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笑う母の物語  作者: リンダ


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12/23

卒業の日、次のコートへ

 第12話

 卒業の日、次のコートへ


 1年生として過ごした一年が、終わろうとしていた。


 入学式の日には大きく見えた教室も、今ではすっかり見慣れた場所になっていた。


 初めての授業。

 初めての宿題。

 初めての給食当番。

 初めての学芸会。


 笑った日もあった。

 失敗した日もあった。

 悔しくて泣いた日もあった。


 けれど美鈴は、そのたびに少しずつ前へ進んできた。


 *


 終業式の日。


 1年1組の教室では、先生が一人ひとりに声をかけていた。


「黒崎さん、この一年、よく頑張りましたね」


 美鈴は通知表を両手で受け取った。


「ありがとうございます」


 少し前なら、元気いっぱいに「みーすず、がんばった!」と言っていたかもしれない。


 けれど最近、美鈴の中で小さな変化が起きていた。


 自分のことを「みーすず」と呼ぶことが、少しずつ減っていたのだ。


 完全になくなったわけではない。


 家ではまだ、ふとした時に出る。


「みーすず、お腹すいた」


 と言ったあとに、少し照れたように言い直す。


「……美鈴、お腹すいた」


 佳代はそのたびに、何も言わずに笑っていた。


 正一は少し寂しそうだった。


「みーすず、減ってきたな……」


 佳代が言う。


「成長しよるんよ」


「分かっとる。分かっとるけど、父親としては少し寂しか」


「そこも成長せんとね」


 正一は何も言い返せなかった。


 *


 終業式の帰り道。


 美鈴はランドセルを揺らしながら歩いていた。


 隣には、同じ1年1組の友達がいる。


「2年生になったら、クラス替えあるとかいな」


「どうやろ」


「また一緒がよかね」


「うん」


 美鈴は少し空を見上げた。


 春の匂いがした。


「でも、2年生になったら、もっといろいろできるようになるよね」


「美鈴ちゃん、何したかと?」


 美鈴は少し考えてから言った。


「バレー」


「やっぱり?」


「うん。いつか本気でバレーしたか」


 その言葉は、前よりもはっきりしていた。


 父の背中。

 体育館の光。

 友達とつないだボール。

 悔し涙。

 学芸会でみんなを支えたピアノ。


 全部が、美鈴の中でつながっていた。


 *


 春休み。


 美鈴は毎日のように父に頼んだ。


「お父さん、バレーの相手して」


「今日もか?」


「今日も」


「昨日もしたばい」


「昨日は昨日。今日は今日たい」


 正一は笑った。


「言うようになったなあ」


 近くの空き地や公園で、正一は美鈴の相手をした。


 本格的な練習ではない。


 柔らかいボールを使って、構え方を教える。

 ボールを見ること。

 足を動かすこと。

 怖がって手を引かないこと。


「美鈴、ボールが来たら逃げん」


「うん」


「怖い時ほど、一歩前」


「一歩前」


「そうたい」


 美鈴は何度も失敗した。


 ボールを落とす。

 横へ飛ばす。

 顔に当たりそうになって、思わず目をつぶる。


 でも、そのたびに笑った。


「今の、鼻がレシーブしそうやった!」


「鼻でレシーブしたら反則以前に痛かばい」


「じゃあ、鼻はベンチ?」


「鼻は応援席やな」


 二人で笑う。


 笑って、また構える。


 *


 夕方まで体を動かした日は、ご飯がいつもよりおいしかった。


「いただきます!」


 美鈴は茶碗を両手で持ち、勢いよく食べる。


 佳代が目を丸くした。


「今日もよく食べるね」


「いっぱい動いたけん!」


 正一がうなずく。


「運動したら、食べることも練習のうちたい」


「ご飯も練習?」


「そう。体を作る練習」


 美鈴は真剣な顔でご飯を見た。


「じゃあ、このご飯はバレーの仲間やね」


 佳代が吹き出した。


「ご飯をチームメイトにする子、初めて見た」


「お味噌汁は?」


 誠一が聞く。


 美鈴は考え込む。


「お味噌汁は監督」


「なんで?」


「全部まとめとるけん」


 正一が腹を抱えて笑った。


「その発想はすごか!」


 夕食の食卓は、いつも賑やかだった。


 たくさん動いて、たくさん食べて、たくさん笑う。


 それが黒崎家の春休みだった。


 *


 お風呂では、佳代が美鈴の髪を洗いながら言った。


「今日はいっぱい動いたね」


「うん。足、ちょっと疲れた」


「無理しすぎたらいかんよ」


「うん。でも、楽しかった」


「バレー、本当に好きなんやね」


 美鈴は湯気の中で少し考えた。


「うん。好き」


 そして、前よりもはっきり言った。


「美鈴、もっと上手くなりたか」


