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笑う母の物語  作者: リンダ


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婚約指輪と鼻血事件

 第102話「婚約指輪と鼻血事件」


 午後の博多。


 優馬は、

 人生最大級に緊張していた。


「……よし」


 見上げる。


 高級ジュエリーショップ。


 ガラス張り。


 入り口キラキラ。


 場違い感100%。


「帰りたい……」


 だが。


 脳裏に浮かぶのは、

 リハビリを頑張る美鈴の顔。


『また歩けるよう頑張る』


『優馬と一緒に未来行きたい』


 優馬、

 深呼吸。


「……行くしかなか」


 ウィーン。


 自動ドアが開いた。


 店内


「いらっしゃいませ〜」


 現れたのは、

 上品な女性店員。


 優馬、

 完全に固まる。


「あ、えっと、その」


「婚約指輪をお探しですか?」


「っっ!!」


 一発で見抜かれる。


「は、はい……」


 店員、

 にっこり。


「おめでとうございます♡」


「まだ正式には渡してないんですけどね!?」


「ふふ、大丈夫ですよ」


 優馬、

 着席。


 キラキラ並ぶ指輪。


(値段こわっ)


(ゼロ多っ)


(俺のIT会社の初任給消えるぞこれ)


「ご予算は?」


「死なない範囲で……」


「?」


 最大の問題


「では、

 サイズはお分かりですか?」


「……」


 優馬、

 停止。


「……分からんです」


「測られてませんか?」


「サプライズにしたくて……」


「なるほど」


 店員が微笑む。


「では、

 彼女様の身長や体型は?」


「え?」


「ある程度推測できますので」


 優馬、

 急に赤くなる。


「えっと……」


「はい」


「グラマラスです」


「はい?」


「Eカップです」


「サイズ情報そこ!?」


 店員、

 吹き出しそうになる。


「いえ、

 指のサイズを……」


「すみません!!

 最近脳がそっち方向に引っ張られて!!」


 暴走開始


「細身ですか?」


「はい」


「指も細め?」


「多分……」


「ちなみに、

 お客様のサイズは?」


「俺?

 11号くらいです」


「彼女様なら、

 7〜9号くらいかもしれませんね」


「そんな違うと!?」


「男性と女性ではかなり違いますよ」


 優馬、

 本気で焦る。


「えっ、

 じゃあ俺と同じくらいと思っとった……」


「それだとかなり大きいですね」


「危なっ!!」


 そこへ。


 プルルルル。


 スマホ着信。


 画面。


【美鈴♡】


 優馬、

 飛び上がる。


「っっっ!!」


「彼女様ですか?」


「はい!!」


「出られて大丈夫ですよ」


 優馬、

 恐る恐る通話。


「も、もしもし」


『優馬〜♡』


「ど、どした?」


『今どこおると?』


「えっ、いやその」


『なんか怪しい』


「怪しくない!!」


『女の人の声聞こえた』


 優馬、

 凍結。


 店員、

 気まずそうにお辞儀。


「ご案内中失礼しております〜」


『……は?』


 空気死亡。


 修羅場(誤解)


『優馬』


「はい」


『女とおると?』


「違う!!」


『浮気?』


「違うって!!」


『うち、

 まだ歩行器やのに』


「そこ関係ある!?」


『うち、

 頑張ってリハビリしよるのに』


「だから違うってぇぇぇ!!」


 店員、

 肩震わせて笑い堪えてる。


『じゃあ何しよると?』


「そ、それは……」


 言えない。


 サプライズだから。


『……ふーん』


「み、美鈴?」


『優馬』


「はい!」


『今、

 女の人と二人きり?』


「店員さん!!」


『もっと危ない!!』


「なんでだよ!!」


 カオス加速


 さらに。


『あ』


「ん?」


『今、

 “サイズ”って聞こえた』


「!!??」


 店員、

 完全に吹き出す寸前。


『優馬』


「はい!!」


『何のサイズ?』


「っっっ」


『まさか』


「違う!!」


『下着!?』


「なんでそうなるん!!」


『優馬のえっち!!』


「俺まだ何もしてない!!」


 店員、

 ついに吹き出す。


「ふふっ……!」


「笑わんでください!!」


 強制終了


『もういいっ!!』


「えっ!?」


『帰ったら説明してもらうけん!!』


 ブツッ。


 通話終了。


 優馬、

 魂抜ける。


「終わった……」


 店員、

 腹抱えてる。


「すみません……

 こんな面白い婚約指輪購入初めてです……」


「俺の人生、

 なんで毎回こうなるんや……」


「でも」


 店員が優しく笑う。


「すごく愛されてますね」


 優馬、

 少し照れる。


「……まぁ、

 うん」


「それで、

 指輪どうされます?」


 優馬は、

 ショーケースを見る。


 小さく輝くリング。


 その光の中に、

 笑う美鈴の顔が浮かんだ。


「……これにします」


 白金荘・夜


 ガチャ。


 帰宅。


 すると。


 ちゃぶ台前で、

 むくれ顔の美鈴。


「おかえり」


「……ただいま」


「で?」


「はい?」


「何のサイズ?」


「まだそこ!?」


「女の勘なめたらいかんよ?」


「怖っ!!」


 美鈴、

 じーっと見る。


「……ほんとに浮気じゃない?」


「違うって」


「じゃあ何?」


 優馬、

 少し黙る。


「……まだ秘密」


「むぅ〜……」


 その時。


 優馬のポケットから、

 レシートがひらり。


 美鈴が拾う。


「ん?」


 見る。


【ジュエリーショップ】


 停止。


「……え」


 優馬、

 顔真っ赤。


「ち、違っ」


 美鈴、

 数秒固まって。


 次の瞬間。


「っっっ〜〜〜〜!!」


 顔真っ赤。


「ばっ、ばかぁぁぁぁ!!」


 クッション投げる。


「サプライズ下手すぎるぅぅぅ!!」


「俺もそう思った!!」


 白金荘に、

 爆笑と悲鳴が響いた。


 次回予告 第103話「指輪と涙と白金荘」


 サプライズ失敗。


 だが優馬は、

 ついに本気の想いを伝える決意をする。


「美鈴、

 ちゃんと言わせて」


 一方、

 美鈴のリハビリは新段階へ。


「今日は杖で歩いてみましょう」


 さらにフェニックスでは、

 “黒崎復帰戦プラン”が暴走。


「だからまだ無理やけん!!」


 そして白金荘では。


「優馬〜、

 結婚したら毎日膝枕ね♡」


「未来予想図が重い!!」


 次回、

 第103話「指輪と涙と白金荘」。


 二人の未来が、

 ついに本当の形になり始める。

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