第7話
「お父様!お願いがありますの、クロード・リオレンド様との接点を作ってくださいませ」
屋敷へ帰るなり入室の許可も取らずに執務室の扉を開け放った私に、お父様は何事かとポカンと固まった。
そしてギギギ……と音がしそうなほどぎこちない動きで首を傾げる。錆び付いた機械のような動きに、パントマイムを思い出した。この世界では見た事なんてないけど。
「ど、ど、どどういうことか、説明してくれない、か、なぁ?」
あ、しまった!急ぎのあまり要件しか話してないわ。
「はい、今日、騎士団の訓練を見に行ったのですが、その時の訓練の様子もとても凄くて……」
「う、うんうん、それは分かったよ。それで?何故、副団長殿の話になるんだい?」
ニッコリと笑ったお父様に続きを促される。
「はい、階段から落ちそうなところを助けていただきまして、素敵な方だと判断致しましたの。是非、お知り合いになりたいのです」
「なんてことだ……確かに彼は悪い噂はないが…………メル、一体どうして……」
青ざめたお父様は何やらブツブツと呟いている。
お父様は伯爵だが王宮に通う文官でもある。
王宮で騎士を務める彼との接点をつくるのも難しくないと思うのだ。
「そ、それは、お友達、ということ、だよね? まさか、婚約者になりたいなんて、ことは……」
お父様に問われ顔が熱くなる。
「えっと……お互いを知ってからがいいな、と思っておりますの」
恥ずかしくって顔を隠してしまえばお父様は黙って俯いてしまった。そんな空気に耐えられなくて返事を求める。
「やっぱり、難しいですか?」
「え?」
「先日デビュタントを迎えたばかりの私はお子様すぎますかね……ハッ!それに、クロード様にすでに恋人や婚約者がいることもありますよね……」
この世界では婚約時に腕輪、結婚したら指輪を贈り合う。腕輪には髪色、指輪には瞳の色の宝石を使い、相手がわかるようにするのが一般的なのだ。
彼は指輪をしていなかったので奥様はいないと分かっているが、腕輪は服で隠れていたかもしれない。
ああ、はしゃいでいた気持ちが萎んでいくわ。
なんだか悲しくなって下を向くと、顔を押さえて天を仰いでいたお父様の焦った声が聞こえた。
「彼に特別な相手がいると聞いたことは無いけど……メ、メル?本気なんだね? ああ、そんな悲しそうな顔をしないで。お父様が何とかしてあげるよ」
「ほんとう?」
「ああ、もちろんだとも。メルがそう望むならお父様は協力するよ」
自信ありげに頷いたお父様に気分が上がる。
私ってば、げんきんな女ね。
「ありがとう、お父様!大好きよ!」
そう言って駆け寄れば優しく頭を撫でられる。
「メル、私もだよ」
いつもは親バカで心配症だが、約束はきちんと守ってくれる人だ。私は安心して肩の力を抜いた。