 佳代はその言葉を静かに受け止めた。


「そっか」


「お父さんみたいに、ばーんってしたか」


「うん」


「でも、ばーんだけじゃなくて、みんなでつなぎたか」


 佳代は微笑んだ。


「それなら、きっと美鈴らしいバレーになるね」


 *


 夜。


 布団に入ると、美鈴はすぐに眠くなった。


 一日中体を動かした疲れが、心地よく体に残っている。


 隣の部屋から、正一と佳代の声が聞こえた。


「美鈴、本気やな」


「うん」


「無理にはやらせん。でも、あの目は本気たい」


「正一さん、嬉しかろ?」


「嬉しか。ばってん、それ以上に、ちゃんと支えんとなと思う」


「そうね」


「勝つことだけやなくて、続けること、考えること、仲間を大事にすること。ちゃんと伝えたい」


 美鈴は半分眠りながら、その声を聞いていた。


 父の声。

 母の声。


 安心する声だった。


 美鈴は小さくつぶやいた。


「美鈴、がんばる……」


 もう、「みーすず」ではなく、「美鈴」と。


 その呼び方の変化は、小さなものだった。


 けれど、確かに成長の証だった。


 *


 春休みが終われば、美鈴は2年生になる。


 まだ正式にバレーを始めるのは少し先。

 けれど、心はもう次のコートへ向かっていた。


 父の背中を見て芽生えた憧れ。

 体育館の光に照らされた夢。

 友達とつないだボール。

 悔し涙のあとに知った強さ。

 学芸会で味わった、みんなでやり遂げる喜び。


 そのすべてが、美鈴の中で一本の道になっていく。


 走るのが好き。

 笑うのが好き。

 そして、バレーが好き。


 黒崎美鈴、7歳目前。


 次の春、彼女はまた一歩、大きくなる。




 第12話 続編

 次のコートへ ― 少年バレー団編


 春休みが終わり、美鈴は2年生、3年生と進級していった。


 相変わらず、教室の中心には美鈴がいた。


 笑いがあって、安心があって、誰かが置いていかれない空気。


 けれど――


 その中で、美鈴の中にずっと残り続けているものがあった。


 体育館の光。

 父のスパイク。

 あの日の「ばーん」。


 *


 4年生の春。


 ある日の放課後。


 体育館で、上級生たちが本格的なバレーボールの練習をしていた。


 ネットが張られ、コートが区切られている。


 サーブ。

 レシーブ。

 トス。

 スパイク。


 すべてが、これまで見てきたものより速く、強く、正確だった。


 美鈴は、その光景から目を離せなかった。


「……かっこよか」


 その言葉には、もう迷いはなかった。


 ただの憧れではない。


 “やりたい”という意思。


 *


 その日の夜。


「お父さん」


「ん?」


「美鈴、本気でバレーしたか」


 正一は少し黙った。


 そして、ゆっくりうなずいた。


「そうか」


「できる?」


「できる。ただし――」


「ただし?」


「楽しいだけやないばい」


 美鈴はまっすぐ見た。


「きつくても、やる?」


 少しの間。


 そして――


「やる」


 その答えは、はっきりしていた。


 *


 美鈴は、地域の少年バレー団に入った。


 最初の練習日。


 体育館の空気は、これまでとは違った。


 厳しい声。

 繰り返される基礎練習。

 止まらない動き。


「走れ!止まるな!」


「声出せ!」


「今のは何や!」


 コーチの声が響く。


 美鈴は、最初からついていけたわけではなかった。


 レシーブはまだ不安定。

 サーブも思ったところに飛ばない。

 動きも遅れる。


 何度も怒られた。


「黒崎!足が止まっとる!」


「はい!」


「声が小さい!」


「はい!」


 息が上がる。

 足が重い。


 それでも、美鈴は止まらなかった。


 *


 ある日の練習後。


 美鈴は一人、体育館の端でボールを見ていた。


「なんで、あそこで取れんかったっちゃろ」


 自分に問いかける。


 答えを探す。


 そして、ボールを軽く投げる。


 受ける。


 また落とす。


「今のは……目が離れとった」


 もう一回。


「今のは……足が遅れた」


 誰に言われたわけでもない。


 自分で考え、自分で修正する。


 その姿を、コーチが遠くから見ていた。


「……あの子、面白いな」


 *


 数ヶ月後。


 チーム内での紅白戦。


 美鈴はまだ控えだった。


 ベンチからコートを見つめる。


 出たい。

 でも、まだ足りない。


 その時、コーチが声をかけた。


「黒崎」


「はい!」


「次、行け」


 心臓が跳ねた。


「はい!」


 コートに入る。


 最初のプレー。


 ボールが来る。


(前に出る)


 受ける。


 少し高く上がった。


「ナイス!」


 先輩の声。


 次のプレー。


 またボールが来る。


(怖くない)


