星組カオス遠足とフェニックス婚約祭り
第108話「星組カオス遠足とフェニックス婚約祭り」
五月のやわらかい風が吹く朝。
博多南幼稚園・年少星組は、
遠足の日を迎えていた。
「みんなー! 今日は先生の話ちゃんと聞くとよー!」
副担任・小倉美鈴先生が声を張る。
すると――
「せんせぇぇぇ!!」
開始三十秒で園児が泣きながら突撃。
「どうしたと!?」
「だんごむし食べたぁぁ!!」
「なんでぇぇぇぇ!!?」
星組、開始即カオス。
担任の加藤皐月先生が頭を抱える。
「美鈴先生! 口ゆすがせます!!」
「うち行くけん、皐月先生は列見とって!!」
その横では。
「せんせー! ○○くんが葉っぱに話しかけよる!」
「自然と会話するタイプ!?」
「せんせぇぇ! 帽子が川に流されたぁぁ!」
「まだ園内から出発しとらんのやけど!?」
大野晴美園長、
遠くから様子を見て苦笑。
「今年の星組、過去最強かもしれんねぇ……」
皐月先生が小声で言う。
「でも美鈴先生、子どもたちからめちゃくちゃ慕われてますよね」
「そらもう、“リアクションが大きい先生”やけん」
すると園児たち。
「みすずせんせー!」
「せんせー!」
「だっこー!」
一斉突撃。
「ちょ、待っ――ぎゃあああ押さんでぇぇ!!」
完全にアイドル状態。
その頃――白金荘。
優馬はキッチンに立っていた。
「よし……今日は俺が弁当作る」
スマホでレシピ検索。
「“中火”……なるほど。男は強火やろ」
二十分後。
ボウッ!!
「うわぁぁぁぁ!!フライパン燃えたぁぁ!!」
煙モクモク。
帰宅した美鈴、
玄関開けた瞬間絶叫。
「なんで部屋がバーベキュー場になっとると!!?」
「火力を信じすぎた」
「文明レベルが原始人!!」
さらにその夜。
フェニックス福岡の体育館。
松永先輩がニヤニヤしながら美鈴を呼ぶ。
「美鈴〜」
「なんですか、その顔」
「実はさ。うちも結婚するけん♪」
「……へ?」
周囲のフェニックスメンバー、
一斉にニヤニヤ。
「やっと言える〜!」
「ずっと隠しとったもんね〜!」
「え、え!? 誰とですか!?」
すると体育館入口から、
背の高い爽やかな男性が現れる。
「どうも、佐野慎太郎です」
「しんちゃん♡」
「しんちゃん!?」
美鈴、
完全にフリーズ。
「松永先輩が“しんちゃん”とか呼びよう世界線あるんや……」
「失礼やねぇ」
フェニックス勢、
大爆笑。
「いや〜、これから楽しみやねぇ」
「小倉先輩と松永先輩、
二大いじられ既婚者枠やん」
「やめて!? まだ“既婚者感”に慣れとらんけん!!」
そこへ優馬登場。
「美鈴ー、弁当届けに――」
バサッ。
蓋が開く。
中身、真っ黒。
沈黙。
松永先輩。
「……炭?」
優馬。
「ハンバーグです」
フェニックス全員。
「「「嘘つけぇぇぇぇ!!!」」」
体育館、
爆笑で練習中断。
美鈴は笑いすぎて涙を浮かべながら、
優馬の腕を軽く叩く。
「もうほんと……なんでうちの旦那、
毎回こうなると……!」
優馬も頭をかきながら笑う。
「いやでも、
笑っとる美鈴見れたけん、まぁええかなって」
一瞬だけ、
空気がやわらかくなる。
事故の日から、
長い時間が流れた。
泣いて、
苦しんで、
笑えない日もあった。
それでも今。
美鈴の周りには、
こんなにもたくさんの笑い声があった。
フェニックス。
宗像高校。
宗像中学。
幼稚園。
白金荘。
みんなが、
彼女の帰りを待っていた。
そして今、
その中心で――
小倉美鈴は、
今日も腹を抱えて笑っていた。
⸻
次回予告 第109話「白金荘、夫婦げんか未満」
優馬、
ついに本気で料理リベンジ。
「今日は焦がさん!」
三十分後。
「なんで鍋が爆発しとるん!?」
一方幼稚園では。
「みすずせんせぇぇ!!
カエル逃げたぁぁ!!」
「なんで教室に持ち込むとぉ!?」
さらにフェニックスでは、
松永先輩の結婚式準備が大暴走。
「余興で空中ブランコ!?」
「結婚式やなくてサーカス!!」
そして白金荘の夜――
「優馬、
うちね」
「ん?」
「今が、一番幸せかもしれん」
次回、
第109話「白金荘、夫婦げんか未満」。
笑いながら、
二人の人生は続いていく。




