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レア菌

 契約の話を取り敢えずおいて、工房や資材置き場を見学させてもらうことにした。この施設内には風呂からキッチン、書斎と一通りあり、今も利用可能という話だ。

 資材が見たいなんて変わった奴だ――と魔法人形に云われたが、レア菌ゲットの欲望が止まらない。

 最近、二階の知識がよみがえるほどにマルティンは微生物に対する興味が強まってきていた。

 マルティンは魔法の勉強はやらないと周りに迷惑が掛かるので必死でやっていたが、微生物の勉強は自然にのめりこむことができた。

 ザディーグの施設は全て自動ドアで仕切られていて、扉が上部に収納される昇降式ドア方式だ。

 案内された資材置き場は清潔で整頓されていた。いずれもガラスケースや木箱などに入れられ、魔法で保存・封印されている。

 中のモノを取り出すには封印を解く必要があるが、レベルが上がったマルティンには何の問題にもならない。

 体の全経4メートルの空間に近づいた微生物は【培地】 に入れられるのだ。

 マルティンは興奮し、息をのむ。


「うわっ……やっぱり普通じゃお目に掛かれない素材にはとんでもない微生物がついているんだな」


 【培地】に入れた新たなる微生物にマルティンは感動し、あきれ返った。


バーニング菌:火属性の菌。魔素の高い場所にある植物に生息。魔素を吸収して、燃焼性の非常に高い火属性マナを含む油を生産する。


クレンジングタケ:水属性の胞子。水の中で生息。雑菌・毒素・有害物質に好んで寄生し、水を浄化する。食べることはできない。


 この辺の発見でも痺れた。いずれも非常に利用価値の高い微生物で人間の生活圏で大きな効果を発するであろう。が、まだとんでもない微生物がこの部屋には生息していたのである。


ネクタルアーキア:光属性の古細菌。生物が感染した場合の潜伏期間は75分。宿主の体を攻撃する菌・胞子の繁殖を食い止めて破壊する。


 ネクタルアーキアの存在はマルティンにもありがたかった。危険なカビに万が一にでも遭遇した場合に治療できる古細菌の存在は力強い。

 前の世界では体内での繁殖するカビを抑える抗真菌剤、イトラコナゾール、ボリコナゾールなどがあった。この世界の魔法では菌の概念がないので、対抗する手段はゼロであったが、ネクタルアーキアがあれば話は変わる。

 テンション上がりまくりの中、これを上回るコレクション達にすぐに遭遇する。


ソーマカビ:土属性の細菌。世界樹などの土属性の霊気の強い植物で繁殖する。生物が感染した場合の潜伏期間は80分。大量に摂取すると土属性の魔法属性を得る効果がある。


ハイヒール菌:光属性の細菌。三日月薊などの光属性が強い植物で繁殖する。生物に触れた場合、その肉体の破損を短時間で治癒・復元する効果がある。


 完全にミスリル菌クラスのいかれ微生物である。周知されれば絶対に国家間で奪い合い必至で大混乱が起きるであろう。

 魔法属性を得られるカビなどどの国や機関でも欲しがるのは必至だ。

 だが、その上を行く微生物がまだいた。とんでもないインフレーションである。


カースウィルス:闇属性の細菌。生物が感染した場合の潜伏期間は90分。宿主のマナを吸って増殖。毒素を発生させる。光属性に対抗する特性がある。カースウィルスが原因で死亡したものをアンデッドにする。


セイクリッドアメーバ:光属性のアメーバ。神の力が宿るモノの周辺に生息。呪いや穢れを破壊する力・ニンバスを発する。


 いやいや、ゾンビを流行させるウィルスとか、神の力を発揮するアメーバなんか個人が管理するのには無理がある。

 しかし入手してしまった以上は見なかったことにもできないのも事実ではある。


 神の力を自由にできるとか完全に無理ゲーだし。俺の中身は明らかに凡人だというのに――。


 マルティンは胃が急速に痛くなってきていたが、二階はそうではない。スキルを使って更に研究したいという意志をうずうずさせていた。

 SSS級が如何に常軌を逸した能力であるのか、頭が痛くなるほど思い知らされる。


「いやいや、これはとんでもないことになっちまったぞ……。しかし誰かに相談するって言っても誰が相応しいんだ。国のトップに教えて暴走されたら止めるの無理だろう」


「あーん? 何がとんでもないことなんだよ、このタコ。ブツブツ言っているとひっぱたくぞ?」


 と魔法人形が愛らしい顔で睨みつけてきた。


「あ、何かすんません」


 どうも独り言を言っていたようだとマルティンは気づく。というか二階の記憶が目覚め、単独行動をしていると独り言が増えているようだった。

 また別の事にも気がいく。


「えっと、俺は名乗ったけど君の名前を聞いていないんだけど」


「そうだっけ? あたいはジジイからは『4号』って呼ばれているよ。もしくは『試作品』だな?」


「はあ、『4号』?」


「四番目に作られた人形だからだよ。まったく他の3体には人間っぽい名前がついていたのに、差別しやがって。老いぼれっていうのは気が利かないから嫌いだぜ」


 魔法人形は不愉快全開でそういった。

 この4号、本当に感情がないのかマルティンにはよくわからなくなる。二階が云うにはAI仕様ならばそんなものだというが今一つ理解できない。


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