 手を前に出す。


 受ける。


 つながる。


 その瞬間、何かが変わった。


 *


 それから、美鈴は急速に伸びた。


 ただ運動神経がいいだけではない。


 考えている。


 見ている。


 修正している。


「黒崎、今の何で取れたか分かるか?」


「はい。最初に一歩前に出たけんです」


「そうや。それが大事や」


 コーチがうなずく。


 美鈴は、ただ言われたことをやるだけの選手ではなかった。


 自分で理解し、自分で変える選手だった。


 *


 そして――


 レギュラー争い。


 同じポジションに、もう一人上手い選手がいた。


 技術ではまだ上。

 経験もある。


 でも、美鈴は諦めなかった。


 練習のあとも残る。


 家でも正一と練習する。


「もう一回!」


「まだやると?」


「まだやる!」


 何度も、何度も。


 失敗しても、止まらない。


 *


 ある日の紅白戦。


 美鈴は、ついにレギュラーとして呼ばれた。


「黒崎、スタートから行け」


「はい!」


 コートに立つ。


 空気が違う。


 責任が違う。


 ボールが来る。


 受ける。


 つなぐ。


 仲間の声が聞こえる。


「ナイス!」


「いいよ!」


 試合が終わった。


 コーチが言った。


「黒崎、次からスタメンや」


 一瞬、時間が止まった。


「……はい!」


 美鈴は深く頭を下げた。


 *


 そこから、美鈴はチームの中心選手になっていく。


 声を出す。

 流れを変える。

 ミスしても、次をつなぐ。


「今のは切り替え!次いこ!」


「大丈夫たい!」


 気づけば、みんなが美鈴の声を聞いていた。


 小さなキャプテン気質は、ここで一気に形になる。


 *


 福岡県大会。


 強豪が集まる大会。


 試合は簡単ではなかった。


 点を取られる。

 流れが悪くなる。

 空気が沈む。


 その時。


「まだ終わっとらん!」


 美鈴が叫ぶ。


「一人じゃなか!つなぐばい!」


 その声で、チームが動く。


 つなぐ。

 拾う。

 もう一回。


 試合をひっくり返す。


 そして――


 優勝。


「やったー!」


「全国行くばい!」


 美鈴は涙をこらえながら笑った。


 *


 全国大会。


 知らないチーム。

 強い相手。

 初めての大舞台。


 それでも、美鈴は変わらなかった。


「いつも通りやるだけたい」


 試合は激しかった。


 何度もピンチになる。


 でも、そのたびに――


 つなぐ。


 笑う。


 声を出す。


 決勝戦。


 最後の一本。


 ボールが上がる。


 美鈴が受ける。


 つながる。


 スパイク。


 決まる。


 試合終了。


 ――優勝。


 *


 表彰式。


 メダルを受け取る。


 仲間と抱き合う。


 笑いながら、泣く。


「やったな……!」


「やったばい……!」


 美鈴は空を見上げた。


 あの体育館の光。

 父の背中。

 最初の“ぽーん”。


 全部がつながっていた。


 *


 小学校卒業。


 美鈴はもう、ただの“明るい子”ではなかった。


 考える力。

 つなぐ力。

 空気を変える力。

 そして、勝つ力。


 すべてを持った選手へと成長していた。


 黒崎美鈴。


 次のステージへ。


 その足は、もう迷っていなかった。




 卒業式 ― 次のコートへ


 卒業式の日。


 宗像市立東郷小学校の体育館には、少し冷たい春の空気と、花の香りが満ちていた。


 壇上には校旗。

 壁には「卒業おめでとう」の文字。

 椅子に座る卒業生たちは、どこか誇らしげで、どこか寂しそうだった。


 黒崎美鈴は、卒業生代表として答辞を読むことになっていた。


 名前を呼ばれ、美鈴は立ち上がる。


「卒業生代表、黒崎美鈴さん」


「はい」


 体育館が静まり返る。


 美鈴は壇上へ向かう途中、客席にいる正一と佳代を見つけた。


 正一はもう泣きそうだった。


 佳代が小声で言う。


「まだ始まっとらんよ」


「分かっとる」


「もう泣いとるやん」


「これは準備運動たい」


 美鈴は少し笑いそうになったが、ぐっとこらえた。


 壇上に立つ。


 深く一礼する。


 そして、ゆっくり言葉を読み始めた。


「春のあたたかい光の中、私たちは今日、宗像市立東郷小学校を卒業します」


 声は、はっきりしていた。


「入学したばかりのころ、私は小学校がとても大きく見えました。教室も、校庭も、体育館も、全部が知らない場所でした」


 美鈴は少しだけ顔を上げる。


「でも、友達と笑い合い、先生に教えていただき、失敗して、泣いて、また立ち上がって、この学校は私たちの大切な場所になりました」


 卒業生たちが、静かに聞いている。


「私は、この小学校でたくさんのことを学びました。勉強すること。友達と助け合うこと。間違ったことをした時は、ちゃんと謝ること。そして、うまくいかない時でも、もう一度やってみること」


