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笑う母の物語  作者: リンダ


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病室の小さな奇跡後編

 一方その頃――フェニックス福岡


 体育館。


 スパァァン!!!


 凄まじい音が響く。


「ナイスコース!!」


 フェニックス福岡の練習は、

 以前よりさらに熱を帯びていた。


 理由は一つ。


 “黒崎美鈴のバレーを止めないため”。


 キャプテンの松永が汗を拭きながら言う。


「黒崎がおらんでも、

 黒崎のバレーは終わらせん」


 全員が頷く。


 今のフェニックスは、

 単なる強豪ではなかった。


 宗像高校で培われた、


 ・予測不能サーブ

 ・異常な切り返し速度

 ・相手心理を読む配球

 ・“楽しみながら崩す”試合運び


 それらが完全にチーム文化として定着していた。


 解説者ですら言う。


「今のフェニックスは、

 黒崎美鈴という選手一人ではなく、

 “思想”そのものがチームになっている」


 宗像高校


 藤崎香織監督がホイッスルを吹く。


「次!!」


 バシィ!!


 床に叩き込まれるスパイク。


 だが。


「まだ甘い!」


 即座に怒号。


「黒崎なら、

 そこから相手の重心見てコース変えとる!」


「はいっ!!」


 全国から集まった選手たちは、

 “黒崎美鈴の後継”を目指していた。


 もはや宗像高校は、

 ただの強豪校ではない。


 “バレーの聖地”。


 横浜商工と並び称される、

 全国女子バレー界の頂点だった。


 寮完備。


 全国から入学希望。


 そして宗像高校最大の特徴。


 練習中なのに笑いが絶えない。


「キャプテン!!

 ボールより先に顔面レシーブ入りました!」


「なんで顔から行くと!?」


「黒崎先輩イズムです!!」


「継承するとこ間違えとる!!」


 体育館、大爆笑。


 だが試合になれば、

 誰よりも強い。


 それが宗像だった。


 宗像中学


「拾えぇぇぇぇ!!」


 西嶋百合愛監督の声が飛ぶ。


 ガァン!!


 床ギリギリの超低空レシーブ。


「繋げぇぇ!!」


 さらにトス。


 スパイク。


 決まる。


「よっしゃぁぁ!!」


 宗像中の選手たちもまた、

 美鈴の事故以降、

 覚悟が変わっていた。


「黒崎先輩、

 まだ戦いようけん」


「私らが止まるわけいかん」


 全国大会でも、

 実況が思わず口にする。


「宗像中、

 執念が違います」


 解説者は涙声だった。


「……黒崎美鈴さんの想いが、

 この子たちを動かしてるんでしょうね……」


 全国大会決勝


 実況席。


「マッチポイントです!!」


 会場が揺れる。


 そして――


 スパァァァン!!!


 決まった。


 優勝。


 その瞬間。


 実況が詰まる。


「……あ……」


 言葉にならない。


 隣の解説者は、

 すでに涙を流していた。


「……すみません……

 ちょっと……

 これは……」


 実況席で、

 本気で泣いていた。


 コートでは選手たちが叫ぶ。


「黒崎先輩ーーー!!」


「見えとうやーーー!!」


 歓喜。


 涙。


 抱き合う選手たち。


 そして病院では。


 眠る美鈴の脳波が、

 ほんのわずかに反応していた。


 その夜・白金荘


 一方その頃。


「優馬〜、これどう?」


 黒の下着姿。


「ぶふぉっ!!!」


 鼻血。


「だからなんで毎回出ると!?」


「全国レベルの破壊力やけん!!」


 フェニックスも宗像も全国制覇。


 だが。


 優馬の理性だけは、

 いまだ一勝もできていなかった。

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