第25話
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もう少しお付き合いくださいませ◝☆
驚いたように私を見る周囲の視線に、そりゃそうよね……なんて失笑する。私だって今の格好を他の誰かがしていたら二度見する。絶対に振り返る。
騎士団の観客席。優しい女性がおずおずと譲ってくれた特等席に座った私とステラに注目が集まっている。
真っ黒い布で作られたフリルとレースがたっぷりのドレス。スカート部分はパニエでボリュームを出して可愛さを強調し、胸元は光沢のあるリボンが多めについている。
まぁ、いわゆるゴスロリファッションである。
年若い令嬢が着るドレスは黄色やピンクなど淡い色の多い中、私が選んだのは黒。原色のドレスも無いことはないんだけど、やっぱり華やかっていうよりド派手な印象を受ける。
その中でも黒って、お葬式だったり喪服ってイメージなのは前世と一緒みたい。確かに華やかさには欠けるもんね。だからこそフリルとレースを使って飾り立てた。
クロード様の色を纏いたい、そう話したときステラはめちゃくちゃに微妙な顔をした。まぁね、黒と赤ってどう頑張っても私に似合いそうにないものね。
でもさ、好きな人の色を纏いたいって乙女心として普通と思うのよ。
この世界にはそういう文化があって、好きな人や婚約者の髪や瞳の色でドレスやスーツを作ったりする。お父様とお母様も、未だにお互いの色を纏ったりしていてラブラブなんだよね。
日本でそんなことをしたら黒一色でなんとも面白くないけど、この世界はカラフルなので。普通に青も赤も、ピンクや紫だって存在する。なんてファンタジー。
かく言う私も、青白い銀髪に薄〜い水色の瞳。
……赤は、なんか強そうだな、と思った私は黒一択だろう!と準備を進めた。そして前世のゴスロリのようなドレスだったらまぁ可愛いのでは?とドレスを注文しているマダムに説明した。
どうしてわざわざ黒を?と不思議そうにする貴婦人たちに「好きな人の色を……」と言うと、まぁ!と声を上げて張り切り出した。
それからあれやこれやと話して出来上がったのがこれ。
ブリブリしてる……。予想よりもフリッフリの衣装に、正直手に取った時は私がこれを着るのかぁ、なんて思ったけど楽しみそうなマダムとステラの視線を受けて拒否はできなかった。ボンネットまでついてなくて良かった……。
「いざ着てみると、なんか、大丈夫?って思っちゃうわね……うぅ、目立ちすぎ? 視線痛い……」
「大丈夫ですわ!黒いドレスも着こなしてしまうなんて、お嬢様は世界一です!」
なにが世界一かよく分からないけどステラが大丈夫というのなら大丈夫かもしれない。どうせ私の感覚はこの世界とズレてるし。
「それにしても、ヴェールをしてないのにチラチラと見られるのは案外不愉快なものね……だったらまだヴェールをした方がマシだった? いや、今日はちゃんとクロード様をこの目に焼き付けるの、大丈夫、私は頑張ればできる子よ」
「その美しいお顔を晒しているせいですが……でも、許可がおりて良かったですね!」
「うん、クロード様がいる騎士団に行く時ならいいってお父様が言ってくれたわ」
ブランお兄様は反対していたけど、アレンお兄様には「まぁその方が事が早く進みそうだから仕方ないね」ってよく分からないことを言われた。
そうやって話しているうちに剣を持った騎士様たちが訓練を始める時間になった。
「ふふ、いつ見ても素敵だわ……訓練中の引き締まったお顔も凛々しくていいんだけど、お茶を飲む時の緩んだ穏やか表情も好きなのよねぇ」
厳しく指導をする様子を眺めながらステラに語ると「そんなポワポワしないでください、ああ、ほらあそこの方々が倒れてしまいましたよ」とか「免疫ない方には目に毒です」なんて酷いことを言われた。
見惚れるくらいいいじゃないの。
その後はステラの言いつけどおり無表情を保ったまま眺めることになった。
「あ、終わりましたね」
ステラの言葉でハッとする。
「そ、そうね、今からが勝負ね!」
バッと勢いよく立ち上がった私は騎士様たちが出てくる出入口へステラと急いだ。
「お嬢様、あまり運動神経はよくないのですから、落ち着いてください!転んでしまいますよ!」
「何を言ってるのよ!急がないとクロード様に予約ができてあっという間に横取りされてしまうわ!」
「大丈夫ですから!」
ステラの小言を無視して駆け足で向かう。
訓練場の通用口。ちょうどそこで立ち話をするクロード様の背が見えて、いそいそと呼吸と髪型を整える。
緊張しながら話しかけるタイミングを待っていると、クロード様と話していた人物と目が合った。
その人は私を見ると、深緑色の新緑のような目を細めニヤリと笑った。
「おっ、今から逢引か?」
その言葉で振り返ったクロード様は赤い瞳をぱちくりとさせた。私を見たまま固まってしまった彼になんて言おうか考える。
とにかく、まずは挨拶ね。
「えっと、お久しぶりです、クロード様。そちらは……団長様、ですよね。初めまして、わたくしメリーベル・フローレスと申しますわ」
「ああ、ご丁寧にどうも。俺はマーカス・ワインドット。マーカスでいいよ」
「ありがとうございます、マーカス様。私もメリーベルと」
ニッコリ笑うとニカッと太陽のような眩しい笑顔が飛んできた。見るからに明るく元気そうな人だ。
「ところで、こいつに用があるんだろ?」
問いかけにこくんと頷くと、マーカス様は未だに固まっていたクロード様の肩を叩いた。
「おい、見惚れてないでそろそろなんか言えよ」
「なっ……!見惚れっ、そんな、んじゃ……」
「はいはい、分かったっての。じゃ、俺は行くから、ごゆっくり」
揶揄われたからか、クロード様の耳が少し赤い。
ひらひらと手を振ったマーカス様を見送れば気まずそうに頭を掻いている。
「あの……昼食を持ってきましたの。よろしければ、ご一緒にどうでしょうか?」
用意したバスケットをぎゅっと握って差し出す。
直接自分の口から誘うのはこれが初めて。心臓が口からこぼれ落ちそう。
「あ……よ、喜んで」
バスケットを受け取って小さく返された答えに嬉しくて頬を押さえた。断られそうで内心ヒヤヒヤしていた。
そんな私を見て口を引き結んだクロード様が照れたように見えて、その仕草に胸が苦しくなって腕にぎゅっと抱きついた。あ、びっくりさせてしまったみたい。
見上げると目尻の下らへんのほっぺがピンクに染まっている。目も丸くさせて私を見下ろしている。
いくらエスコートとはいえ、くっつき過ぎたらしい。自重、自重。嬉しいからと言って抱きついたのはやりすぎよ。
少し腕を緩めると何かを言いたげにした彼は口を噤んで、そのまま何事も無かったかのように歩き出した。




