第19話
綺麗に髪を結い上げて、ふんわりとした軽めの生地が使われた可愛らしい水色のドレスを揺らす。スカートを摘んで「どうかな?」と聞けばステラは感極まったようにコクコクと元気に頷いた。
「お母様も監修してくれたから大丈夫よね?」
「はい!それはもうっ!とてもお美しいですわ!」
なぜだか張り切った様子のお母様に勧められるままドレスや髪飾りを選び、とうとうクロード様との街歩きの約束の日。
私からしたら普段と変わらないと思うんだけど、やりきった様子のステラにそんなことは言えなかった。いつもより可愛いと信じたい。
出かける前にたまたま廊下で鉢合わせたアレンお兄様に問いかけると、「いつも通り天使のように綺麗だよ」と言われてやっぱりいつもと変わらないのではと不安になった。
まぁ、でも、病は気からとも言うし?
思い込みって大事。 私は綺麗だ。可愛い。大丈夫。
うん、いける気がした。
今日は貴族街を歩く予定なんだけど、待ち合わせをしてみたいという私のわがままで現地集合となった。馬車を乗り付けるのが貴族にとっては当たり前なんだけど、私は普通じゃないし。
それに待ち合わせた方がデートっぽくない?雰囲気から大事にしたいよね。というわけ。
馬車に乗り込み、ステラによって最終チェックがされたカバンを受け取る。軽めに化粧直しが出来るようにと道具が入った小さめの斜めがけポーチのようなカバンだ。
「お嬢様、あまりはしゃぎ過ぎないように気をつけてくださいね? あと、帰りが遅くならないように。あまり遅いと迎えに行きますからね!」
「分かってるわよ!もう、お兄様たちといいステラといい、いつまでも子供扱いするんだから」
「子供扱いではなく心配しているのですよ!」
「はいはい、分かったわ」
ステラの小言を聞き流しているうちに待ち合わせ場所に着いた。目印の広場前の噴水近くに立っている長身の男性。
シャツに光沢のある銀色のベスト。ループタイに付けられたビジューが薄い水色で、少しだけ、ほんの少し、私の瞳に似てる気がした。
ステラに手を振って馬車をおりると、こちらに気づいたクロード様がすかさず近寄ってくる。
「すみません、お待たせしましたわ」
「いや、君を待たせることがなくてよかったよ」
うわぁ、やっぱりこういう会話がデートっぽいよね。よくあるやり取り、実はちょっとだけ憧れてた。
「ありがとうございます!あ、あの!クロード様は今日も素敵ですわ。実は……先程馬車の中から見た時に、見惚れてしまっていましたの」
私の言葉にクロード様はポカンと呆けた。
お母様にアドバイスを貰ったのだ。
彼はちょっとやそっとの好意じゃ気づかない可能性が高いと。だから、思ったことは素直に告げてもっとアピールするべきだと。
確かに、恥ずかしいなんて言っている場合では無い。
私を女性として見てもらうには、クロード様に私が好意を持っていることを意識させるべきなのだ。
「……あ、そ、そうか……ありがとう。メリーベル嬢も綺麗だ」
困惑した様子ながらもそう返してくれる。
「本音ですわ」
そう宣言して彼の腕にそっと寄り添った。
貴族的な社交辞令だと思われないように。
「……」
……あら? 動かなくなってしまったわ。
いつまでもここにいる訳にはいかないと思い動き出そうとしたけど、クロード様は私と反対方向を向いて固まっていた。
「クロード様?」
覗き込もうと体を傾けると、慌てたように顔に手を当てて、ふいっと更に顔を背けた。
「……すまない。君の、言葉が……あまりにもストレートで」
勘違いしてしまいそうだ、と小さく聞こえた気がした。
え?なんかまずいことでも言ったかな?私としては褒めたつもりだったんだけど……。
少し苦しげな様子に「大丈夫ですか?」と問いかけると短く「ああ」と返ってきた。
深く呼吸をした彼は気を取り直したのか「行こう」と私に合わせてゆっくり歩き出した。
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