 美鈴の声が、少し強くなる。


「私は、バレーボールに出会いました。最初はボールを落としてばかりでした。悔しくて泣いたこともあります。でも、仲間と一緒にボールをつなぐ楽しさを知りました」


 客席で、少年バレー団の仲間たちも見ていた。


「私は将来、バレーの選手になりたいです」


 体育館の空気が、少し動いた。


「強い選手になりたいです。でも、ただ強いだけではなく、仲間を支えられる選手になりたいです。失敗した人を責めるのではなく、次につなげられる人になりたいです」


 美鈴は、まっすぐ前を見た。


「小学校で学んだことを忘れず、中学校でも努力します。先生方、家族のみなさん、地域のみなさん、そして友達のみんな、本当にありがとうございました」


 最後に深く頭を下げる。


「私たちは、今日、東郷小学校を卒業します」


 一瞬の静寂。


 そして、大きな拍手が体育館を包んだ。


 正一は完全に泣いていた。


「佳代……美鈴が……」


「うん。立派やったね」


「バレーの選手になりたいって……」


「聞いたよ」


「俺、もうだめかもしれん」


「卒業式で倒れんでね」


 佳代も、目元をそっと拭っていた。


 *


 式が終わると、校庭では卒業生たちが写真を撮り合っていた。


「美鈴ちゃん、答辞すごかった!」


「泣きそうになった!」


「いや、うち泣いた!」


 友達たちが美鈴を囲む。


 美鈴は少し照れたように笑った。


「そんなに言われたら、こっちが照れるやん」


「バレー選手になるとよね?」


「なる。絶対なる」


「じゃあ、テレビ出たら言ってね。『小学校の友達です』って自慢するけん」


「その時は、みんなで応援席に来てよ」


「行く行く!」


 そこへ、少年バレー団の仲間たちもやって来た。


「美鈴、中学でもバレー続けるっちゃろ?」


「もちろん」


「また全国行こうや」


「行く。今度はもっと強くなって」


 美鈴は力強くうなずいた。


 *


 正一と佳代も近づいてきた。


 正一は目を真っ赤にしていた。


「お父さん、泣きすぎやろ」


「泣いとらん」


「目、真っ赤ばい」


「花粉たい」


「体育館の中やったよ」


 佳代が笑った。


「美鈴、立派やったよ」


「ありがとう」


 正一は少し真面目な顔で言った。


「夢を口にしたな」


「うん」


「言葉にしたら、責任も生まれる」


「わかっとる」


「でも、それ以上に力になる」


 美鈴はうなずいた。


「美鈴、頑張る」


 その言葉に、正一は静かに笑った。


「応援する」


 *


 その日の夜。


 黒崎家では、ささやかな卒業祝いが開かれた。


 佳代の手料理。

 美鈴の好きな唐揚げ。

 誠一が選んだケーキ。


「お姉ちゃん、卒業おめでとう!」


「ありがとう、誠一」


「中学生になったら、宿題増えると?」


「たぶん増える」


「いややね」


「誠一もそのうち増えるばい」


「えー!」


 正一が笑う。


「まあ、宿題も練習も、全部つながっとるたい」


 美鈴はご飯を食べながら言った。


「中学でも、バレー頑張る」


 佳代が優しく言う。


「無理しすぎんようにね」


「うん。でも、本気でやる」


 正一はうなずいた。


「本気なら、支える」


 *


