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剣聖テンペランス①

 テンペランスは開発拠点と言われている場所を見て回って、ぎょっとする。

 防壁周辺を木の槍で武装した獣人達が守り、広場では大鍋が料理がいくつも煮込まれ、焚火では串に刺したパンが豪快に焼かれている。

 ある場所では皆が石の斧・鉈でモンスターの解体を行っていた。

 モンスターは羊頭の大鬼、巨大猪、手の生えた巨大鶏で〈不死の銀騎士団〉が相手でも手こずるほど屈強に映る。


「ここでは魔獣の肉を食べるのか? まあしかたなく食べるというところもあるらしいが……」


 貯蔵庫らしい処に肉が大量に入っていたが、どれも緑のカビが生えていた。カビてしまったのかと思ったが何かが違うように思える。

 少し離れたところでは肉の脂だけが煮られており、別の鍋では肉の脂に真っ白な灰が入れられ、かき回されていた。テンペランスには流石に何をしているのかわからない。

 拠点内は小さな木製の小屋ばかりで、今現在大勢で新たな小屋を建て始めていた。 

 ただ新しい小屋はどれもクリーム色の板が使われているのが不思議だった。

 どちらにしてもここは奴隷や誘拐された者が逃げてきた集落には思えない。誰もが健康的で、清潔で、元気があって前向きな雰囲気が漂っている。

 が、ふと信じられない人物を目にする。

 粗末な服を着て3人がある一角に身を潜めていたが、その一人は間違いなくある国の重要人物であった。キャボット帝国の騎士団では各国の要人の容姿やプロフィールを記憶することが義務付けられているので間違いがない。

 他の2人とも痩せこけているが、とてつもない何かしらの達人であるように伺える。


 このことをマルティンという者は知っているのか?


 しかしまずはマルティンなる人物の正体を確かめないと、教えるわけにはいかないと思う。

 テンペランスがここに来たのはマルティンに会うためだったが、尋ねると20分ほど上の高原にいるということであった。

 片腕がないということもあるが老若男女、人種が違っても誰もがテンペランスの容姿を目で追っていることがわかった。ここでも美貌のせいで一悶着あるかもしれないと気を引き締める。

 病み上がりで山歩きはどうかと思ったが、いらない心配であった。ほぼ復調していると言って問題がない。

 あの飲み物一つにしてもつくづくマルティンが神がかった人物に思える。

 高原は想像以上に広大で巨大な針葉樹の森が広がっており、幽邃な凄みを覚えさせられた。見慣れぬ高圧的に映る大自然に、やはりかなりの北に来たのだと実感していく。

 さらに道を進むと、広域に伐採された平地に出くわす。

 そこでとてつもないモノが目に入る。巨大な水玉色のキノコがたくさん生えていたのだ。小屋そのものの大きさのキノコなど聞いたことも目にしたことさえない。

 しかもそのキノコのうち、三分の一にドアが取り付けられており本当に住居にしているのが伺えた。


「な、何なのだ、ここは……妖精の王が取り仕切る王国の中にでも迷い込んだとでもいうのか……」


 夢心地のまま進むと一面の広大な畑が目の前に広がっていた。

 そこでは農具で畑を耕す30人近い成人男が働いている。そのうちの大半が若い女性のような無邪気な仕草を微笑んでしており、悪夢を見ているような気になっていく。

 この地では正常のモノがひれ伏せ、冗談が現実化しているように思えてきた。

 中年男性たちの姦しい声を聴きながら、テンペランスはさらに先に進む。

 畑を抜けて進むと伐採を行っているらしい、倒木された丸太が多い場所に出た。

 少し離れた場所で開墾に従事している一団を目にして驚く。全員が甲冑姿であったのだ。

 恐ろしい怪力を持っており、道具を使わずに木の根を引き抜いたり、巨大な木を数人で運搬してみせる。木を伐採してはいないがいずれも超人のそれである。

 しかも動きがどうも人間らしさがない。テンペランスの本能が「あれはモンスターだ」と訴えて来ていたが、明らかに仕事をしているとなると攻撃する理由がない。

 10分後に戦う必要はないと判断してさらに先に進む。

 そこでは30人ほどに取り囲まれた5人の冒険者風の者が談笑していた。

 豪華な装備を着た冒険者達であったが一人がとんでもないことをいきなりやって見せる。

 件の羊頭大鬼、巨大猪、大鎌巨鶏の死体を何もないところから出現させて、山を築いたのだ。その数は30を超えていた。


「な、何という馬鹿げた数だ!! これほどの猟果は見たこともない!」


 皆、大声を出したテンペランスに注目した。テンペランスは駆け寄ると獲物を検分し始める。切り傷、刺し傷を見たが攻撃する場所がでたらめで、未熟な技法が使われているのがわかった。とても高位なモンスターを倒せる傷ではない。

 観察していると冒険者たちが驚くべきことを言い出した。


「まさか二日でレベル15に上がれるなどと思っていませんでした。【築造】を授かった身でこのようなことが起きるとは――」


「わいもですわ、マルティン様。奴隷になり、【造営】のスキルなど生かせるなんで考えもせんでしたわ。しかもレベル17なんて感無量ですわい」


「せっかく機会をマルティン様や皆さんが作ってくれたのにレベル13でごめんなさい。でも育てた【祈望】を必ず役立ててみせます!」


 これにテンペランスは仰天する。2日でレベル15など聞いたことがなかったからだ。それほどのモンスター討伐でレベルを上げることは、積まれたモンスターがとてつもない強さであることになる。

 現在テンペランスはレベル23であるが、4年も休みなく修練し、24の討伐遠征に参加し、特別なサポートを受け、強大なスキルの力があって得たものだった。

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