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会議➁

 だが、マルティンは大急ぎで漫画が描ける人材を探さなくてはならないので、まずは子供たちに言葉と文字を最低限身に着けてもらう必要があったのだ。

 漫画ならば絵が重要だ――そうマルティンは思ったが内なる二渡秀夫は違うと断言していた。

 漫画で重要なのはストーリー&ネーム力だと二渡はいう。二渡も十代までは絵がうまいことが一番重要だと考えていたし、下手な絵の漫画は読まなかった。しかし友人の下宿に出入りするうちに、絵がとんでもなく下手だが大人気の作品を読むことになったのだが、度肝を抜かれた。

 凡人が大金を手に入れるデスゲームに挑む話――サラリーマンが武闘派暴力団の組長になってしまう話――建築物の解体だけをメインにした話はどれも絵が未熟だったが、読むことをやめることができなかったのだ。

 まずは物語を描く基礎の能力が必須――つまりは言語化し人に伝えることが漫画に一番必要なものだと二渡は主張するのである。

 マルティンは正確に漫画のことを思い出せないが、大傑作を読んだ時の高揚感は共有できた。

 まずはセリフが書けるほどの言語を身につけさせてから、漫画の描き方を布教する予定を立てた。

 アンジェラは理解はしてないが、マルティンの要求は飲むと約束する。


「子供たちの学習も問題なく我ら騎士団ならば率直に言って問題なく行えるとお約束します」


「それは頼もしい。細かいことは言わないから騎士団で色々よろしく頼むよ! 自分の仕事が減ればほかに色々できるからね!」


 アンジェラは真っすぐマルティンの目を見て言う。


「ご命令くださればこの周辺の警備も〈不死の銀騎士団〉が受け持ちます。率直にいかがでしょうか?」


「あ、警備はいいや。今のところ俺の【使役・極小】で何とかなりそうなんで!」


 そういうと2人の女性は露骨に落胆して見せた。

 マルティンは「信頼されていない」と思わせてしまったかと思い、反省する。ただ今のところパラディン菌騎士とハッピーロマンチック原虫とニンジャ菌の組み合わせで何とかなっているので、優秀な人材の〈不死の銀騎士団〉を警備に割り当てるのはもったいないのだ。

 それにマルティンには周辺を安全にし、強大な襲撃者に備える微生物を複数用意しているので準備に抜かりはないのである。

 それでも一応のフォローは口にしておく。


「警備はもう少ししてからお願いするよ」


 そういうと2人は少しだけ安堵したような顔をする。

 ほっとするマルティンに剣聖テンペランスがわずかにためらった後にいう。


「それから、その差し出がましいことをいうのは無礼だとは思いますが、一つ提案をお願いさせていただいてよろしいか?」


「えっ? あ、はい、気づいたことがあったらどうぞ」


「マルティン殿が有望なスキルの持ち主に武器を持たせて、レベリングを行っている業務、我ら〈不死の銀騎士団〉が代行できると愚考するのだがどうであろうか?」


「おお、確かに戦闘職でもない自分がするより確かに効率がいいかもですね。まだまだ強い武器も防具も余っているので自由に使えば、効率も上がりそうですね!」


 この言葉にテンペランスが青ざめる。


「その武器の貸出はお願いしたいほどありがたいが……マルティン殿の所有しているものは、他ではほぼ国宝級の品ばかりですぞ? そのことはお分かりか」


「はあ、そうなりますか。しかし細菌を操る自分が持っていてもしかたがないし、売るのも面倒なのでこうして使った方がマシなんですよね」


「そ、そうであるのか。マルティン殿が納得しているのならば私からはとやかくいうつもりはござらん」


 テンペランスが露骨に武器や防具がもったいないといった表情であったが、マルティンは考えを変える気はない。武器などの価値があるのは飽くまで俗世に身を置いている時だけなので、世捨て人になるつもりのマルティンにはどうでもよかったのだ。

 2人と充実した会話ができた――そう思い、会談を終えようとしたところでマルティンは重要な件が一つ残っていることに気付く。


「あ、そうだ。テンペランスさん、その失った腕をどのタイミングで元に戻します? 今すぐにでもハイヒール菌を大量培養すれば生やせますが、かなり体重が減ります。万全で生やしたいのならば、もう少し太ってからとかが理想と思いますけど、どうです?」


 この言葉にテンペランスは目を丸くする。


「わ、わたしの失った腕を再生できるのであるのか? できるのならば是非ともお願いしたいのであるが――」


「できますよ。というかアンジェラさんをうっかり生き返らせてしまったんだから、腕ぐらいならば何とかして見せますよ!」


 とマルティンは明るい口調で言ったが失敗したとすぐに察する。

 テンペランスとアンジェラはすっかりと顔面蒼白となり、微かに震える様相を見せていたのだ。歴戦の強者たちが明らかに動揺している。マルティンがやったことはキャボット帝国では普通に禁忌に触れる類のことだったのであろう。

 常識外れにならないようマルティンは日々認識を修正しているつもりだったが、まだまだ精進がなりないと気持ちを改めることにする。


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