 夜、布団に入った美鈴は、卒業証書を机の上に置いていた。


 その横には、バレーボール。


 小学校の思い出と、これからの夢が、同じ机の上に並んでいる。


 美鈴は小さくつぶやいた。


「次は、中学校」


 胸の中には、不安もあった。

 でも、それ以上に楽しみだった。


 小学校で出会った仲間。

 先生たち。

 少年バレー団での勝利。

 悔し涙。

 答辞で語った夢。


 すべてを抱えて、美鈴は次のステージへ向かう。


 黒崎美鈴、小学校卒業。


 笑いと涙とボールを胸に、彼女は中学生になる。


 次のコートは、もう目の前にあった。



 次回予告

 第13話「宗像中学校、開幕」


 時は流れ、美鈴は小学校生活の中で本格的にバレーを始め、仲間とともに成長していく。


 そして2011年春。

 黒崎美鈴、宗像中学校へ入学。


 小学校とは違う練習量。

 先輩たちの厳しさ。

 初めて感じる、本格的な競争。


 それでも美鈴は、笑いと根性で前に進む。


「ここからが、本当の勝負たい」


 次回、第13話「宗像中学校、開幕」。

 美鈴のバレー人生は、新しいステージへ入る。




次回予告


第13話「宗像中学校、開幕」


 2011年春。

 黒崎美鈴、宗像中学校へ入学。


 小学生時代、少年バレー団の中心選手として全国制覇を果たした美鈴の名前は、中学校でもすでに知られていた。


「あの子が黒崎美鈴?」

「小学生全国大会で優勝した子やろ?」

「キャプテンやったって聞いたばい」


 だが、中学校のバレーは小学校とは違っていた。


 練習量。

 スピード。

 先輩たちの迫力。

 そして、レギュラーをめぐる本格的な競争。


 初日から美鈴は、ついていくだけで精いっぱいになる。


 放課後は厳しい練習。

 帰宅後は宿題。

 夕食を食べ、風呂に入ると、布団に入った瞬間に眠ってしまう毎日。


 それでも、美鈴は立ち止まらない。


 宗像中女子バレー部顧問・小森一香先生は、その動きをじっと見ていた。


「黒崎さん、まだ体は中学生の練習に慣れとらん。でも、ボールへの入り方がうまかね」


 先輩たちも気づき始める。


 3年・主将 松永沙紀/セッター

 3年 原田千尋/ミドルブロッカー

 3年 井上玲奈/リベロ

 2年 古賀真帆/アウトサイドヒッター

 2年 田浦若菜/オポジット


 そして同級生たち。


 1年 黒崎美鈴/アウトサイドヒッター

 1年 西村遥/セッター

 1年 宮田紗英/ミドルブロッカー

 1年 江藤里奈/リベロ

 1年 藤原菜月/オポジット

 1年 坂井美空/アウトサイドヒッター


 同級生たちにとっても、美鈴は刺激だった。


「美鈴ちゃん、きつくなかと?」

「きつかよ。でも、ここからが本当の勝負たい」


 身のこなし。

 ボールへの反応。

 ミスしてもすぐ修正する分析力。

 そして、苦しい空気を笑いに変える力。


 美鈴は一年生でありながら、レギュラー候補に名を連ねる。


 厳しさに泣きそうになる日もある。

 体がついていかない日もある。

 それでも、笑いと根性で前に進む。


 次回、第13話「宗像中学校、開幕」。

 美鈴のバレー人生は、新しいステージへ入る。




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