を失うように寝落ち。
「えっ」
美鈴、
思わず吹き出す。
「寝るの一秒!?」
さらに五秒後。
ぐぉぉぉぉ……
「いびき早っ!!」
だが。
その寝顔を見て、
美鈴の表情がふっと柔らかくなる。
「……ありがとね」
小さく呟く。
「毎日、
一緒に頑張ってくれて」
優馬は完全に寝ている。
だが、
その手だけは、
眠ったまま美鈴の手を探すみたいに動いた。
ぎゅ。
「……ふふっ」
美鈴、
そっと握り返す。
⸻
一方その頃。
フェニックス福岡。
「双子観戦デビュー、
いつにする?」
「まだ首も座っとらん!!」
「英才教育やろ!」
「体育館デビュー早すぎる!!」
さらに。
宗像高校OGグループLINE。
『みつこちゃん』
『ゆうこちゃん』
『絶対かわいい』
『将来セッターかな』
『いやエース』
「気が早い人しかおらん……」
⸻
そして幼稚園。
星組。
「みすずせんせぇ〜♡」
「ん〜?」
「みつこちゃんとゆうこちゃん、
いつ来ると〜?」
「まだ赤ちゃんやけんね〜」
「じゃあ抱っこする練習する!」
「なんの!?」
次の瞬間。
園児たち、
一斉にぬいぐるみを抱えて赤ちゃんごっこ開始。
「おぎゃあああ!!」
「ミルクですよ〜♡」
「うんちした〜♡」
「再現度高い!!」
加藤皐月先生、
笑いすぎて崩れる。
「星組、
今日もカオスすぎる……!」
⸻
夜。
白金荘。
双子が、
ようやく眠っていた。
窓の外には、
静かな夏の月。
優馬は、
小さく呟く。
「……大変やけど」
「うん」
「幸せやね」
美鈴は、
光子と優子を見つめながら、
静かに頷いた。
「うん。
すごく幸せ」
泣き声も、
寝不足も、
ボロボロの日々も。
全部まとめて、
今の二人の“宝物”だった。
⸻
次回予告 第114話「双子とフェニックス大暴走」
光子と優子、
ついにフェニックス体育館デビュー!
「ちっちゃぁぁぁ!!」
「みんな声量抑えて!!」
だが双子は――
『おぎゃあああ!!』
「応援にビビったぁぁ!!」
一方白金荘では。
「優馬、
オムツ逆」
「え?」
「前後ろ逆ぅぅ!!」
さらに星組では、
まさかの“双子ブーム”発生。
「わたしも双子になる!」
「どういうこと!?」
次回、
第114話「双子とフェニックス大暴走」。
小さな命が、
周囲を笑顔で巻き込んでいく。




